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クラスライブ当日。時間5分前にたどり着くと全員集まっていた。俺に気づいた神崎が、俺に気づいた。一之瀬殿と言われて、明星が俺に飛び込んできた。おいこら。朝からうっとおしいぞ。「あっくんは来ないと思った!」とか言われて、心外だな、仕事はちゃんとするよ。と言う。
そうだよね!お仕事に対してはあっくんはきちんとするもんね!夏目とは違うけどきちんとやってくれるって俺知ってる!……そうかそうか、はいはい。と俺はべりっと明星を離す。俺以外のクラスメイトが集まっているので、俺時間間違えた?と氷鷹に聞いてみると、そんなことはない、集合時間5分前だと言われる。よかったよかった。多少迷いはしたが、問題なく来れてよかったと思う。

「もったいないよね、みんなできたときに食事したけど、おいしくて感動しちゃったもん」
「あー俺仕事でいけてないやつか。」
「そうそう、また来ようね!あっくん」

残念俺お前と学生姿で来れねえっての。次からは俺はお前らに奢る立場みたいだね。と心の中で言う。俺のことを知ってるあんずが、おどおどと視線をさまよわせている。俺はその視線に気にすることなく、お前は黙っててと言わんばかりに目線を送る。俺の視線に気づいてか一つ軽く頷いて、何事もなかったかのように取り繕っている。

「ねーあっくん、どれくらいのお客さんが来てくれるのかな〜?。ポスターを作って宣伝して、ビラとかも配ったからそこそこは集まってくれると思うけど。」
「あんずのほうでも知り合いに声をかけたりしたときいてるから、ある程度の集客は見込めると思うぞ」
「まーそれなりには来てくれると思うよ、校内SNSでいろいろ手は打ってるし、来やすいライブだと思うよ。」

ヒーローショーのついでに宣伝もさせてもらってるので、親子連れで来る可能性はある。そこからの伝手でママ友も狙ってみておく。そういう旨を伝えると、明星はあっくんはすごいよね!そんな方法おもいつかなかったや。この【クラスライブ】の間にち〜ちゃん先輩に振り回されてたんだね。と言い切られて、うん、そうだよ。と遠い目をしてると視界にあんずが入った。電話をしているのだが、そこで固まって慌てて電話を切った。

「あのね!あのね!ひなたくんから今電話があって。もうお客さんがステージ付近に集まってきているらしいの!」
「えっ、ライブの時間はもっとあとだよね?それなのに何でもう集まっちゃってるの?」
「店側の告知が間違いがあったのかも?まぁ、待たせてるわけだし…どうしようかねぇ。」
「ステージの準備が終わってないだろうが。」

時計を確認する。んーと考えながら、どっか別の場所でヒーローショー?する?と問いかけると、ち〜ちゃん先輩に毒されてるから、と言われて、あちらがすごいことになってるな。と神崎たちが見ている。まぁ、落ち着いて考えたら俺も人のこと言えないけど『Trickstar』の三人、『UNDEAD』一人、『紅月』一人『Switch』一人集まってるんだからそりゃあ、もう、集まるだろうね。『Trickstar』なんてこの間アイドルの頂点とっちゃったしねぇ。と俺はしみじみ思う。

「それなら俺にいい案があるよ!」
「……なんか、やな気がする。」
「お客さんは喜ぶし、レストランの宣伝にもなる。そんないい案を思いついちゃった!」

っていうのが15分前だったと記憶している。いや、まって。明星の声を聴きながら、遠い目をして現実を見る。そこまで俺たちがこのレストラン店員としてみんなを『おもてなし』できたらと思います!おいしい料理やスイーツがたくさんあるし、少しでも楽しい時間を過ごしてもらえると嬉しいな!
黄色い歓声をききながら、俺は呆れた顔でぱちぱちと手を打つ。氷鷹に脇腹をつつかれながら、呆れている。しっかりと表情を!と言われたが俺は時間外営業はしない。スタントはその時しかできないもんな。ファンサービス?んなもん千秋にやらせとけ。それでも俺は顔なじみの親子連れに方にメニューを伺いに行く。おーっす。と声かけつつメニューを差し出す。

「ホワイト―!」
「はいはい、わかった解ったご注文はー?」
「お子様ランチィ!」
「はーい、お母さんは―?」

これ、と言われてそれを輪唱する。おっけー今日のライブ楽しみにしててねー。と手を振って対応して、ふと視線を動かすと、カメラを持った青葉が一人。植木鉢に身を隠す様に立っていた。俺は、何も言わずにそっちを見る。とりあえず、一旦注文を先に通していると、お水ください!とかほかのメニューを取りに行ったりあわただしく回る。アクロバットして!とか言われるのでその場で周りを確認してからバク宙をする。もっとできないの?と言われるので十二分な距離を開けて一通りの無いところで大きく体操の技を一つ。大きな歓声を得ながら、はい、おつかれさんです!もっと?それは本番でね!と言いながら別のテーブルをめぐる。

「一之瀬、できたから取りに行ってくれ」
「了解、はーい」

適当に返事をして、神崎たちから誘導を受けた人間をテーブルに誘導する。この間のライブで見知った人たちもいてちょっとおれは嬉しくなる。そのまま対応してたりなんやらしていると、厨房の方でひなたと神崎の声を聴いて俺は小さく笑ってそっちの助太刀にかってでる。

「ふっふっふ、センパイに指示を出すなんてなんだか新鮮、ごめんね神崎先輩!ここでは俺の方が『先輩』だから!」
「じゃあ、その『先輩』さんよぉ。俺のところのぶんまだぁ?」
「あ、一之瀬先輩!ちょっと待ってくださいね!」
「へーい。」

適当に返事をしつつ、入ってくる乙狩にこれ、何番にと指示を出していく。校内アルバイトも経験はしてるのでこういうのも慣れているし、三毛縞に叩き込まれた部分でもなるので、問題なくすらすらこなしていく。次は!と言ってくるので、はい、とドリンクを作って神崎にトレーのっけろ!と言いつつ番号を指定すると、明星にアクロバットやってーとせがまれて、俺は、適当に返事しながらアクロバット用の場所を確保したり、遊木のヘルプをさばいたりてんやわんやして時間が過ぎる。




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