奔走、就中の暁闇ライブ。-04

事務所からの呼び出しがあったので、仕方なく事務所に寄る。こういうときは大体むっちゃんにから連絡がくるはずなんたけど。おかしいなぁ。と思いつつも事務所にはいれば、違和感ばかりが頃がつていた。一時期よく通ってたのは俺の今までの台本を好意で置いて貰ってたからなんだけど、事務所に台本一式がすっかりなくなっていた。
小さな頃からたくさんの仕事をしてきた証拠の台本が綺麗さっぱりなくなっていた。どういうこと?と考えてれば事務所の奥から新しい社長が姿を表した。

「保村くん、おはよう」
「あ、おはようございます。社長、今日呼び出されたんですけど、何かあったんですか?」
「君が学院で活動してるユニットなんだけれどと」
「社長、先日もお話しましたけど…」
「そうじゃなくて。」

じゃあ何だよ。と喉まででかかったけれど、ぐっと飲み込んで、俺の置いてもらってた台本たちはどこにやったんですか?そう問いかける。社長は、にこやかに笑って捨てたという。会社に置いてあったって、邪魔じゃないか。
何が邪魔なんだろう。俺の今まで歩いていた轍でもある台本のなかには俺の書いてきた本だってあった。それを、邪魔だって?なんでお前が決めるんだよ。どうして?あんたは、なんだ?俺達を、所属してる商品は消耗品だって考えてるんだろう?言いたいことが募って、頭の中心がくらくらする。それでもなお社長は、言葉を放っていく。

「学院でアイドル活動をするならうちで本格的にやればいいだろう?」

脳天を殴られた気がした。俺の青春のどこかにだってかすりもしないお前が、なんで俺の道を決めようとしてるんだよ。売れない俺だからか?潰したいのか?色々な考えが沢山展開して俺の心を縛っていく。どうやって返答するか、思考を展開していると、俺の横をすっと誰かが通った。

「文哉!」
「むっちゃん…」
「社長、先日もお答えしましたけど、文哉はそれを望んでません。それに他の子はよそに入ってたりしますから。」

他の子とよそ。という単語で『Knights』の話だと悟る。まだ言ってるのかオッサン。とか喉まで出掛けて飲み込んだ。むっちゃんの背中を見ながら社長とのやりとりを聞いてれば、社長はなんとも納得していない様子で部が悪いと判断したのか逃げてった。

「逃げてったか、あのタヌキ。」「むっちゃん。」
「どうせ、誰の事だかよくわかんないでしょ。」

小さな頃は媚びがどうとか言ってたのに、ここまで変わってしまうとは恐ろしい。むっちゃんのそんなことばに首をふってると、この間の決めた?と投げられる。何が、なんて言わないけれども、どれのことか悟れるのは長い付き合いだからだろうか。諌めるようにむっちゃんの名前を呼ぶと、逃げるなら今のうちだよ。と言う。

「いいや、あんたは逃げるべきだよ。逃げな。あの子たちが心配でも一番大事なのはあんたの心だよ文哉。」

あの子たちは何年もこの世界を渡ってるんだ、身の振り方も分かってる。とやかく言うつもりはなかったけど限界だ。あんたは今すぐ逃げるべきだ。またあんたが壊れようとするならば、私たちは全力で助ける。それだけだよ。きっと鳴上くんや瀬名くんもそうだよ。今ならまだ間に合う。逃げよう、あんたが壊れる前に。壊れてしまってからじゃ、遅いんだよ。今すぐ首を縦に振ってくれ。
すがるようにむっちゃんは俺の腕をつかむ。昔は大きい人だとも思っていたけれど、今となってはその背と同じぐらいにはなった。俺が大きくなった分むっちゃんも同じだけ老いていってるのだ。俺を掴む手が皺が目立つようになった。

「むっちゃん、俺はまだここで頑張るよ。うちのユニットに手を出したら、その時辞める。」
「文哉。あんたね」
「解ってる。」

解ってるよ。まぁ、俺がいいな。って思える事務所がない限り俺はすぐに動かないよ。『Knights』にも手を出されてないしね。
そう言い切って、にっこり笑えば作った笑いをやめろ。と束ねた紙の束で俺の頭を軽く叩く。痛くもないのだが、呆れながら痛いと訴える。激しいのがお望みならもっと強くしてやろうか、と言うので丁寧にご遠慮する。で、今日呼ばれたのってなになのー?と話を切りかてみる。むっちゃんは、一瞬眉間に皺を寄せてから、あんたのほぼほぼ主役の話が来てるんだけど社長が受けちゃって…。そこでお察ししたが、仕事かあるのは純粋に文字に触れれるので嬉しいとは思うよ。どんな役かなとか思いつつワクワクして台本を受け取り、とりあえず今日はそんだけだから。と会話したのがむっちゃんとは最後。
たぶん、この会話を聞かれてたんだろうなとは思うし、なんか昔のヒトラーの政権を思い出した。ほんと何となくなくなんだけどさ。どこに耳があるか分からないから迂闊なことを言うなよ。ともとれるこれには俺も辟易した。
むっちゃんの代わりの新しいマネージャーはどうも新しい社長寄りの人らしく、俺も見張られているような気がしたし、マネージャーが変わった途端にまた仕事量が増えた。どうやら、俺の休みは考慮されてないらしい。まともな引き継ぎがなかったんだろう。だから、俺は休みをくれと主張をしたのだが、悉く却下され、俺のストレス発散の読書時間が増えて睡眠時間が減った。まるで前みたいだな。と思うと同時に、まだ『Knights』には手が出てないからまだいける。と考えてる俺がここにいた。


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