奔走、就中の暁闇ライブ。-08

鞄はマネージャーに預けてたので、俺は着の身着のまま学院に来たのだがまー警備に学生証を持ってないからって門前払い。これでも3年通い続けてたんだけど、なんていろいろ一悶着あったけれど、偶然通りかかった蓮巳にかけあって、なんとか校内に入る。蓮巳に会ったついでに、『Knights』が借りてる部屋について問い合わせると答えてくれた。適当に返事しすぎてガチャガチャ言われたけど、とりあえず礼だけは言った。教えてもらった部屋に向かうと静かだった。…まだ借りてない時間か?って思って覗き込んだら部屋の中央ぐらいでメンバーと転校生が難しい顔をしていた。

「泉ちゃん、文哉ちゃんからの電話大丈夫だったの?」
「大丈夫なわけないじゃん、ヤバい。ぐらいで電話が切れたんだからさ。」
「…あの…」
「知らない電話番号で切羽詰まってたよ?事務所で問題があったんでしょ?監禁沙汰になってたらどうすんの」
「……いや、抜け出してここにいるんですけど…」

なんか険悪な空気でてるし、レオは珍しく考え込んでるし。すーちゃんは物騒なこと言い出してるし…俺どうして止めに入るか考えてると、りっちゃんと目があった。ひらひら〜って手をふってくれたので振り返したけど、いやいやまって。

「ま、ふ〜ちゃんそこにいるからいいんじゃない?」
「事務所でって言ってたの聞いて…文哉」
「うん、俺だよ?」

あんたさっき電話でヤバいって言ってたじゃん。なんてセナに言われたから報告するように、俺は「だから逃げ出してきたよ。カーテンを切り裂いてロープにして、ちょっと冒険小説みたいでわくわくしたけど、本の知識って裏切らないよね。あっけらかんと言うと、ナルくんとセナが呆れてた。とりあえず入れば〜?とりっちゃんに言われたので俺はみんなのもとに寄ってセナの隣に腰を下ろす。

「ちょっと最近思うところがあって事務所辞める。って言ったら考えを伝えたら考えあらためる迄事務所を出ることを許さないってさ。」
「それって大丈夫なんですか?よければ法律事務所ご紹介しましょうか?」
「まぁ、それもいるけど。とりあえずライブまでは学院内に引きこもる感じになるかな。」

家に帰ってマネージャーが突っ込んでこられても困るし。ここなら警備もしっかりしてるから突撃されないよね。撮影は他の役でもなんとかなるのばっかりだし、仕事に穴開けるつもりはないけどさ。穴開けようとするのは事務所だし。そっちはそっちではたらいてもらえばいいと俺は考える。

「文哉、昔からのマネージャーはどうなったんだ?」
「クビにされたのは聞いたけど、むっちゃんの連絡先ももってないんだけど、セナ知ってる?」
「俺のマネージャーなら知ってるだろうねぇ。連絡とろうか」
「情報は欲しいかな。」

セナ、ごめん。そっちに連絡とってもらっていい?そう投げれば、了承が飛んできて、俺は考える。どこまでも表に出ない様にしたいとは思う。学院に泥はべつにどうでもいいけど『Knights』に泥は迷惑はかけれない。俺はレオの方に向いて口を開く。最悪どうにもならなかったら俺を切ってくれ。高校生の俺にできることなんてたかが知れてるかもしれないけれど。お前たちに迷惑はかけたくない。俺の軸はレオとセナだ。その二人の阻害になるのなら俺は自分の命だって絶つつもりで生きてきた。その旨を伝えれば、周りがざわめくが俺はまっすぐレオを見た。俺の気持ちを知ってか知らずか、レオは首を横に振った。

「それはしない。文哉もそろって6人で『Knights』だ。そのために俺たちは動くぞ。さっきまで話してた通りにな。」
「…はい?」

いやいや意味が解らない。首をひねっていると、くすくす笑ったすーちゃんが「保村先輩は安心して一番後ろを歩いてきてください」なんて言って部屋から出てった。それに続いてあくびをしたりっちゃんがまぁ、飼い犬なんだから黙ってて愛でられててよ。とかいいつつ俺の頭を撫でて出て行く。おい、こらなんだ。俺が嫌いか?どういうことだ?誰か説明してくれよ。

「文哉ちゃんが今まで愛してくれた分をお返しする時よねぇ。」
「ナルくんまで何言ってるの?」
「お姉ちゃんにまかせなさいっ」

…君たちに任せる方が不安なんだけどさ。ちらりと部屋の中を確認すると、転校生とセナとレオそれから俺の四人。転校生がそわそわしているし、時計をさっきからチラチラ見ている。じとりと見ていると俺の視線に気づいてか小さくなった。いや、俺とってくいやしないんだけど。とか思ってると、レオがお前もさっさといけ。と転校生の背中を押して部屋から追い出した。

「レオ、セナ?」
「文哉、俺たちに言うことはないの?」
「…んー…?」

何だろう?セナスタジオにスルメを大量に隠したりしたこと?レオの書いてる最中の楽譜を片っ端から写真撮ってたけどこの間うっかり消してしまった事?あれやこれやと心当たりのことを言ってたら、セナに頬っぺたをつままれた。痛いんだけど!!撮影がないから何されても文句はないけど、痛い!!っていうかなに、これ不正解だから怒られてるの!?

「自分を大事にしな。あんたは俺たちの番犬。なんだから、たまには飼い主に甘えろ。犬なんてそんなもんでしょ。」
「イテテ。頭揺らさないでって。椅子から落ちるって!」
「セナも心配したんだぞー。あとで皆に感謝しとけよなー文哉」
「みんな、心配しすぎだっての」
「まったく言わない我儘なんだから、かなえてあげたいっていう気持ちなんだよねぇ」

働きすぎだから、たまにはながされてろっての。俺たちを振り回せって、犬。頭をつよくはたかれたが、俺はそれも嬉しいので甘んじて受ける。なによりも『Knights』のメンバーが心配してくれるのがちょっとうれしくて顔がにやけてしまう。顔のかたちが崩れてしまうんじゃないかっていうぐらい破顔した俺は、今がとっても幸せだと感じる。ニコニコしてたら、セナが立ち上がって文哉用の特訓するからね。と言い出した。それもこれも嬉しくて俺は笑顔で全部こなしてしまうのでした。


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