夏空*駆けるシュヴァルライブと俺。-2

事務所に書類を出してから俺は学校に向かうと、セナと朱桜くんと斎宮のところのがきんちょが集まっていた。俺はおはよう。と声をかけてから、なんでもなく携帯を触る。今日のスケジュールを新たに確認していると、事務所からメールが一つ。うちのマネージャーから連絡だった。目を通していると、視線がチラチラ動いてるのに気が付いた。顔を上げれば、斎宮のところのがきんちょが何か言いたげにこっちを見ている。

「なに?」
「なんでもないねん!きにしやんとって!!」
「あっそ…。」

なんでもないというならこっちを見る必要ないだろ。喉まで出かけたけど、とりあえず一緒に動くメンバーなので、仕方ない。かみつく必要もないので黙っておく。再度携帯に視線をおとす。マネージャーからの連絡を再度読み直して、送りなおす文面を考えていると、朱桜くんが転校生の存在に気が付いたらしい。おはようございますと言いながら、たったか走っていく。そんなのを目で追いながら元気だねぇ。と小さくつぶやく。

「文哉。」
「どうしたの?セナ。」
「なんでもない。」

そう…変なセナ。と短いやり取りをしながらも、視線が携帯に堕ちる。今日の段どりやらを調べていると、鳴上君が朔間の弟くんをつれてやってきた。今だ眠そうな弟くんをどうするかと思考する。背負っても問題ないのだが、先日移動する際にふ〜ちゃんチビで足が地面につく。とか言われたのを思い出して、どうするか考える。

「ちょっと、なるくん?時間ぎりぎりなんだけど。」
「ごめんなさいねェ、泉ちゃん。ギリギリまにあったってことで大目に見て頂戴?」
「凛月くんつれてきてるならしかたないよ。ほら、セナ。」
「汗だくになっちゃってさ。そんなキャラだっけ?」

他人の思いに口出さないの。と俺は言い切る。俺の想いは、レオとセナの軸に構成されてるので、俺がセナにそういったのが珍しいのか、鳴上くんが驚いている。俺は基本イエスマンだけど、そういうのは別。鳴上くんのアイデンティティーに何か言うならば俺はそれを止める。俺のアイデンティティーを止めるならばそれがセナだって……戦える…はず。うん。たぶん。

「みんな揃ったんだし、さっさと移動しよ?」
「んだね。」
「ほら、くまくんシャキッとして!」

セナが弟くんに向いて歩き出すので、俺はさっとタオルを取り出して、鳴上くんに未開封のペットボトルと一緒に渡す。倒れないようにね。と一言のこして、俺は朱桜くんと共に行動を開始する。後ろでちらちらこっちを見ている斎宮のところのがきんちょなんて気にしないことにした。

「朱桜くん、行くよ。」
「はい、保村先輩!」

俺の横をとことこ歩き出すので、水分とったか?とかいろいろ質問を投げかけてみる。暑い一日なので途中で体調を崩されても困る。ユニットで一番体力のない彼を気にかけながら、頭の中では今日発売される本のことを考えながら歩いていると、朱桜くんが声をかけて来た。思考をやめて隣を見ると、難しい顔した朱桜くんが俺を見ていた。

「あの、保村先輩。教えていただきたいことがあるんです。」
「…俺に応えれることならね。」
「私たちの、我らの『Knights』の王について教えていただきたいのです。」
「…レオについて?」

今どこで何をしているかもわからないのに、三毛縞が帰ってきてるということは少なくとも日本国内に入るとは思うのだけれど。俺の持っている情報は基本去年のものばかりだ。古くて情報として得るのは少ないだろう。

「俺の持っている情報は、古いよ。集めきれてないし。発するだけ。基本ラジオみたいだよ。」
「それでもです、私には手がかりになります。」
「手がかりって…」

なにをしようとしているのだか。わからない。けれども、まっすぐ向いてくる視線は嫌なものではない。俺の知っているレオはね、と記憶を振り返ってみたがろくなことしてない。人の話を聞かず作曲をしたり、セナの説教を聞き流して俺に笑いかけてたり、自分の妹自慢がどうだとか……これは口に出していいものなのか?ぐぬぬと考えながら、どう言葉を濁そうかなんて思慮する。

「…レオは、俺を救ってくれたよ。だから救いたいと思ってるよ。」
「保村先輩が?」

一方通行のメッセージはどう届くかはわからない。届いてないかもしれないし、勘違いした別の誰かに届いてるかもしれない。まるでラジオだ。発信するだけで満足してしまう、内容も届いてるかわからないのにね。
とっても会いたい。会ったら言いたいこともたくさんあるけれど、多分会ったら言いたいこと全部ぶっ飛んじゃうよね。そんなことを言っていると俺たちの横をバスが抜けて行った。おや?と思っていると鳴上くんとがきんちょが俺たちの横を追い抜いていく。

「文哉ちゃん、あのバス乗るわよ!」
「え!?朱桜くん急ぐよ!!」

俺は朱桜くんを小脇に抱えて一気に駆けだす。走れます!と言うがもう抱えてしまったものはおそい。そのまま運ばれろ、俺は朱桜くんの訴えを退けバス停までダッシュする。ちょっと距離はあったが、バス停にはすんなり到着した。ごめんね、朱桜くん。きみはぽてぽて走りそうだったから、そう告げると、鳴上くんもセナも聞いてゲラゲラ笑ってた。ごめんって、朱桜くん。

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