20180712 ないつの日(君のために5題)-捧げましょう、この身の全てを 朱桜司

反逆 王の騎行と俺。の話が入ります。閲覧注意。



あと数日でジャッジメントが始まる。
俺は戦わない選択をしたので、うちの『Knights』の面倒をみることに力を据えて後方支援に回る。戦いたくないからと逃げてしまった以上、後方支援で普段以上の力を振るわなければいけない。ここで勝たねば俺だって居場所を無くすだろう。推測するのは容易い。現に戦えと遠まわしに言われたに拒否したのだから、恐らくの可能性はかなり、いやほぼそうなるだろう。今から覆すのも切りだしにくいし、どうすることもできない。
今回勝つならばどういう方向ですすめるのか、と思考を回すがあまりいい案が浮かばず。楽曲やら振付については事務所の力を使って私費を投入して楽曲を買い取ったりしているが、全部終わったら事務所に恩返しのごとく働くことを約束しているので、終わったらしばらく大量の仕事が舞い込んでくるのだろう。…俺個人であって学院経由ではないのが悔やまれるが。選んではいれない。目の前のことを一つ一つ処理していかねばあの天才には届かないだろう。レオ側のメンバーも学院の先端を走るメンバばかりなのだから油断はできない。念には念を入れていかないと、俺たちは負ける。負けたらどうなる。『Knights』は解散だ。レオが守りたかった場所をレオが壊すのなら、それはしかたないかもしれないけれど、俺はレオもセナも笑っている世界が欲しいからここで踏ん張らねば。きっと、あの日見た光景を再現することなんてできなくなるだろう。セナが頑張って守ってきたこの場所を壊すことなんてできない。させない。
そんなことを考えてると音楽が止まった。

「保村先輩?今のでどうでしょう?」
「……あぁ、ごめん、ちょっと考え事してた。」
「酷くお疲れの様ですが、いったん休憩を入れましょうか?」
「そうだね、そうしようか。ちょっと事務所と電話をしてくるよ。」
「一度休みましょう。きちんと休憩を入れなければ疲れて動けなくなってしまいますよ。」

心配そうな紫の瞳がじっと俺を見た。休むのも仕事なのはわかるけれど、動いていないと不安で押しつぶされそうで仕方ないのだ。どうしようと思いながら視線を彷徨わせる。メンタルがふらふらしてる自覚はあるので、レオ成分が足りてないと自覚するがあと数日は補給できないので、セナにあとで会いに行きたいとか考えてしまう。
休憩が終わったら、なにをしますか?と問われて俺は思考を回す。さっき考えることに集中してたので、「とりあえず、休憩終わったら一緒に通してやろうか。」と告げれば、藤色よりも少し濃い瞳がまっすぐ俺をじっと見た。そのまま3秒ほどすーちゃんは静止する。まっすぐ俺の目を見つめている。見つめられるとちょっと怖い。

「もしもし?」
「いえ、私は保村先輩に負担をかけているようですね。やはり私では力不足なのでしょうか?」
「いいや、りっちゃんはどう考えてるかはわからないけれど、俺は今回すーちゃんを王に据えていたいと思うよ。」
「私がですか?」
「そうだよ。」

君は俺たちの希望だよ。どれだけ厳しくしてもついてくるエネルギーに俺は賭けたいと思っているし、未知数を武器にステージの上でどこまで掛け算できるかわからないから、俺はそっちに期待してる。俺たちの情報は全部レオの手元にある。帰ってきてからステージの上だけを見ていたレオに太刀打ちできるようにするのが、俺の仕事だから。そこまでに仕上げるのが俺の役目。

「俺はボロボロに堕ちてしまったから、そこまでキラキラできないから。その分すーちゃんが走ってよ。」
「私が、ですか?」
「そう、だから…この身全てをかけて、君にすべてを伝えましょう。」

捧げましょう、この身の全てを。持ちうる限りを、君に俺を捧げましょう。今まで君はセナたちを追いかけて走ってこれたのだから。俺の代わりに、今回の【ジャッジメント】のステージの上をレオの……獅子の届かない空まで駆け抜ける翼を授ける。騎士における泉の乙女になって、朱桜くんを天高くどこまでも輝かせて見せましょう。

「頂の景色を見てみるといいよ、きっと何事にも代えがたい宝物になるはずだよ。」
「保村、先輩?」
「あぁ、ちょっと老害みたいな喋りしたけど。まぁ、残りの数日頑張ろうか。」


31D
君のために5題
捧げましょう、この身の全てを
朱桜司

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