玉響、逢魔ヶ時ライブ 8e 





生まれた家での一日は、今までの歴史よりも濃い色をしていた。遠くから見ていた自分の生みの親が間近に居たりして、なんだかんだと聞いたりしました。どうも、父と母でもいろいろあったらしいのですが、ぼくが朔間に入ったことがうれしいらしく、幸せそうに泣いていられました。複雑な環境を持ってたぼくがそんな状況をうまくさばけるわけもなく、朔間さんと凛月さんの力を借りてなんとかできるわけなんですが。
朔間さんと凛月さんの二人がいてようやくぼくはなんとか生を手に入れたわけですが、まともに人としてとするならば、何とも難しい複雑な心境ですね。そして、現実も。眼前の光景も。いろいろと杞憂をしているのですが、朔間さんのとりなしによっておそらく今日は、いいえ。今後は問題ない生を続けていけると思います。晦の家は恐らく廃退していくでしょう。凛月さん曰く朔間さんの逆鱗ともいえるらしい、ぼくに手を出したらしいので、遠くない先で彼らも捨てられるとのことで。ぼくは、しばらく夢ノ咲卒業と共にぼくの苗字も晦から朔間に変えるとのことで話は進みました。、今はまだ保護という形で肩身を寄せるのですが、それでも本当の兄弟と一緒に入れることがどこかもどかしいですね。
硬く閉まった手芸部部室の前でノックするのをためらってました。恨まれてもいいと思って動いてたのもあるので、何とも言えないのですが。入って拒絶されるのは怖くて、ノックしようとしていた手を何度も上げ下げしていました。朔間さ…零は、気にしなくていいと言っていたのですが、残念ながらぼくは気にするのです。

「どうしましょう。拒絶されたりしませんかね。」

愛の人。という代名詞をも似合うあの人が、どうも怒ってきそうな気がして恐ろしいですね。どうやって入ろうかと何度か思考を巡らせていたのですが、しばらくして僕の目の前にあった扉が横に移動して、みかがそこに立ってました。ぼくを見て満面の笑みをこぼしてぼくの手を引いて部屋の真ん中に移動させる。

「央兄ィ、えらい遅かったなぁ。」

体調どうなん?大丈夫なん?顔色悪ない?具合は?と矢次早になげかけてくるので、見かねた人形遣いが最終調整していた衣装と向き合っていたのを辞めてぼくとみかのほうに顔を向けました。

「さっきからそのドアの向こうでずっと立っていただろうに。気づかなかったのか?」
「えぇ!?央兄ィ、気配いつもないからおれにはよぅわからんで。」
「君が愚鈍だからだよ!……おかえり。ある程度小娘から聞いている。さっさと支度をしたまえ。小鳥。君が一番時間がかかるのだよ。」

それ以上なにも言わずに人形遣いは言うので、ぼくは嬉しく思いながら昨日みかから受け取った衣装を取り出すと、そこに凛月さんのメモが一つ入ってました。皆連れて今日行くからね。って…。酷く賑やかになりそうな気がしてぼくは嬉しんですけど、恐らく愛の人、人形遣いは顔を歪めるのではないのでしょうか。そう思うとなんだかおかしくて、ぼくは一人クスクス笑うのでみかと人形遣いに不思議な顔されましたけれど、それでいいのです。

「央兄ィ、なにかあったん?」
「それはもう、いろいろとですよ。」

ぼくがぼくのままでいいと、朔間の家が言ってくれたのです。それだけでも幸せで、そしてこの場所に入れるのですから、いつ死んだって何も言いませんよ。大丈夫です。弱いぼくでも、強さをもらって生きることはできると証明しているのですから。

「しばらく留守にしてごめんなさいね。最悪を逃れられたので、ぼくはこれからもここで歌って囀っていきますよ。大丈夫、もうどこにも飛んで行きやしません。」
「わかったから、早く着替えたまえ。あと2時間でライブが始まるぞ。最終調整もしなければならない。急ぎたまえ。」

これ以上のろのろしていると癇癪持ちが爆発しますからね。急いで行いますね。と茶化しながらぼくは急いで着替えをし出す。万が一のためと録音したものがいらないという事実にぼくは安堵しながら、あわてて着替えのために衣装に手を付けるのです。

「これからも三人で歌っていきましょう?」





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