静かな部屋に、二人分の息が部屋に響く。沈黙が響く部屋で、サメラはゴルベーザという眼前で地に伏せている男について考えた。 何年も前に、軍門に下れと言った男は、世界を収めようとしていた。 サメラはそっと寄り、闇夜の色した兜を持ち上げる。固定魔法ホールドは生命をもたぬ物には効かないらしく、首は動かないが兜はすんなり取れた。少しくすんだ月の色した髪と褐色の肌をした男。サメラはじっとその男を見つめた。こうやってみたら普通の人間だな。と思いじろじろとみていたら、ゴルベーザの目がカッと開いた。 「!?」 魔法が切れたのかと驚きを隠せないまま、足の力だけで距離を取り、いつでも動けるように体制を整える。ハッと気がついたら、ヤンが目の前にいた。 「サメラ殿。」 「…ヤン?」 サメラ殿!魔法を返された様ですな。それだけを聞いてサメラはクリスタルのある方を見た。知らぬ間に入ってきたセシル達と兜を被ってクリスタルを手に入れたゴルベーザが睨み合い立った。 「あと一つだ。」 それだけ告げて、消えた。もうそこには何もなく、沈黙だけが残された。言葉を放つには苦しすぎる空気の中で、サメラは魔法をかけられたと思えるタイミングの事を思い出した。ゴルベーザが目を開き、恐れ逃げ出しあの瞬間だ。 音もなにも無かったのを考慮すると、きっとそれは無詠唱の類なんだろうかと考えていたら、目の前でひらひら手を振る緑が見えた。 「サメラ〜?」 「リディア…?」 「ほら、ココ」 皺寄ってる。と眉間をつつかれて、ぼんやり、リディアを見つめる。はて、とふと感じた違和感に首を傾げて、違和感にやっと気付き、声を出した。 「大きくなったんだな。」 「もうちょっと違う言い方が良かったんだけど…」 リヴァイアサンの起こした嵐によって、幻獣たちの世界に行ったの。時間の流れが違うから、私はこうなっちゃったし、白魔法は使えないけど、黒魔法の腕と召喚術は上手になったの。サメラ誉めて!と喜んで飛びついてくるリディアの頭を撫でようとしたが、サメラの幼い頃から環境が良くないせいか、あまり成長しない身長では届かなくなっていて、何もいえない二人であった。そんな二人の気まずさを消すようにセシルが口を開いた。 前 戻 次 ×
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