対決 華麗なる怪盗VS探偵団と俺-3

今日のはーどうしようかね。と考えつつ、廊下の向こう側からナルくんがやってきて、あら文哉ちゃん。と手を挙げた。俺も手を上げ返して、今日はどうする?なんていう会話を繰り広げる。ヒントも与えなきゃねぇ、俺らの餌も適度に育てなきゃ駄目だし、生産者ってすごいよねぇ。今日の謎を考えるのはすっごい苦労した。そうねぇ、でもたしかこの後は結構泉ちゃんのオッケーも出やすくなかった?んーまぁ、最後の方だしねぇ、名前売るとかのためだし、そこは譲歩だよ。セナの折れやすいところで押すと案外簡単に折れてくれるよね。

「もう、文哉ちゃんは。」
「企画やってるなら、後半の譲る方向に向けて一回ぐらい『Ra*bits』と合同練習したほうがいいんじゃない?」

それはそうよね。こうして裏でヒント与えにいくんだから。やっておいたほうがいいわね。転校生に連絡入れておくし、置きに行くときに一緒に行こうか俺も演技畑の人間だし、ひっかきまわしてやろうじゃん?。あら、意地悪ね。
ナルくんがクスクス笑っている。俺も、したり顔で笑って、口を開く。憎まれ役ぐらい別にいくらでも引き受けてやるの。俺外にはそんな仮面被ってるし、『Knights』以外は別にどうだっていいよ。『Ra*bits』がどうとか、『fine』がどうとか、別になんだっていい。俺には『Knights』さえあればなぁんにもいらない。転校生だって……は言い過ぎかもしれないけど、俺ナルくんたちの為なら、命だってなげうってやるっての。そんだけ言い切ると、もう文哉ちゃんはもうちょっと世界を見ましょうよ。と言われて、唇を尖らせる。もうちょっと親離れするべきね、とか言われたけれどいいし。俺はいざってなったら四六時中仮面被ればいいし、レオもセナも目を閉じたら出てくるぐらいに好きだし、たぶんナルくんもりっちゃんもすーちゃんも出るよ?と冗談交じりに挟めば、私たち死んでないわよ。突っ込まれて、俺はナルくんと話しながら転校生に俺たちがバックダンサーになったときの練習がしたいから、このあたりセナに伏せて合同練習しよう?と連絡アプリを立ち上げる。
そっと隣のナルくんを見ると、嬉しそうにしているのでこのS3受けてよかったなー。今日のレオの楽譜なんだろうなーとか取り留めないことを考えながら、バックダンサーも何するんだろうなー。どうやって食ってやろうかとか物騒なことを口に出してると、思考漏れてるわよの指摘をもらってちょっと恥ずかしくなった。
ナルくんと軽く打ち合わせをして俺が先に『Ra*bits』に合流して、そのあとナルくんが加わってミスリードをさせる。そういう方向で進めて、噴水前を通りかかると、『Ra*bits』の子ウサギを見つけた。じゃ、あとで適当に合流よろしく。ひらりと手を振って、ナルくんと別れる。そのまま噴水前を通れば振りの最終確認をしているのを見た。そこに転校生がいる。歩いていくと、青い髪の子が俺に気が付いて踊りを止めた。

「携帯連絡入れたんだけど。」
「あ、本当ですか?」

後で見といて欲しいんだけど、と伝えればわかりました。なんて返事が来て、視線を転校生の横に向けてチビたちを確認すると、俺は「あー、おん?仁兎の子じゃん。練習?」なんてわざとらしく首をひねると水色の子、りっちゃんとこの後輩だっけ。が「はい、始まる前に最終確認です。ボクここが苦手で。」はずかしそうに頭をかくので、俺はふーん。一回踊って。なんか重心の取りかた悪そう。とえ?本当ですか?と俺の眼前に迫ってくる。おい、兎の癖によってくる圧がすげぇぞ。俺が一歩後ずさる。保ちゃん先輩が見てくれるんだぜ?光、先輩だからもうちょっとだな!そうですよ、文ちゃ……ごめんなさい、紅茶部の付き合いでつい。
一年生三人で一気にぐいぐいくるので、俺は解った解った。わかったから、と抑えつつ、とりあえず拍とるから全員踊れ。と指示を出すと、俺の言葉通りに素早く距離を取るので、俺はあきらめて手を叩いて拍を取る。適当にフォーカウントしてから、はじめろよ。と指示を出しながら、手を叩く。そのままさっさか進めると、ぼんやりとタイプを判別はする。一人ははじけすぎ、一人が体幹が弱そう、一人がもうちょっと欲しい。けど、ここに仁兎を足せば見れなくないのではないのだろうか、仁兎のスキルの高さを感じながらまぁ、斎宮に育てられてる部分もあるんだろうな、と感想を持ちつついつぞやの【ジャッジメント】が脳裏に浮かんだ。ストレスと体調不良で意識を全部持っていかれてるので、映像資料でしか残ってないので現実の見てたかったなぁ、と思う。

「俺たちすごいんだぜ!」
「あの、どうでした?」
「悪いところがあれば言ってください。」
「…………」

ちょっと考えてから、俺は暴れすぎ、メリハリが足りてない、体幹弱い、もうちょっと足高く上げるとふらつくからトレーニングして。茶色、薄茶、水色の順番に指差して言っておく、メリハリ?体幹、とそれぞれが言ったやつに対して言った言葉を返していく。転校生が俺の服をひっぱったので、そのまま軽い用事の話があってな。と会話を広げていく。中身に対して、ささいなことなんだけど、散歩ついでに。と言い切る。薄茶の子が「保村先輩、あの。」と口を開いた瞬間に、「文哉ちゃん、探したのよ!」なんてちょっとわざとらしいナルくんが入ってきた。

「うわぁい、嵐ちゃん先輩〜!ダァ〜イブ!」
「飛びついてこないでよ。光ちゃん、んもう、悪い癖よォ?」
「ナルくん、ごめんね、探してたの?」
「あんずちゃんを見つけたなら連絡頂戴よ、待ってたんだからァ」

軽くごめん、とあやまってるとあんずが俺の袖を引いた。身長差で、なにの様だったんですか?上目づかいで問いかけられた。『講堂』の【ミステリーステージ】専用の舞台でリハーサルするから、子ウサギ誘ってやって、ないと思うけど俺たちがバックダンサーの時の練習もしておきたいし、連絡入れたんだけど返事がなかったから俺が探しにきたんだけどね。

「実際合同ライブなんだしね。一緒にリハーサルしたほうが都合がいいでしょ?」
「あぁ、言われてみれば。でもいいんですかね、お邪魔じゃありません?」
「卑下は、自分の価値を下げるよ。」
「そうそう、あんたたちを評価してるから合同ライブなんて話にも乗ったんだし。もっと自信を持ちなさい?」

文哉ちゃん、そういう反応してるけど、珍しいのよ。それに文哉ちゃんと泉ちゃんのぶつくさ文句を言うかもしれないけど。泉ちゃんの憎まれ口は呼吸音みたいなもんだから、聞き流しちゃえばいいのよ。さらっと言ってのける中に俺の名前も入っていたので、ナルくんをとがめる。ナルくんはあらぁ?としらばっくれる。俺もセナ二号と言われる所以でもあるので、仕方なく俺は首を振る。どうせ外見の揶揄なんて俺は気にするたちでもないので、わざと聞こえるようにため息をつく。

「じゃあせっかくなんで、リハーサルに混ぜてもらおっか。荷物纏めて移動するぞ〜、ご配慮ありがとうございます、鳴上先輩、保村先輩」
「お礼なら、文哉ちゃんに言ってあげて、アタシもあんずちゃんに言われるまで気づかなくって、むしろ『ごめんね』って感じだから」

嫌ぁね、アタシにも、『Knights』の個人主義が染み付いちゃってるわァ?ともあれアタシたちはちょっとした用事の『ついで』に、あんたたちを呼びに来ただけだから。とりあえずあんたたちだけで『講堂』に行ってくれる?用事ってなぁに?オレ、手伝うぜっ?
茶色の少年がナルくんにとびかかりながら、声をかけている。ユニット衣装に皺が入ると思いつつ俺はその子を睨んでいると、ナルくんはでもダメよ。今回の『盗品』を校内に隠すのがアタシの役目なの。一日交替で今日はアタシの番ってわけ。文哉ちゃんは毎日隠す場所の付き添いなの。
俺に視線が集まったのでしたり顔で口角を上げておく、さすがに探偵さんたちに『盗品』の在処を知られちゃ困るし、だから一緒には行けないわ。回答と探偵は決していられない存在なのっ、あぁ浪漫ちっくよねぇ、文哉ちゃん。んーそう?浪漫ねぇ、今度のネタにでも使わせてもらうかな。文哉ちゃんお仕事の事しか考えないわよねぇ。ナルくんもモデルの事しか考えてないでしょ?それと一緒。

「ん?ってことは、今嵐ちゃん先輩と保ちゃん先輩は、『盗品』をもってるの?」

聴覚がとらえたのに反応して、すかさず俺はこっそりポケットを隠す。ミスリードのための布石の準備だ。あ、それですか?と水色が言うので、半歩下がる。

「じゃあここで『盗品』をぶん捕っちゃえば話が早いぜ、あとで校内を探索する手間が省けるぜっ!」
「そんなことさせると思うの?っていうか、モラル大丈夫?兎だからってそんなこと許されると思ってんの?」
「『盗品』を隠す前に回答から奪っちゃいけないなんてルールはないぜ?そうだよね、ね〜ちゃん?」
「え……ま、まあルールに書いてないし」

おい、お前。モラルはねーのかよ。と言うと、いつ見つけるかは重要じゃないみたい、今ブンとってもOKぽいぜ〜!むしろ『盗品』を探すなんてことよりも、直接怪盗を追いかけて捕まえるほうが探偵ぽいぜ。とか言い出して俺の脳裏でやばいと判断する。ナルくんが転校生にどっちの味方なのよォ!?と声を上げるので、俺はナルくんの腕を引いてちょっとと逃げるように促す。俺は残念ながら文芸部なので逃げることは得意ではない。どうしようと思考を走らせつつ、どうやってミスリードを引っ張り出そうかと頭をひねる。きっと遠くでセナが見てたらめちゃくちゃ笑ってると思う。脳裏にセナの笑い声が浮かぶ。冷や汗をかきながら、俺はどうするかの算段をひたすら巡らせていると、ナルくんが俺の手をこっそりつかんだ。

「捕まえられるもんなら、捕まえてごらんなさい!アディオス・アミ〜ゴ!文哉ちゃん、行くわよ」
「オッケー!」

ナルくんのゴーサインが出た瞬間に俺たちは一気に駆けだした。後ろで逮捕しちゃうぜ!とか聞こえるが振り返る余裕もない、俺はポケットのものを一瞬落として、それを拾って加速しなおす。芝居も込めて、俺を捕まえやすくするが俺は残念フェイクです。文芸部でも腐っても『Knights』なので体力にはそれなりに自信ある。足音が聞こえて、ナルくんあとでね!文哉ちゃんも捕まらないでね!大丈夫、文芸部員は逃げ足早いの。ケラケラ笑って俺とナルくんと別れる。近くの窓から飛び込んで、逃げるように階段を登った振りして別の方向に逃げる。陸上部の健脚は怖いが障害物ありのほうなら俺は慣れてるのでそのまま煙を撒いてガーデンテラスに逃げ込むのだった。休憩してたら捕らえられたナルくんと『Ra*bits』の子ウサギと出会って茶色の健脚によって俺も捕らえられるのだった。


/back/

×