ぼくと復活祭イースターナイト 3e 





ぼくが持ってきたのは、トランペットとエレキギター。なにか音源トラブルがあっても対応できるように、簡単に持ち運べるもの。としてこの2つを選んだ。
昼間、衣装を着て【イースターナイト】の宣伝を行う代わりに、『Valkyrie』が出演時のみ一時的に抜けることも快諾していただいたので、エッグハント中にぼくはステージ中央で演奏を行う。どうやらぼくは、エッグハント終了のタイムテーブル役を知らせているらしい。終了時間まで好きに奏でていいけれども、終了時のBPMはかなり早いものであることが条件だったりあるものの、基本的にぼくはこのエッグハントや【イースターナイト】で、舞台袖でずっと立って演奏することが打ち合わせで決まっている。
ゆるい条件なので、間に『Valkyrie』の楽曲も指慣らしを行う。演者がきちんと集まらないのはぼくの責任ではないのですが、まぁ、支払いはある程度やってくれるとのことなので、遠慮なく演奏させてもらいましょうかね。
ギターをステージでかき鳴らしていると、青葉くんのところの子がステージ前を右に行ったり左に行ったりして賑やかなのを見てると、舞台上にいるぼくに気づいたのか、手を振ってくれるんので、お返しと言わんばかりに彼のユニットの楽曲アレンジを混ぜる。それに気づいてくれたのか嬉しそうにしてるのが見える。踊るように演奏していると、ちらほらと学院の子がいるのが伺える。ちらほら見えるこのアレンジをしてると、音に気づいたのか顔を上げて驚く姿が見える。そんなのが楽しくて、演奏してるのがやはり楽しいとおもう。
夜にまたこの会場がペンライトや興味があるという顔でみれるのだろうかと考えると、すこし怖いけれども、元来ぼくたちがライブを行えるのが一種の奇跡なのかもしれないと至る。無事に、なんてこの世界そんなものありはしない。トラブルを回避するために入念な打ち合わせを行ったって、悪意にさらされればひとたまりもないのだ。
極力日陰に立ちながら、体力の消耗を回避しつつ演奏をしているとエッグハントも終了の合図がくるので、ぼくは最後の一曲を楽しむことにした。
演奏が終わるとまばらに拍手が聞こえてすぐに沢山の人がぼくに拍手をくれる。あのライブも、きっと無事に終わっていたら奇跡がおきていたら、こういう拍手をもらえたのだろうな。なんて考えながら、ぼくは一礼して【イースターナイト】の宣伝だけをして舞台を降りた。もうすぐみかもここにやってくるでしょうし、最終打ち合わせも行わないといけませんからね。楽器を持って、ぼくは夏目くんが指定した場所に足を向けた。
道中、僕を迎えに来た春川くんと合流して、先程のアレンジの礼を言われたけれども、ぼくが好き勝手しただけなので礼を言われる覚えもない。むしろこちらがありがとうとも言えるものだ。おかげで選曲も迷うことがなかったのだから。出会えた学院の子には感謝すべきなのでしょうね。
指定された場所に到着して、ぼくはさっさとユニット服から今回の衣装に着替える。人形遣いの姿はない。ほんとに来ないつもりなのだろうか。夜目はきくほうなので、あとでこっそり探しに行こうかなんて考えながら、着替えを済ませる。

「央兄ィ!さっきの演奏かっこよかったで!」
「ありがとう。みか」
「今な、ステージ見てきてんけど立ち見のお客さんもおるくらい大入りやねん。」

緊張してしまうわぁ。とすこし表情が濁る。人形遣いが出ないのであれば、ぼくがある程度見様見真似の調整などを行わないといけないだが、まぁ、人形遣いではないのを理由にとって、ぼくはひっそりため息をつく。

「ぼくがいるんですから、気を負う必要はありませんよ。ぼくだって一人の創造者なんですから。」

安心なさい。そう言いながらみかの頭をなでていると、青葉くんがそろそろ出番だと呼びに来る。ぼくは最初に演奏で出て、その次に『Switch』それからみかと順に登場する。場を温めて、魔法をかけて光をつけて、ツリーに光がともり、命が生まれる演出を行って、ライブが始まるのだ。事前準備として、ぼくが先行するので、ぼくは青葉くんに断りを入れて席を立つ。

「央兄ィ。がんばろな。」
「人形遣いを悔しがらせましょうか。どうせあれのことですから、隅で指をかんでるでしょう。」

気高く、格式……は今回人形遣いが出ないので口出しはさせませんけど。悔いの無いように頑張りましょうね。とみかとゆびきりをしてぼくはステージに出た。このしばらく暗譜ばかりしていたので今回のものは問題なく演奏できる。ぼくは、大きく音を鳴らしてから耳目を奪い、そして音を広げた。演奏して途中で、舞台中央の春川くんに指を指すと、ライトがそちらについた。ぼくは音量を減らして、爪弾いてみかが現れるまで、ベース音を叩いて、演出に添える。ふと、舞台袖に人形遣いが見えたので、ぼくはそっとそちらを見て笑う。ぼくの笑みに気づいたのか恥ずかしそうに目線をそらしたが、ぼくはそれが楽しくなった。あれが衣装に袖を通したのだから。その事実が嬉しくて、そろそろぼくも出番なので楽器を置いて、みかたちに混ざって、ぼくたちのライブが始まる。いじけっ子人形遣いに存分に見せてやりましょうかね。




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