ぼくと朔間さんとイシュタル。 






スカウト!初夢物語(前編)の朔間零を10連で絶対に出すマンさんには「目をそらさないで」で始まり、「明日はどこに行こうか」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば3ツイート(420字)以上でお願いします。

#書き出しと終わり
書けば出る書けば出る書けば出る
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「目をそらさないでもらえますか。朔間さん?」

深夜に人の家に来てぼくを無理やり連れだして、なにがしたいんですか。呆れを含んだぼくの声色に、目の前の赤はにんまりと笑ってただ黙ってタクシーを走らせている。行き先はそっと朔間さんが事前に伝えてたらし家の前に停まっていた。というか、多分おそらく朔間さんが自宅からぼくの家まで乗ってきたのだろう。

「目が覚めて、ふと、央くんと見ておきたい場所があったのを思い出しての。」
「うちの家だから通るものを、普通の一般家庭だったらこんな誘拐じみた事通じませんからね」
「わかっておるわい。」

実際はどうだか。『朔間』の家が力を持ってて一族の末端である我が家が『晦』だからこういうことができるんですよ。朔間さん。わかっているならぼくを誘拐するのを辞めてもらっていいですかね?とは思うが『晦』として『朔間』の家には逆らうことも問うこともできないので、諦めてぼくはただ流れていく景色を眺めていた。

「どこにいくとか聴きたくはないのかの?」
「疑問を持つことは我が家は許されてはないのですよ。朔間さん。」
「なんじゃい。本音は聞きたいということじゃな。」
「安眠妨害してきてるんですから、大層なそれなりの理由があるんでしょうね。」

雑に返事をすると家に帰ってから怒られそうなので、きちんと返事はしますよ。外は学院内とおなじですよ。そう返事を出して、運転手の近くにある時計に目を向ける。もうすぐ、太陽の出る時間帯。朔間さんはぼくよりも昼間の具合が悪くなったりするのに、それでも見たい景色があるとは…粋狂なことですよねぇ。

「我輩は、央くんと明けの明星が見とうてな。」
「イシュタルですか。」
「もうすぐ、学院にも夜明けが来るのでな、央くんは帰ってこないのかの?」

人形遣いもあまり学校に行ってないらしいですから、私だけが行っても何も変わりませんよ。ですから、まだ家で将来のための下準備を行っていたのですけれども。まぁ、朔間さんに言ったってそこまで何も変わりませんからね。それに、あのライブで得たのは、信じれるのは自分の技量だけだと再確認しましたので。設営自体を頼むのが過ちだったのですよ。音響トラブルだなんていいますけど、恐らくあれは仕組まれたのでしょうに。もうぼく一人では美しい音を刻むことはできないんです。電気があって楽器があって奏者がいてようやく物事は動き出すのですから、そうやって世の中は回っているのですよ。おそらく。生徒会があって音楽があってそれを奏でるのは四角四面のアイドルだなんて身の毛のよだつ。

「ぼくは、朔間さんが望まれるならぼくは学校に行きますよ。ただ、演奏は怖いので、しませんよ。」
「構わぬ、我輩は央くんいことがあるのじゃよ。もうすぐ場所につくからそこで話をしようではないか。」
「話、ですか?」

そう、話じゃよ。カラカラ朔間さんが笑うと同時にぼくらを乗せたタクシーは小さな駐車場に入ってすぐに止まる。おりるぞい。とぼくを車を降りるように促すので、さっさとシートベルトをとって車を降りるとどうやらどこかの山を登ったようで、ぼくらの住む街並みにちらほらと路頭の電燈が伺えるが朝も近いこの時間。そらは薄らとぼんやり遠くまで見えるがかすんでいるようにもうかがえた。もうすぐ朔間さんの具合も時間を経るにつれて悪化していくだろうとぼくは思えたので、降りて直ぐに話を投げかけた。

「で。話とは何ですか?」
「今の2年生の一部が生徒会に謀反をしようと計画を立てていての。そこのユニット用に楽曲を一つ録音してほしいのじゃよ。なぁに音楽が好きな央君ならばすぐに全部取り終えてるような量じゃよ。」
「朔間さん、ぼくは今電子機器がそこまで触れません。」
「生の楽器演奏でもよいのじゃよ。」

曲もあるのじゃが、あいにく生徒会に知られぬようにオケを用意しなくてはいけなくての。軽音部で用意したいが、それほど音が揃っておらんで困っておるのじゃよ。協力してくれんか。あの生徒会を倒すためにも。

「……演奏するのは構いませんですが、大丈夫なのでしょうか。その彼らは。」
「大丈夫じゃよ、安心するとよい。我輩も、流星隊も、彼らのために動いておる」
「…それは人形使いの方がいいんじゃないでしょうか?ぼくは五奇人じゃありませんよ。」
「衣装の方は手を進めておる。大丈夫じゃよ、そして我輩たちよりももっともその道に詳しいのが央くんじゃからの。こうして頼みに来ておる。」

頼まなくても命令すれば早かったでしょうに。何をそんなに回りくどいことをされているのですか。ぼくが呆れていると朔間さんは強要するつもりはないのじゃよ。ただ歩き方も知らないような星の子だから、僕という音の標がほしかった。その標さえあれば戦いで戦争で勝てると朔間さんは言う。勝利のための星になれと、音があれば勝てる戦争だと、朔間さんがいうのだから本当にそうなるのだろうけれども。なんだか不思議な気持ちになりますね。

「ほんとうにイシュタルにでもなった気分になりますね」
「多くの神性を持つものじゃからの。」
「ぼくたちは吸血鬼ですけどね。まぁぼくはなりそこなってますけど。」
「そんなことをいうんじゃないわい。同じ……一族じゃろうに。」

何か言いかけて口をつぐみ一族と朔間さんは言いましたけれど、恐らく家族。だとかいおうとしたのではないかとぼくは推測を立ててみる。まぁ、そんなことはないでしょうね。だって、そういう事実は知らされてないでしょうし。朔間さんと凛月さんは。ただ、親せきで顔の似た人。それだけですから。

「央くんが引き受けてくれてよかったわい。これで安心して我輩も寝れる。」
「もしこれはぼくが意固地になって断ってたらどうするつもりだったんでしょうか?」
「毎日こうして央くんの家に突撃して夜な夜なこの時間に交渉しようと思っておったが…実際もうちょっとごねられると思っておったから、タクシーを1週間契約してもうたしのぅ。」

そんな契約切っちゃえばいいじゃないですか。そう僕が言うけれど、朔間さんは少し楽しそうに口を開いた。朔間さんが白。と言えば黒でも白だというしかないので、できれば言わないでほしいと思うのですが、そうは問屋はおろしてくれませんよね。朔間さんは嬉しそうに赤い目を細めてぼくを捕らえて言うのです。
「央くん、明日はどこにいこうかの?」なんて。朔間さんの後ろで明けの明星が輝いてるのが見えましたが、朔間さんで隠れてしまいました。ぼくの勝利はなさそうですね。仕方ないのでため息ついてぼくは体裁を整えて言う。

「はい、明日はどこに行きましょうか?」



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