スカウト 氷上のダンス-4e

とりあえず他の面々が撮影してる30分程度の練習で辛うじて滑れるようにはなった。後ろ向きとかマジで無理だけど、何度か転けてケツも腹も痛いけど、俺だって芝居世界の人間、痛いのだって笑顔でやり過ごしてますよ。えぇ、欲しい名前を片っ端からとってた人気子役の名前は伊達じゃないって見せてやるよ!!って言うか見せてる!飛んで見よっか!とかカメラマンに言われて、俺はそっから無我夢中で飛んだり回ったり、インラインスケートと似てるとか気がついてから、一気に上手になれたよね。まじ、レオとセナに感謝するしかない、メチャクチャきつかったけど!

「あの生まれてきた子鹿のような保村先輩が、まさかあれだけ綺麗にスピンを出来るようになるなんて!」とか言われて、まじすーちゃん許さない。とかまで思ってると、俺の撮影は終わった。朔間羽風と交代でアイスリンクの外に出ると、転校生と羽風が仲良くお喋りしていた。

「おっと、せなっち。自然と割り込んできたね〜、保村くんもすごく滑れるようになってんじゃん。撮影お疲れさま。自信のほどは如何でしょう〜」
「聞いてたらイラッてするね。」
「ふん、誰に向かって言ってるの?完璧に決まってるじゃん。」

せいぜい悔し泣きしないようにね、か〜おくん。とセナも絶好調っていうぐらいに、嫌味な笑顔でいる。羽風の邪魔はできたし、俺は俺で満足。滑れるようになったし、ジャンプもちょっと怖くなくなったし、学院祭でバレエとかもやったからそっちのステップをちょっと入れたりして遊んでみると、盛大に転んだ。痛い。脳天からいくとか思わないじゃん!!

「もう、文哉!バカな事しないの!」
「えーだってー」

だってもあるか、と俺は首根っこ捕まれてリンクの脇に移動させられる。頭打ったでしょ、回ってない?とか二三質問されたが、普通に答える。うん、頭打つのは怖いけどさ。大丈夫だって。一旦休憩も入れなよ。と言われるが、新しいことをやるってちょっとドキドキしてたのしいよね。フィギュアスケートとかのステップを思い出すけど、残念なことになんちゃってアレンジなのは、俺が文学少年だから。そんなにテレビも見ねえよ。悪かったな。インドアで。そっと俺は一人で練習がてらに滑ったりしてると、レオが飛び付いてきたりしてきて、だんだん疲れてきた。

「寒い!暖めて!」
「はいはい、んじゃ一旦戻ろうか。ナルくんも出てきてるみたいだし。」

ほら動け動けとレオのけつをひっぱたきながら、みんなのところに戻ると、セナが転校生の練習をしてるのを冷やかしたりして様子を見つつ、みんなでわいわいと賑やかに滑ったり寝たり遊んだり。すーちゃんは、転校生を甘やかしたいだとか言うので、ナルくんと二人で頑張れと無為に見応援したりしてそのままセナのスパルタトレーニングに突っ込ませてやると、俺も巻き沿いを食らった。ひでぇ。

「文哉は滑れるようになってるけど、腰引けてるよ!」
「ひぃっ!」

ぱーん。と気味のいい音が鳴った。ケツ叩くのやめてよ!っていうか、転校生とすーちゃんの面倒見とけっての。とぶーたれると文哉は綺麗にターン出来るようになったら、次バックで走らせるから。と死刑宣告を受けて俺は情けない声を出した。レオはやれやれーと面白そうに煽ってくる。そのままバックで後ろを気にして走ってるとレオが俺とセナを呼ぶ。

「文哉ー、セナ!話があるからこっち来てくんない?」
「俺へとへとだから後でもいー?」
「あぁ!もう文哉遅い!」

じれったいのはわかったけど俺の腕をつかんで走るのやめてー!怖い!なんか、自転車の後ろに乗せられてる感がして怖い!と悲鳴を挙げて壁に捕まる。怖いって!と主張すると、文哉が遅いから。と速攻ぶったぎられる。

「何?」
「不機嫌なのか?眉間に皺が寄ってるぞ〜。わはは、ぐりぐりしてやる!」

レオが嬉しそうに、セナの眉間を広げようとがしがしするのを、俺は心の底でよしやれ!とか思いつつ見てると、レオはさっきまで氷を触ってたようで、冷たい!とセナが怒っている。二人のやり取りを見ながら、ケタケタ笑いながらもすーちゃんや転校生の面倒を見なきゃ行けないし面倒。とか言ってるけど、満更でもなさそうで、嬉しそうだ。レオが指摘すると、ちょっと嫌そうな顔してるが、天の邪鬼なセナの事なので、やっぱり嬉しいのだろう。このままいても埒が空かないので、レオに続きを促した。

どっちがいいショットを撮れるかって競争してただろ、その結果がさっき出たんだけど。どーも、甲乙つけがたいってことで、最終的な判断はそれぞれの『ユニット』のリーダーに委ねようって流れになったわけ。レイは『良いぞ』って快く賛成してくれたから、あとは『Knights』側だけなんだよな。というわけで、セナと文哉にダブルショットを撮るかどうかの判断はお前に任せた。
ん?どういうこと?と首を傾げる。

「なんで俺と文哉?『Knights』のリーダーは王さまでしょ。王さまが承諾したなら皆も文句は言わないだろうしぃ。」
「餅は餅屋。っていうけど、俺はグラビアわかんないから、セナに任せるよ。」
「そーだぞ。その筋の専門家に聞くのが一番だろーが。付き合いが長いから文哉にも声をかけたけど、モデルとしてはナルよりセナの方が経験あるだろ。ナルもセナがうんって言えば文句は言わんだろ。」

俺もセナが決めたことなら、それに従う。俺の作った武器でお前らは戦ってくれるだろう。それは間違っても爆発しないって、無意識にしろ信じてるから。おれは、お前の判断を信じる。だから、どうしたいか聞かせてくれよ。とレオはセナにデータの入った機械を渡す。使い方の説明を聞きながら、俺も気になるので見る。ピッピッ。なんてならしながら、俺たちのデータと、羽風と朔間のデータを往復して、馬鹿には出来ないよ。と呟く声が聞こえる。

「じゃあ『UNDEAD』とのダブルショットは進めちゃっていい?」
「かおくんと約束したしね。結果は同点、引き分けになっちゃったけど俺を唸らせるショットを撮ったんだから、絶対に嫌とは言えないじゃん。」

決着つけるためにダブルショットとってもいいんじゃない?と言うと、セナもしぶしぶ。というか、まぁ、そうだろうねぇ。と言わん感じで、頷く。先程の煽られた事もあるので、俺もちょっとやり返したくて仕方なかったのでちょうどいい。

「僅差なんて生ぬるい、圧倒的な差をつけて今度こそかおくんに参りました。って言わせてあげる。」
「あぁあ、セナのスイッチが入ったじゃん。」

二枚看板かわいそー。なんていいつつ、リンクの壁に頬杖をつく。どんな撮影になるかな、とちょっと期待しつつ俺は今度の連頼エッセイに、こういうこと書こうと思う。春先に入った仕事のお話を思い浮かべながら、うちがどんだけいいかっていう風にもって行こうかと考える。レオも楽しくなってきてるのか、魔物と騎士の共演だと言ってるし、まぁ、討伐するぐらいにやってあげようじゃんねぇ。俺もちょっと影響を受けて、楽しくなってきてるのかちょっとランニングハイになりそう。んじゃあ、りっちゃんでも探しにいくとしましょうかねぇ。

★。

結果論だけでいうと、俺はだいぶ楽しく撮影できたので満足なんだけど。セナはやっぱり不満そう。

「俺とかおくん、どちらのショットが良かったか、って聞いてるのに曖昧な答えで濁してくれちゃってマジ腹立つなぁ」
「ん〜、それでもせなっちのほうに軍配があがってたじゃん。一体何が不満なわけ?」

圧勝しなかったことに、苛苛してるらしい。俺は疲れたと項垂れながら、羽風とセナの会話に耳を傾けつつ、レオの動向を伺う。レオが途中で閃いた。とか言い出すので、俺はそれを眺めてから、とりあえず道端の中央から端に寄せて、ペンと紙を渡す。5分だけね。と俺がいうと、わかった!と言いつつ書き出してるが、たぶん絶対にわかってないので、俺は一旦連絡用のところにレオといます。といれておく。どうせ撮影中だったからみんな、まだ音とか切ってるだろうし、いいや。と思って現在地のわかるように写真を送っておく。その15分後に俺たちを探しに来たナルくんに手伝ってもらってなんとかレオを動かしてみんなで帰ろう。とごり押す。セナと羽風は二人で転校生を送って帰る。と連絡が来たので、俺とナルくんとすーちゃんとレオでご飯をtべて帰ろっか。という話になったけど、微妙な時間だったので五人で軽くお茶だけして帰るのだった。翌日、メチャクチャ筋肉痛になって、俺は涙目になりながらダンスレッスンを受けるのであった。みんな、柔軟とかしっかりね!

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