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2Aでだらだら…といっても予習的なの勉強してたけど。してたら、今日も今日とて千秋が来た。超絶だるい。来た瞬間にスバルが「ちーちゃん先輩!あっくんここだよー」とか要らんこと言うから、俺の首根っこひっつかんで走る。やめてくれ!俺の喉が死ぬ!っていうか気道がふさがれて川が見えてるからやめろって言ってるだろ!!!!いつもいつもてめーは!!!そう怒鳴れど千秋は変わらない。二年ほど繰り返してるのにこいつは加減を知らない、『流星隊』がよく使うレッスン室に投げ込まれて、俺はげほげほと息づいて守沢!!と襟元を掴む。一之瀬殿!と忍に言われて、俺はいいかげんにしろよ。と頭をはたく程度に止める。

「有!聞いてくれ!ライブをするぞ!」
「俺書類仕事要員だろー?もう、いいじゃん六人目なんて捨てちまえよー千秋。」
「俺にはお前が必要なんだ!『流星隊』には有の力が必要なんだ!」

六人目のメリットなんてなんもないのにこの男は俺を必要だというのだから、俺の顔はひきつった。怒りたかったがどうも後ろから感じる下級生の視線に俺は、弱い。いやー小さいのはかわいいと思うよ。その期待に満ちた目でこちらをみるのはやめてほしい。いなかったら俺は千秋と殴り合いしてる。言い切れる自信はある。

「……下級生に免じて受けてやるよ。」
「本当か!有の練習着は、高峯のサイズで間違いないよな?」
「……確信犯かよ。いや、もう毎回このパターンだな。」

もうちょっと一辺倒なのやめようぜ。と千秋に言うが千秋はどこ吹く風……だめだよな。うん、お前昔からそうだったよ。と一人がっくりうなだれると、忍がどうしたでござる?と言わんばかりにおどおどしている。俺は平気だよ、ちょっとメンタルが…あてられてるだけだから。と告げると、あぁ、と鉄虎も頷いている。そうだよな、お前ら春からよくやってるよ。いや、俺去年のあれでかなりごっそりもっていかれたもんな。三人いるからなんとかなってんのかね。っていうか、斑と千秋とごりごりあててくるのやめてくれよ。といつもいつも思うよ。振り回されるのは慣れてるけどやっぱり、どっか来るよね

「『なり』は、がんばりやさんですからねー」
「ちがうっての。」

俺は、逃げたの。王さま。みたいに。おまえらから。心の中でそういって、俺は部屋の隅でごそごそと練習着に着替える。上のジャージは暑いで黒シャツにジャージ、上は俺の腰元で縛っている。ぎゅっぎゅっと縛っていると、『2wink』の一年が入ってきた。わいわいとしているのを聞きながら、一人ちょっと昔が懐かしく感じた。あの光景に似てるな、とか思うんだから俺もまだまだ甘いんだろな。なんて一人思う。ふっとため息を吐くと、どうしたんすか?と翠が聞く。気にすんな。と告げる。と打ち合わせ始めるよー!と声がかかったので、翠とほら行くぞ。と歩き出す。

「司くんから概略だけ聞いたんだけど、感嘆に説明すると客船の甲板にステージを設置してライブを行うんだって。派手に見せてほしいっていうのが要望なんだけど、『流星隊』の皆さんの意見を聞かせてもらえます?」

投げかけられて俺は翠と一緒に一歩下がる。派手さを言うならおそらく俺に声がかかるというのは千秋の言葉に間違いはない。げっと心の声を出しながら、誰とも視線を合わせない様に視線を動かす。鉄虎が「夏休みにやった【海賊フェス】なんかもそうッスよね。仙石くんも一之瀬先輩も、縄にぶら下がって滑空してたじゃないッスか。ああいうのを想定すればいいんスかね?」……俺に海に飛び込めと?……ぼそっとつぶやいたが、いや、それでもいいかもしれない。千秋とお別れで来てるなら。とか一瞬思ったが、だめですよ。と奏太にたしなめられる。わかってらい。そんなことしたら学校から斑がやってきて海でも割りそうだからこええよ。それも想像できるから、勘弁してほしい。どざえもんは起こすなよ。

「一之瀬先輩とロープアクションでござるか…先輩からのアドバイスがあり、あれからいろんなドリフェスを経験して経験値が上がっているでござる。今なら危なげなくこなせるかもしれんでござるよ」
「…俺はそんなこと言ったっけ?……体の使い方か?……いやあの頃もやさぐれてるし、投げやりだったしなぁ。」

なんかうすぼらけに言った気がするがもう過去のことをおぼえてない。しらねえよ半年ぐらい前の事なんざ。俺は大検とるために必死なんだからさ。正直言っていい?俺それどころじゃない。まじ。俺今しゃべってたら単語一個でも覚えたいとか思ってるけど口に出すと怒られるし、そのままなんか任されそうなので、俺はだんまりを決める。

「要望も満たせるでござるし、『流星隊』はロープアクションを中心にパフォーマンスするって感じでいくでござるか?」
「いや、【海賊フェス】と違って今回は本物の船の上でのライブだ。有なら行けるだろうが、ワイヤーアクションをして万が一にも海に投げ出されたら一大事だ」

おい千秋、お前俺をなんだとおもってるんだ!?ほんと前から俺の事人間じゃないとか思ってない?とか喉から出かけたがかろうじて飲み込む。俺比較的でたらめ人間だけど、そんなビックリショーなんて出てねえぞ!日々樹にやらせとけ!とか思いつつ、そちらも飲み込む。ぐっと飲み込んで、冷静になれと自分に唱える。

「あれは海辺だったからな!なので、純粋にパフォーマンスだけで派手に見せることになる。『2wink』はアクロバティックな動きを得意としているし、二人がメインになるように演出してはどうだろうか。」
「え?いや、あの……。俺たちを主役にしてくれるのは嬉しいんですけどね。『流星隊』には【イブイブライブ】の時の借りもありますし、あんまり借りをつくって返せないってのも嫌っていうか。せっかく広いステージでライブができるんですから、どちらの『ユニット』も目立つようなライブをしましょうよ。俺は『流星隊』を引き立て役にするために誘ったわけじゃないですしね」

区分としては外部の仕事なわけですから、お互いに力を合わせてライブを大成功させるって方向で頑張っていきたいです。と『2wink』の一人が言う。俺はちなみにどっちがどっちか見分けはつかない。似ててわからん。そんなひなたかゆうたかに千秋は頷きながらその子の名前を言って頭を撫でる。そうか、きみはひなたくんね。はいはい。覚えた。とかやってるともうとんでもなくうれしそうな千秋が「よぉし、じゃあ身につけたい技術があったら何でも言ってほしい!俺も有も奏太も協力するぞ!『2wink』は一年生だけの『ユニット』だから独学でやっている部分も多いだろう。そして余裕があれば『2wink』の持つ技術を『流星隊』の一年生に教えてやってほしい、それならひなたくんも納得がいくだろう?」と言い切って俺はあんぐりと口を開けるのだった。いや、まって。千秋。俺うんともすんともいったおぼえないんだけど。そんな様子にやった〜!とひなたが喜ぶ。じゃあ俺は『流星隊』の有先輩にレッスンしてもらうから、ゆうたくんは一年生を指導してあげてよ!と俺の手を引いてひなたくんが喜んでいる。

「……千秋?」
「そんな心配をするな!俺もついてる」

おれがついてるじゃねえよ!と後輩がいる手前怒鳴ることもできないので、俺は千秋に耳打ちを一つ。お前覚えてろよ。おばけとなすび絶対に口の中に突っ込んでやると言うと、千秋がものすごいビビったので俺はひどく満足した。ざまぁ。と呟くと、翠が「一之瀬先輩、えげつねえ。」と笑ってた。




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