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遠くでばさっと音がした。ん?とおもってゆるゆる目を開くと、遠くで千秋が起きてる気配がする。あいつどうなったんだと俺はため息を混ぜながら、ゆったり上体を起こす。千秋が上体を起こして座ってた。

「……むっ、寝ていたか?」

ちょっと寝すぎた感じだな。あ〜頭がボンヤリする0どこだ、ここ?アジトか?悪の組織のアジトか?。くそっ!この俺としたことが、まんまと一之瀬の罠に引っかかるとはっ、だがいつまでも囚われの身になっている俺ではない!とう!華麗に跳躍っ!臨戦態勢!さぁさぁどこからでもかかってこい!有!
いつ俺がお前に罠をはめた!?俺お前の部下で、追加戦士だよな!?突っ込みと同時に手近にあったあんずから借りているハリセンで、シバき倒す。

「……あ痛っ!?有、いいいいいまのはな!」

動揺しすぎだぞ、俺もちょっとイラッとしたので二発目も追加で殴っておく。なぜ今俺をハリセンで殴ったのだ?とかいうけど、お前が俺の名前を勝手に使ってるからだよ!ばーか!っていうかそれよりもだな。

「病人なんだから安静にしてろや!」
「あぁ、色々思い出した!」

両手を叩いて、あっ!という感じで思い出している。俺ははいはいと言いながらちょっとごめんなー。と言いつつ千秋の額に俺の手を重ねる。反対の手を俺の額に当てて、んー熱は下がってるぽいけど、まだだよなぁ。と考える。俺は過労で倒れてしまったのだな、不甲斐ない。まだ鍛えk田が足りんようだ!こんなことでは、世界の平和は守れない!よぉし!俺の招魂を叩きなおすために、そしてどんな困難にも耐えうる頑健な肉体を作るために筋トレをするぞ!有もどうだ!
ぐっと立ち上がろうとするので俺は慌てて、おい落ち着けと座らせる。シバくぞ!!っていうと落ち着いた。

「うう眩暈がする。」
「おい。いい加減にしとけよ」
「わかった、大人しくしておくから。」

水は?食欲はあるか?と問いかけると、水をくれ。というので口を開けてぬるい水を千秋に渡す。今日にでも誰かに頼んで千秋を家に帰す方法を考える。もうちょっと熱下がればいいんだけどなぁ。とか思いながら、千秋に食欲を聞く。あるぞ!というので粥でも作ってくるか。と俺は呆れながら食堂に歩みを向ける計算をする。めんどうだな、コンビニで済ますかと思案を切り替えると、こんこんとドアがノックされた。あー?あいてるー?と声をかければ、「私ですー」とドアが開いてあんずが見えた。

「おお、転校生!」
「一之瀬先輩が心配で来ました。」
「千秋じゃなくて?」

一之瀬くんの心労が気になって。と言われると、すまん。となった。いろいろ考えて夜が明けてんだからほんと俺に引っ張る適正ないよな。ってホントに思う。とりあえずは居んなよ。と促せば、あんずが荷物を持ってることに気が付いた。なにそれ?どなべ?と聞くと、守沢先輩のためにおかゆ。一之瀬くんには味濃いのを持ってきたよ。俺と千秋に別々の器を差し出される。作り立てらしい匂いをするそれをうけとって、千秋に「フーフーする?」とカラカラ笑っておく。お前はと千秋に呆れられたけれど、いいじゃんね。お前の一晩(ほぼほぼほったらかしだったけど)看病したじゃん。

「あんずも笑っとけって、な。千秋?」
「そうだな、笑っていてくれ、転校生。お前の笑顔が、俺の力になる。」
「俺たちーだろ?スケコマシ」

ふざけながら、俺の笑いがガチで笑って引き笑いが混ざる。わらいすぎてお腹が痛い、ひぃひぃ言ってると、俺に観察しあきた千秋が、現在の確認を始める。今何時だと聞かれたのであんずが時間を伝える。土曜日でよかった。日曜だったらスーパーヒーロータイムとか言い出すので、見てたら俺は、冷ややかな声でちあく〜ん?わかってるよねぇ?と隣クラスの瀬名に似せた声色で言うと、一瞬ぶるりと震えて背筋を正して「ハイ」と答える。俺そんな瀬名に物まね似てた?とあんずに聞くと、さぁ?というぐらいに首を傾げる。

「ま、千秋の事だから土曜日だし寝る、っていうだろ?」
「あぁ。有がずっと看病をしてくれてたのか?」
「あんず一人なんて残せねぇだろ?」

偉いなぁ!と俺の頭をガシガシと撫でようとするので俺お前と同じ年だけど!と言うとそうだな!と笑って手をはなす。

「有なら俺を置いて帰ると思っていたがちょっとうれしいぞ!かわいい女の子にも看病してもらったりするのは長年の夢だった!まぁ彼女どころか女の子でもないがな。」
「わるうござんした、女顔で!!」

ぎりぎりと睨みつけると、怖い擦るなよかわいい顔が台無しだ!とか素でいうからたちが悪い。はぁとため息つくと、どうした有?と顔を覗いてくるんだから、もうほんと。俺がぷんすかしてると、「夢をみるぐらい、いいだろう?あぁ、なんだか幸せだなぁ」とか言ってのけるので、あんずにしてもらえ!と盛大に食べてたスプーンを突っ込んでやった。ぐふぉ!!!!と音を立てて、あんずが大丈夫ですか?と背中を叩いている。
あぁ、もう。と思いながらも、千秋を嫌いになれないでいるのだから俺もちょろいのだろう。

「あぁ、大丈夫だ。有のこれぐらい昔と比べたら。それにただの過労と風邪だろう。寝ていれば治る、風邪薬も飲ませてくれたみたいだしな。濡れタオルだけ、ぬるくなってるから、交換してくれるか?」
「あ、はい。」

ヨカッタナーカワイイコダゾー。と言うとあんずがもう!一之瀬くん!とかいいつつ怒ってるが、千秋は千秋で『彼女に看病してもらってうれしい』というし、むかぁしひ弱な子どもだった頃に戻った感じだが。お前のことをお母さんと呼んでしまいそうだ。と言っている。お前はと、言いかけたが、諦めて食事を勧める。あんずと千秋がなにかやり取りを交わしているので、それを遠巻きに眺める。

「ふたりとも、ありがとう。風邪をひくと心細くなるから、誰かがそばにいるだけで勇気づけられる。」

年下の『ちんちくりん』とはいえ、かわいい女の子だしな。言うことなしだ、ふははは。
嬉しそうに笑っているが、あれはだめだ。俺は立ち上がって昨日あんずから借りたハリセンを返却すると、あんずがにっこり笑ってぱしり。とハリセンを鳴らす。

「あんず、思いっきりやれ。俺が許可する。」
「はい。」

パッシーン!!と小気味よい感じで音が鳴る。思いっきりやれ、と俺がいったのもあるので、止めるつもりはない。痛い!やめて!止めて!と俺に懇願するが、俺も平然と、なに?千秋としらを切っている。バシバシしばかれてるのをそのまま見ているが気づかないふりをしている。

「すまん。おまえにも予定があっただろうに。」
「ほんと、お前は…。8月までライブ出ねえぞ。」

俺の看病でせっかくの休日を浪費させてしまっている。##name_1##も転校生も子のカリは必ず返すぞ。返すなら俺をしばらくライブに出さないでくれ、んで、三毛縞も近づけないでくれ。と思う。それよりも俺ほんと試験がもうすぐなんだって、ほんと。参考書とか片づけれなかったんだけど。

「あいつらみんな心配してたから元気になったらあやまっとけよ。」
「皆にも心配をかけてしまったな、情けない。俺は隊長失格だ。」

んなこというな。治ってから考えろ、クソ野郎。くわねえなら、さっさと薬のめと俺は乱暴気味に千秋の口の中に薬を突っ込んでやる。薬の苦さに悶えながら、『流星隊』のみんなはどうしている?と聞かれたのでお前につき合わされてる感じだったから休みやってるぞ。AV機器も俺がなおした。そういえば今日は野外ライブがあるはずだが…?と言われて、あぁそうだった。と思い出す。時計を見ると集合時間には早いのだがそろそろ出て支度をはじめないといけない。

「あんず、俺ちょっと出てくるから、千秋宜しくな?」
「はい、まかせてください。暴れたら縛ります!」

満面の笑みで言うのやめろ。会場設営がほぼほぼ終わったころに呼び出せば千秋もなんとかなるんじゃないかな。と俺はあんずに耳打ちしてさっさと寝ろ。夕方にはお前を家に連れて帰るからな!と念を押せば、お前の家に泊まってもいいんだぞ?とか言い出すので強制的に落として、俺は足早に保健室を出るのだった。




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