初興行 祝宴のフォーチュンライブと俺-4

文哉、あんたは先に行って説明しといて。と言われたので、先に図書室の地下書庫のレッスン場にきたのはいいが、誰もいない。っていうか俺を先に行かすの間違ってると思うんだけど、ねえねえ外部に俺なにっていわれるとおもう?セナ2号だよ?いいの俺で?とかおもいつつ、入ると。青葉がたってた。

「文哉くん。ようこそ『秘密の地下書庫』へ。」
「『王さま』行方不明で、ほかが総出で探してるからちょっと遅れると思う。」
「そうですかー宙くん、他の方が来たら迎えて上げてください〜、行きましょう、お茶もお菓子も用意してるんですよ。」

そ、お茶だけ貰う。というとわかりましたー。と差し出されるので遠慮なく受けとる。いい匂いのする日本茶だった。どこのお茶だろうとかおもいつつちびちび飲んでいると、携帯が震えるのでそちらをうかがうと、見つかりました。とすーちゃんからの連絡だった。俺も簡単にはスタンプを押して返事をして青葉にみつかったってさ。と返事だけをしておく。見つかって良かったです。賑やかな光景だったのですかね、と問われても、俺は現場を見てるわけでもないので、さぁ。と答えるだけだった。ずずずとお茶を飲みながら、芸能界に長いこといるせいか文哉くんって動作がやはり綺麗ですねぇ。と言われて、教え込まれたからね。と雑に返事をしておく。『Knights』ならなんとなく思ってることも酌めるのだけれど、他のユニットとは汲めないので、結構粗雑な返答になってしまう。もっと外部的なのなら、猫をかぶったりするのだが、学院内には俺の内外もある程度解られてるので被ってもしかたないので諦めている。青葉と会話をしないままそのまま時間を待っていると、ドタドタという足音が聞こえ出す。

「来たみたいですね。文哉くん。『Knights』の話になるとちょっと嬉しそうですもんね」
「うるさいよ青葉。黙ってて。」

俺が口をへの字に曲げると、そういうところつれないですよねぇ。と笑われた。ほっとけ。そうこうしてる間に『Switch』のメンバーの子につれられて身内が顔を出してきてちょっと安心する。文哉ーこんなところにいたのか!とレオに言われたが、あんたがどっかにいってたの。とセナにちくりと言われてる。変わらない様子に俺はクスクス笑う。

「孤高を気取ってる風に見せかけて、意外と俺らって他所の『ユニット』と組むことが多いよねぇ?なんでだろう?」
「一人一人が優れているし柔軟に対応出きるから学院側も仕事をふりやすいんでしょう。芸能界に帰属する人も多いですし、プロフェッショナル集団って感じですよね〜『Knights』は、経験豊富で人気もあるし、どこと組ませても一定以上の成果をだしますから。使いやすい安パイなのでしょう最近は【デュエル】とかも控え目で揉め事も起こしませんし。」

一度やらかしたぶん、お利口さんにしてるからねぇ。でも『Switch』もわりと他所と組むことが多くない?俺たちは『Knights』とは逆で何をやってるか分からない怪しげな集団なわけですけど。
お茶を足しながら、りっちゃんと青葉の会話を聞きながら、手近なメモに思い付いた単語を自分用の資料に書きおとしておく。ガリガリ書いていると、レオの声が耳について顔を上げる。

「おれはちょくちょく席を外すと思うから、セナに代理を任せてもいいんだけど今回の企画はあんずが見てくれるっぽいしあいつに仕切ってもらえば?」

でもまぁ今回の案件はスオ〜が発端だし、責任もってこいつに取りまとめてもらいほうがいいか。困ったら文哉に聞いてくれ、それでいいよなスオ〜文哉。なんて、いきなり振られて、一瞬驚いたが、まぁ、すーちゃんがいいならおっけーと返事を出す。まぁ当然ですね、拝命しましょう。とすーちゃんからも返事が出る。レオがいないときの調整はナルくんだったけど、その補佐を俺がしてるので、まぁ裏方はそのぶん得意だよね。そのまま『Switch』も一年が中心になるらしい。視線をすーちゃんに向けると『Switch』の二年と喋ってるけど、ちょっと争ってるようにも聞こえるので、おれは大丈夫かと内心不安だったりする。レオが諌めつつ、おれは手元の紙に視線を向ける。すーちゃんがそのまま手を打って話を戻しているのだが、ちょいちょいセナがつっかかったり色々するので俺はほんとに大丈夫かと考えるのだった。いや、セナが煽りに弱いだけだろうけど。頭を抱えながら打ち合わせを終えたのは昨日。そのまま俺は俺たちのサイズの指定やらですーちゃんと一緒にバタバタしていた。いや、俺も成長期だし体重はキープを勤めてるんだけど、ね。身長は押さえられないよね。そんな間に書き物やらドラマのオーディションやらをもこなす。転校生と打合せして、『Switch』の衣装に寄せてつくりきると転校生が張り切っている。転校生にも塩ぎみの俺は、対応をすーちゃんに任せて書き物を終わらせる。照明案などを作り終えて、ユニット練習なども間に入れ混むとスケジュールがきつきつになってる。
とりあえずライブが終われば、余裕ができるはずなので。とかおもっていると事務所から電話がかかってきて、ドラマが決まったわよ!とマネージャーからの電話。おっおー……終わってからも忙しそうな予定になりそうだと思って、しばらくの予定をきいてみる。おっけーありがとーと電話を切ると、俺は肩を落とす。

「どうかされましたか?保村先輩。」
「んードラマきまったっぽーい。【招福宴】終ったら読み合わせはいりそう。」
「おめでとうございます。どんなのですか?」

いや、なんかあんまりきいてないけど、まぁ、とりあえず終ったら考えるかな。と諦めて、見なかったことにした。とりあえず、とりあえず、目の前の【招福宴】だよな。ほら、次期王さま手を動かしてなんて促して作業の手を急ぐのだった。今回俺の一番のお仕事はすーちゃんの教育であり今後のあとすーちゃんの2年分のお仕事の引き継ぎだろう。と考える。俺たちがいなくなったらナルくんぐらいしか仕事しなさそうだし。ナルくんやりっちゃんが卒業したらほんとにその時はすーちゃんが王さまになるんだから、そのときに仕事できません。じゃあっという間に下剋上だろう。書類のはしに俺は舞台に立つすーちゃんと『Switch』の黄色い子用の口上の原稿を作りつつ未だ見ない転校生の衣装に身を包んだすーちゃんを思い浮かべて、ちょっとたのしくなるのだった。まぁ、色々他所とも対立あった俺たち『Knights』も多少変わりつつあるんだろうな。と思うとちょっと寂しくなるね。

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