「あれは弟子か?」 いや、違うかもしれない。と一人呟くように言うとローザが「珍しいわね、サメラが迷うなんて」と言うのを聞き流して。 長い付き合いのやつでな。小さいころに魔物に食われかけたのを助けたら懐かれた。それ以来、エブラーナに行く旅にぐうの音が出ないように叩き潰したんだがな。と呆れ果てた口調言うサメラの口振りで相手の性格もサメラの心情もなんとなしに悟ってしまい、リディアはクスクス笑った。 呆れた口調ながら、口角が上がっていて、サメラがほんのわずかに嬉しそうにしている様子をセシルが見た。セシルはそんな声色を聞きながら、宿の看板を見つけて、そちらに向かう。ジオット王から話が行ってるらしく、小さな広場に出た途端、人混みに囲まれて奇異の視線を受けた。 「女神がきたラリ!」 「うちの宿に箔がつくラリ!」 「女神を讃えるラリ!」 「宴会ラリ!」 「女神を運べー!」 「脱がせー!」 「女神を囲うラリ!」 とんでもない言葉が聞こえサメラは青くなった。助けを求める合間もなく、あっという間にサメラを一人取り囲み、口々に放つ言葉からサメラを称えながら、地底の民はサメラは津波のような勢いで現れ、彼らに担ぎあげられて消え、遠く消え行く悲鳴と叫びにセシルが苦笑いを浮かべた。 「……いいのか?」 「あーまぁ大丈夫じゃないかな?遠くに行ってないし。」 とりあえず荷物置いてからかな?。と、言うカインの言葉に、そうだね。と一同頷いて、宿に向かうのであった。 「お前たちも後でくるといいラリ!」 「みんなで飯!」 「女神が逃げるラリー!」 「早く加勢するラリ」 「脱がせー」 慌てて走り去る地底の民を見送って、宿に向かう足をまた動かし出す。サメラの怒号が聞こえる。 触るな!止めろ!脱がすな!近寄るな!とどこか遠くで叫ぶサメラが珍しく肩やら色んな所をさらけ出した服を着て、半分泣きながら仲間に連れられ宿に帰ってくるのは、夜遅くの話であり、そんなサメラが機嫌を損ね、口を開かなくなったのは違うお話。 「サメラー。ごめん。ってば。可愛かったんだもん!」 「……」 「だって城内だしね。無事だろうし」 「……しばらく飯の支度をしないからな。」 「サメラ、僕が悪かった!僕を殴るなりなんなりとするがいいよ!」 「……歯ァ、食いしばれ…」 前 戻 次 ×
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