対決 華麗なる怪盗VS探偵団と俺-6e

「ふぅん、予想外かなぁ、ちょっと。」
「なに?俺の問題に不満?」
「ヒントを与えても早かったんじゃないかなぁ。とは思うけどね。」
「俺の問題両手放しでほめてくれてたじゃん。」

『Ra*bits』ごときが、文哉が丁寧に隠した『盗品』を宝物を見つけ出しちゃえると思えないねぇ。出してよ、見つけた『盗品』をさ?証拠もないのに悪者だって糾弾されちゃあ、立つ瀬がないからねぇ。俺たちを怪盗として犯人として立件したいなら、それにたる推理と証拠を見せてよねぇ?
いびるように真白にセナが言う。さぁさぁ。と寄ってるのをマントを引っ張って真白との距離を作る。顔面偏差値お高いセナが迫ると圧迫されて萎縮するっての。いや、セナは確信もって動いてるからやっかいだよ。本人がちょっと楽しんで愉悦そうな顔してるのがホント性格悪いよね。それに気づいてかナルくんもちょっとノリノリだし。もう、俺番犬で居たいよね。体はひとつで5人も手綱引いてれないって。

「泉ちゃん2号は出なくていいのかしらぁ?」
「んーまぁ、セナが出てるなら、いいんじゃない?類似品より本人。でしょ?」
「何なの、なるくん、文句でもあるのぉ?」
「いいえ、べつにぃ?えぇっと、探偵さん。アタシたち演劇部ってわけじゃないし……」
「演技畑は居るけどね」
「文哉ちゃん、話がややこしくなるから。黙ってて。」

はーい。と返事をして俺は一歩下がる。てへっと客席にアピールして俺は後ろに下がってブーツの紐がほどけてるのに気づく。そのまましゃがんでちゃっちゃか結んでいる間に前にいる真白の声を聴きながら、ステージ端から降りて、ファンの波に隠れてついでにファンサービスをしておく。
握手をしながら「あっ、その前に、まずは文句をいっていいですか?」と俺の聴覚に入る。おい、仁兎お前の子ウサギどんだけの教え方してんの!?と思って顔をステージに向ける。問題作ったの俺だから、文句は俺に言えよ。とな?とタイミングよく握手してた子に同意を求める。真っ赤な顔した女の子は首を横に振った。まぁ、きみは真白じゃないから文句ないよな。

「鳴上先輩、あなた俺たちに嘘をつきましたよね?保村先輩と一緒に」
「ん〜……んん、なんの事かしらぁ?ってすっとぼけても仕方ないわね。」

時間の無駄だわァ。どうもほんとに真相を看破しちゃったみたいだし、文哉ちゃんいいわよねぇ?帰ってきなさい。と言われるので、はいはーいと軽い身のこなしでステージに飛び込む。縁を掴んで一気に飛び上がったので、わぁ。と声が聞こえて、はいごめんねーと言いつつ、じゃ教えてくれるかな?と俺は意地悪そうに聞いた。

「かわいいちいさな探偵さん。アタシは、アタシたちはいったいどんな嘘を吐いたのかしら?」

先ほど一曲目が始まる前に、俺たちを『盗品』を隠すついでに呼びに来たって言いましたよね。それが変だって思ったんです。呼び出すだけなら、電話で済みます。実際、メッセージだけ。で連絡してたとは聞いてますが、俺たちを呼ぶのならあんずさん経由で電話が一番早いんですから。アタシはあんずちゃんが『Ra*bits』のレッスンを監督してることを知らなかった。って駄目ね、あの場に礼儀を尽くすために直接呼びに行った……ってのは駄目?ううん、めんどくさがりの嵐ちゃん先輩がそんな無駄な手間はかけないぜ。動いたなら、何か目的があったんだぜ〜?二人目の探偵さんが登場ね、そ〜ね、その通り。アタシが直接、出向いたのはほかに目的があったから。でもそれは何かしら?僕たちに、ミスディレクションを与えるためです。ええっと…推理を別の方向に逸らすために誘導したんですよ。はい、鳴上先輩と保村先輩は嘘をつきにきたんです。鳴上先輩は『盗品』を校内のどこか隠す。みたいなことをいいましたね?保村先輩のポケットにはそれらしいものが入ってあった。その『ついで』に、俺たちを呼び出しに来たんだと。『Knights』は『講堂』でリハーサルしているとも言ってましたし、『盗品』を隠すために移動したなら。『盗品』は『講堂』に隠さないと、暗に言ってます。その『嘘』を信じてしまったら、俺たちは『講堂』だけは探さなくなる。現に、保村先輩が捕まえた時にはポケットの中には完全に私物しかなかった。それがミスディレクションなんです。『講堂』を調べない、それか後回しにしてしまう。だからこそ逆に『盗品』は『講堂』にあるって推理してるんですけど。

「まぁ、順番はおかしいけど、最後まで聞いてあげようじゃないか。証拠まで突き付けてワンセットね。」

探偵としては俺は今日が初仕事なので…もう少し。補足しておきます。鳴上先輩にとって、光が回答を追いかけて掴まえて『盗品』をブン捕ろうとするなんて予想外だったはずです。お二人ともめちゃくちゃあわててましたもんね。
そういわれて、セナにぎろりと睨まれる。俺はお芝居でやってるんですー。と言うと、そうじゃないと俺が怒るってのー。と鼻をつままれる痛いって、ファンデーション崩れる!と抗議を上げる。
とにかくまぁ、光に追われて捕まって、鳴上先輩は嘘をつきました、嘘を嘘で塗り固めたんです。とっさについた嘘ですから、不自然な点がりました。鳴上先輩は逃げてる途中で『盗品』を所定の位置に隠した。とこの発言で、もしも鳴上先輩がもってたら保村先輩のポケットに入れていた。ということが嘘ですし、保村先輩がもっていたら所定の位置に置けないので嘘ですよね。それに、鳴上先輩器用そうだしあの場では『すごいなぁ、何時の間に?』みたいに思ったんですけど、やっぱり変なんですよね。俺たちは、あんずさんも含めて四人で先輩を追いかけました。保村先輩はすぐに窓から飛び込んで逃がしちゃいましたけど、すくなくとも光は、ずっと鳴上先輩から目を離さなかった。そんな俺たち全員の目を盗んでこっそり『盗品』を隠すなんてのは無理じゃないですかね?あの短時間で、しかも予定されていた所定の位置に。ともあれ、鳴上先輩は俺たちにこっそりヒントをくれる。協力してくれる振りをして、実は罠にはめに来たってわけです。鳴上先輩って良い人だあぁ。って疑わずにいれば。『講堂』に『盗品』が隠されているなんて、良そうもできませんからね。見事に騙されるところでした。

「よくアタシの残した小さな違和感を見過ごさずに手がかりを突き止めたわね、偉いえらい。」
「まぁ、そこまでほぼほぼ想定内だね。」
「というか、よけいな嘘をついて、俺たちに推理のとっかかりを残して。」
「実際お二人には、おおきなヒントをくれていたわけです。何か?ありがとうございます?」
「まぁセナの求められるレベルが高すぎるんだもんねぇ。」

ケラケラ笑って水分補給。ステージ手前に置いてある水ボトルをじゅーと音を鳴らしながら水分補給。みんなもとっといてね。と前の方にいたお客さんに声をかける。ヤンキー座りで、ボトルを持ってないほうは膝と肘をくっつけて、水を飲む。あー水うま。鉱泉水じゃないから、おいしい。とか思いつつ、校内SNSという単語を耳が聞き取った。んあ?と後ろを振り返れば、青い子が照れたように頬をかいた。
こっちはどうやら本来の道を調べ出したらしい。どうも日々樹が大体的に宣伝を打って出たらしく知名度が上がっているらしい。一曲目の答えからも同時に導いてたらしい、真面目だねぇ。と思いながら、すーちゃんのこの人は意地悪です。鬼ですDevilです。という小さな愚痴をセナが拾って突っかかる。りっちゃんも面白がってそっちに呷ってるので、俺もそっちに回りつつ、聞き耳を立てている。
俺たちは最後までその意地悪なリドルの線をたどりませんでしたけど。たぶん時間切れまで同じことの繰り返しですよね?ううん、実際には最後にたどり着いた『S3』で『振り出しに戻る』みたいな構造にしてたの。半永久的にいつまでもドリフェスを巡り続けることになるわけ。色々推理して、ナルくんの行動に行き着いたらしい。そこから一番最初の推理に入り、『講堂』にたどり着いたんだと。

「『盗品』の正確な隠し場所はまだわからないけど『講堂』のどこかなんでしょう?」
「へぇ。」

『講堂』では【ミステリーステージ】が続いている。そこではほかのドリフェスは開催できません。何時までもほかの『S3』を巡っていたら、絶対にたどり着かない。だからこそ、この『講堂』に『盗品』は隠されてる。それが俺たちの推理です。とセナにびしっと指を立てた。

「正解、お利口さん。実はこの舞台上にあるのよォ、堂々とおいとけば、意外と気づかれないものよねぇ。この壺の中にあ……ない。」
「えっ!ちょっとなるく〜ん、冗談やめてよねぇ?」

ナルくんが壺の中を覗いて首を傾げる。プリプリ怒り気味のセナが続いて壺の中を見る。ない。と言うと同時に俺は人差し指を立てて唇に当てる。敵を騙すには味方からってね。とにやりと笑う。

「講堂にはあるよ。俺の手元にね、ちゃぁんと仕舞っておいてるよね。」
「そういうのはほんとちゃんと相談してよね。文哉」
「ふふーん。セナのそんな顔するの楽しいね。」

くるりと帽子を取って、薄茶の子に帽子の中に隠してた荷物をぽいっとおいてやる。セナがぎゃあぎゃあ言ってるが俺たち半分以上ここ独占してたんだし、これぐらいの残り時間は譲ってやっていいじゃん。王者の余裕は出しておいたほうがいいよ。仮は後で絶対に帰ってくるんだからさ。ニヒルに笑ってやると、お疲れ様でした。と探偵さんの頭を撫でる。

「さ、残り時間は少ないけど、メインを踊ってやんなよ。それとも仁兎が居ないから踊れないっていうなら俺がはいってもいいけど?」
「ちょっと!文哉」
「お宝は回収して俺は渡したんだし、なんてね。」

飼い犬は飼い主に尻尾振るんですー。ほら行って来い無様なステージにしたら尻にかみついて飼い主にステージ捧げてやるからな。と脅して俺はおんきょーさーん。お仕事いけるー?と強制的に舵きりを始める。一年たちが顔を見合わせてうれしそうな顔をするので、俺はほらほら、下がるよー。とセナの背中を押してバックダンサーに徹する。反省会でめちゃくちゃ怒られたけど、レオに話すととても喜んでいた。『盗品』が帽子に入るサイズでよかったよね。
それからこれは別問題なんだけど、このライブ終わった瞬間に翌日以後に用意してた問題をぜーんぶ破棄して位置から全部作らされる羽目になったのでした。俺?泣いてないよ?泣いてないったら、一晩セナスタジオに施錠されてするめ全没収、トイレ食事全部禁止されてたので人間としての尊厳を無くすかと思いました。まる。でも俺は反省してません。まる。

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