-ナルくんとセナハウスで俺。

「ねぇねぇ文哉ちゃん。」

セナハウスで今度のドラマの台本を読んでると向かいに座って甘いものを食べているナルくんが俺を呼ぶ。なに?と聞けば、それ次クールの?と言われてそー。と返事しながら次のページをめくる。アンドロイドが感情をもって動き出す学園コミカルドラマ。と伝えればナルくんは昔みたいね。と言い切る。
覚えはしっかりあるので、まぁ身内以外にはまだ無理だよー。朔間につっつかかったもん。と手のひらをパタパタ振る。この間の日々樹に強くあたるしー。もー。と言いつつやっぱりレオがいなきゃむりー。と机に突っ伏す。そろそろ卒業も間近になってるのにレオ離れもセナ離れもできない。もう一年間戻らないかなぁ。と呟きつつ丁寧に台本を閉じる。あら、一年前なんて文哉ちゃんオロオロばっかりしてたじゃない。『王様とセナが居なきゃ俺は笑えない』とか言ってたのよ?と一年前のことを持ってこられて、俺は一人動揺する。

「い、いや。そう、だ…ったけどぉ!!でも、俺一年でナルくんともりっちゃんともすーちゃんともこうして笑えてるよ?作ってない自分で、セナ2号とか揶揄されない作り物の俺じゃなくてさ?」
「まぁ、そうよねぇ。」
「っていう感じの台詞だけど。ど?」
「ちょっと文哉ちゃん!」

なんてね!まだこの辺り決まってないから白紙なんだつて。ってか、あと三時間後にオーディションなんたけどねー。一ページ目に書かれたスケジュールを見せると、あら大丈夫なの?と言われるが、大丈夫ー。ほぼ決まってるやつだからー。どれが?作りが。
人間ドラマはここにゴロゴロ転がってるから勉強にはなるんだよー。コロコロ笑っているといつかとられちゃうわよー。と言われるが、産まれてからずっと芸能界を生きてるんだから、そこんじょそこらにゃぁ負けないですよー。と想像力は世界を作る翼なんだから大丈夫だよー。生ぬるい刃なんて持ってたらここで生きていけないからねぇ。しみじみしつつ時計を見るとバスに乗る時間が迫ってきてる。挨拶は大事だし、戦場用の仮面はつけなきゃいけないもんね、と思考して俺は、そろそろ行かなきゃ。今日レッスン終わるまえに帰ってくると思うよー。と言うと、あらほんと?とナルくんが言う。

「新たな俺を捕まえて帰ってくるから待っててねリトルレディ?。」
「文哉ちゃんが言うとほんとに叶いそうよね〜」
「叶いそうじゃないよ。叶えるんだから。」

ニッと笑って俺はセナハウスを出しなにナルくんの頭を撫でてから、じゃあ行ってきまーす。と手を振って歩き出す。いや、今晩は鍋食べたいなー。あ今度写真の仕事あるから減量だなー。とふと思い出して、ちょっとブルーになるのだった。

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