-月永レオ(第二話)と俺。

舞台のせいで補講が増えた。プリント一枚とか仕上げるだけなんだけど、これがなかなか手強くて、俺はうんうん唸りながら問題を解いてれば机の上のスマホが芽吹いた。明るい画面には、『Knights』連絡用の会話画面が開いている。そっと開いてやると、朱桜くんからの緊急招集のようだ。俺は監視の目を盗んで補講終了後いきます。とだけ連絡を入れて、プリントを進める。そうやって進めるなかで、そういえば確か今日休みだったよな?と思い返す。何だろう?仕事の連絡だろうか、なんて思っていたのは40分ほど前。俺は、目の前に広がる光景に頭をぐちゃぐちゃにされていた。全員分の飲み物を買って、いつものスタジオのドアの向こうから、懐かしい声が聞こえている。

「え?」

居ないはずの声に俺は驚いて、握っていた荷物が俺の手から溢れ落ちた。鈍い音が俺の耳にも届いた。ごろごろと缶が転がっていく。拾わなきゃ、とか思っているんだけど、俺の頭が処理できていない。なにこれ、現実?夢?聞こえてる音に確認をしたいがどうも、手を出すのが怖くなっていると、勝手にドアが開いて、朱桜くんがたっていた。その後ろにはよく見慣れたメンバーがいて、懐かしいオレンジが見える。

「保村先輩、お待ちしておりました。」
「……れ、お……?」

俺の喉が細い音を作り上げた。そんな音を拾ってかオレンジが俺の方を見る。比較的高い目の声で子どもみたいな笑顔を浮かべて、俺の名前を呼んだ。足元に転がる缶の事も忘れて、俺はオレンジの元に飛び込む。あぐらを書いて座っていたので、半分ぐらい押し倒す感じになっているが、それでも俺はそれの腹に飛び込む。

「文哉は甘えただな!」
「れお……」
「どーした?俺がいなくて寂しかったか」
「レオ。」
「ハハハ、相変わらずだな!」
「会いたかったよ!!」

ぐりぐりと頭をすり付けると、くすぐったいからやめろと言われるが俺は構わずに壊れたテープみたいにレオの名前を呼ぶ。一回ずつ適当に相槌をうって、俺の頭を撫でてくる。そんな事が嬉しくて、俺は感激の涙が溢れ落ちてる。本気で泣いてるので嗚咽が溢れる。ぐすぐす言う俺に「ちょっと『王さま』!文哉は情緒不安定だから!」とセナの声が聞こえて、顔を上げると、きれいな黄緑が反射して俺を写している。一瞬かち合って、俺は会いたかったよぉお。と駄々っ子のように泣きわめく。こら、目が腫れるから王さまの服で涙を拭かないとセナが怒るけど、ドラマも舞台も明日はお休みだし出ても事務所だからいいの!と主張して俺はレオの腹に顔をべったりつける。

「こら、文哉!いい加減離れなさい!」
「やだー!セナも!」

レオの手をパッと離して俺はセナに腕を絡めて、引き寄せる。ほらほらセナも寂しかったろ?と問えば、ちょっと!と抵抗して俺から逃げるので足も使って絡めとり、鳴上くんや凛月くんを見て、昔の呼び方で彼を呼ぶ。ナルくんもりっちゃんもおいでよと手を伸ばす。

「え?…あの?保村先輩?」
「ふ〜ちゃんスイッチ入っちゃった」
「最近ずっと調子悪そうだったし、まぁ嬉しそうに笑うこと」
「どういうことですか?あのとてもCoolな感じが影も形もなくLeaderのような子どものみたいにも見えますが。」

あー…ス〜ちゃんしらないんだっけ?ふ〜ちゃんはセッちゃんと『王さま』がいるとあんな感じだよ。一回しかみたことないけど…。だとか三人は向こうは向こうで盛り上がってるので俺はそんな光景をみながら、ぐずぐずに溶けていくような感覚に陥る。視界はほぼほぼセナの手の隙間からでしか見えてないし、痛いけど夢じゃないと教えてくれる。俺はセナに足を絡めてセナの手が俺を離れろと顔面を押しのける。おい、さっきまで俺の目がはれるとか言いつつ今ちょっと爪立ててない!?俺とセナのやり取りを見ていてレオが思い出したように口を開く。

「あ、文哉明日ライブするぞ!」
「えっ!?ライブ?」

セナに無理やり離されて、俺はレオの上に乗るもとい、落ちる。ぐっと見上げて緑を見て。ふと頭の中を過るのはユニットの申請書だ。生徒会と掛け合って6人で登録することができたが、復帰したら…と蓮巳に言われたなぁ。と思い返す。またペナルティは食らいたくないし、なぁ。と思いつつステージに上がる人数が5人までとかならいいんだけど。と思いつつ、スタジオ端に置いてあった荷物というか規定集を漁るために、俺はセナから離れないままナルくーん。ロッカーの中にユニット規定あるから取ってー。俺セナ成分とレオ成分取るのに忙しいから!というと、ナルくんはもう。と呆れながらもクスクス笑ってロッカーから分厚い冊子を取り出して俺に手渡してくれる。レオを背もたれにしながら俺は暇な時に読んでいたのでどのあたりの項目になにがあるかは覚えているので、何条といいながら目的の項目を開く。すぐに見つかったのでさっさと解釈しながら、読み解くと採点時のレートや報酬が1.00からの減少する変動になるらしい。

「どーだ?」
「んーゆるい点数の減少はあるみたいだけど、どーする?」
「じゃあ、六人でいいだろ、俺たち『Knights』はあるがままでいい。優雅に蹴散らして毅然としてたら勝手に民は、観客はついてくる。気にするな文哉。ここにいろ。」

ここにいろ。と言われてどきりとした。俺は別にまだ何も言ってないが、『Knights』に不利益になるなら切ってもいいと思っている。のを見透かされたのかと思って、胸が鳴る、悪い意味で。
あっけらかんといい放つレオと、それにモデルや俳優が多数いるのも俺たちの特徴だからなくなるのは嫌なんだけど。と言うセナの言葉に離れるな。と言う風に聞こえて、また俺は嬉しくなってセナに飛び付く。そして怒られた。それでもいい。だって俺は今嬉しくて仕方ないんだからな!セナにべったりレオにべったりして朱桜くん…すーちゃん、そうすーちゃんにドン引きされたけどいいの!お前うちの子だからな!わかってんのか?

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