反逆 王の騎行ともしもの道を通る俺。-2 決まったことはいくつかあって、レオの楽曲を使わない。レオの関わっていたパフォーマンスを使わない。だとか。レオにかかわったことのある曲やパフォーマンスを縛られた。 条件が決まって俺が真っ先に動き出したのは、書き物の仕事だ。専念するために全部かっ飛ばしていくために仕事を収めて、【ジャッジメント】以前に締め切りが設定されてる仕事を終わらせて、その足で事務所によって、俺の伝手を伝って新しい楽曲を仕入れることには成功した。 今回の超特急で依頼もかけて事務所に負担を負わせてしまっているので、【ジャッジメント】以後の仕事を大量にやるということである程度決着がついた。 新しい楽曲に慣れてる俺たちは基本的に問題はないが、一番時間がかかるのは朱桜くんだ。新しくて、慣れてないので、セナと凛月くんとで一緒に振りを決めてブラッシュアップして鳴上くんや朱桜くんにフィードバックする。途中で情報収集と言いながら、二人は離れていったので俺は引き続き朱桜くんの面倒を見ながらレッスンを行う。 「うん、一通りは覚えたんじゃない。あとは軸がぶれないようにだとか左右を間違えないようにだとかね。」 「はい、過不足なくこなせる程度に習得できたかと。まったくもうLeaderにも困ったものですね」 「まぁでも、条件はととのってるんじゃない。」 恐らく相手はどうやってくるかもわからない。練習続ける…?と投げかけると、朱桜くんははい!と元気よく返事を返してくるので、俺は彼を様子見ながら、書き物の仕事を続ける。これを終わらせない限り俺もまともな練習に進むことはできないのだ。ある程度昨日の間に下処理を行っているので、今日はひたすら書き進めるだけなのだが、これからについての思考が巡って進まない。 「対決するからにはLeaderがつくった曲やPerfomanceを用いてはならないだとか詰めてしまうんですから。」 「まぁ、俺たちの曲は全部元はレオの曲だしなぁ。それを回避する策は俺が全部準備するし。」 「保村先輩は働きすぎだって鳴上先輩がおっしゃってましたよ。」 「俺はレオが帰ってきてほしいだけ。ここにレオがいて俺の世界はここで成り立つ。そこに俺がいてもいなくても。レオとセナが二人そろっているのが一番いいんだよ。」 「そんな…。」 「もとより俺はそのつもり。おしゃべりよりも手を動かして。」 そう閉めながら、それは思考する。 俺の話はいいよ。セナだってそのつもりだったんじゃない。レオがいなくてどうしようもないから細長い伝手を伝って俺を頼ってきた。そうだろう?ユニットの規定は5人だし、6人でもいい。ともとれる解釈だけれども、恐らくはそうじゃない。レオがちゃんと戻ったら俺はこの楽しかった毎日を抱えてまた野に帰るんだ。二人がともかく俺はそうしようと考えている。 俺も、多少変わってしまったんだろうなぁ。なんて思いながら、思考に走る。レオが連れてきそうな人を選出して対策を練らなければならない。レポート用紙にレオの名前を書いて線を引く。レオの仲がいい三毛縞。準じて、天祥院。部活のつながりで蓮巳。なついている青葉や鬼龍。三年生の名前を順次書いてから必要のなさそうな羽風や深海、斎宮を消して、そこから線を引く。ライブの開催時間から鑑みて朔間を消す。そうしていらないものを減らしていった結果。 「三毛縞、天祥院、蓮巳、鬼龍、青葉。守沢。そこから減らねぇ…。」 ならここからどこでもいい蹴るように対策をとるべきなのだろう。そう判断をして、見るがどこをどうしても強力な奴らばかりでどこから手を付けようかと思考が鈍る。インクを一滴垂らしたようにどこまでも伸びていくような感覚に襲われていると、俺の様子がおかしいのかと朱桜くんが駆け寄ってきた。 「保村先輩、大丈夫ですか?」 「こういうのは慣れてるから平気だよ。」 「顔色がよろしくなさそうですが。」 「本番は見れるような顔になるから大丈夫だって。」 「瀬名先輩には連絡を入れますからね。」 …きみはそういうところ、強かになったよねぇ。と思い返していると、転校生が様子を見に来たので俺は朱桜くんに転校生を任せて、思考の海に飛び込む。楽曲やパフォーマンス諸々と思考を巡らせていると肩を叩かれた。 「ふ〜ちゃん。張り切りすぎ。」 「…ん?」 顔を上げれば凛月くんが立っていた。俺の書いてたメモを奪って眺める。ひたすらレオが誰を招集するかとかのメモ。レオの行動だってしばらく考えたら大体できるけれども、時間がかかる。ならば周りをトレースすればいいと判断しての結果だ。 「そういう無駄骨して。今、情報集めてるんだから大丈夫だって。すぐにセッちゃんなナッちゃんが持ってくるっていうのにさぁ。」 「なにかしてないと、落ち着かなくてさ」 「なら体ほぐすの手伝ってよ。そのあとス〜ちゃんの稽古をつけたげようよ」 わかったよ。そう返事をして俺は立ち上がる。頭を切り替えるにはちょうどいいきっかけであるのには間違いない。ふ〜ちゃんが相手してくれないからス〜ちゃんがさみしがってるってさ。 「ごめんね。」 「いいえ、お二人からなんてそれはたいへん有り難いですが、よろしいのですか?」 「大丈夫大丈夫〜犬は仕事しすぎるからガス抜きさせてあげてよ」 「……仕事しすぎかな……?」 「無自覚なんだからさぁ。ほんと仕事中毒は体壊すよ?」 【ジャッジメント】が終われば、事務所の仕事が忙しそうなので、まぁ言いたいことはわかるけれども、色々今無理をしてないと後が怖いのだから今後悔なくやっておきたいのだ。どれが最善なのだろうかと考えて見るが、よくわからない。 「あんたの仕事は休む。おっけ〜?」 「ん。朱桜くんと一度踊って様子見たらいいんだよね。」 「全く話を聞いてない。」 呆れられたので、とりあえず俺と一曲通すよと声をかけて朱桜くんを促す。彼は頷いたので凛月くんに音源をかけてもらう。カウントの音が聞こえたので、俺は体をしなやかに揺らして踊りだしてしばらくすると鳴上くんがやってきた。 「あらあらまあまあ!仲良くやってるじゃない、意外と!」 「鳴上先輩!姿が見えないから心配していたのですよ、今までどこに?」 「ちょっと敵情視察にねェ、本番当日まで敵の正体を不明にしとくほど抜けちゃいないわよぉ」 「選択肢はある程度絞れるけど。いかんせん情報がないと絞り切れないよね」 「空が落ちてくるような心配はいらないわよぉ。戦う前にあらゆる手を尽くすのが兵法よねェ。泉ちゃんとふたりで、ね。【ジャッジメント】で対決する予定の『王さま』が作った『臨時ユニット』について調べてきたの。」 おれもある程度学院のスケジュールからメンツを絞ってみたけど。と先ほど書いたメモを渡してみると、鳴上くんも考えるようにメモを読む。渡したメモにおかしなところがないか思考がまた戻ろうとしているので、先ほど言われた仕事中毒だとかっていう言葉が妙に頭に張り付いた。 「どうも、『王さま』が放送委員会の親玉を仲間にしたみたいでねェ、情報集めに苦労したわァ?」 「仁兎、がレオ側?なら、奇人はないとして、仁兎が入るなら鬼龍と青葉が濃厚になって…B組で…え?俺はぶ…?」 「ちょっと、文哉ちゃん。落ち込まないの!」 いや、だってねぇ。そうだったらちょっと悲しいし…。ねぇ。レオのことだからありえそうだし、余計にヤダなぁ、って思ってしまう。…胃が痛い。がっくりと首をたれていると、ほらほら文哉ちゃんレッスンしましょう。なんて背中を押されて俺はレッスンに戻ることになった。 しばらくレッスンしてると、「ちょっとぉ?俺だけ仲間はずれ?」なんて口を尖らせたセナが帰ってきた。踊っていたのだけれど、全部ほったらかしにして俺はセナに抱き着く。セナも何かを察したのか何も言わずに、俺の頭をわしわしとかき乱してから、ほかの周りに事情を聴いて、あぁと一人納得して俺の頭上にチョップをかます。せっかくのセナ成分だったのに。離れろと言われてしまったので、俺はあきらめて離れることにした。 「痛い。」 「そりゃあ痛くしてるからねぇ。」 「意外と早いお帰りだったわねェ、泉ちゃん。」 遊木が逃げたい一心で仁兎に泣きついたから、情報が来たけど。なんて、セナは上機嫌であれやこれやという。どうもレオが本気っぽいのと、生易しいレベルでやってこないということ。『臨時ユニット』の名前が『ナイトキラーズ』ということ、そして強豪『ユニット』リーダー級大物がそろっているを聞いて、俺は書き捨てていたメモを拾い上げて、厳選を始める。 リーダー級大物、過剰な戦力というならば、2年ではない。そう割り切って先ほどの候補メモに、仁兎を加えて丸を打つ。それから、残った候補の三毛縞、天祥院、蓮巳、鬼龍、青葉、守沢。名前センスの悪さから守沢を消して天祥院に丸を打って三毛縞を消すこれで三人目。個々の二人は同時に出ることなんてあったら学院が分解するまである。衣装やらを踏まえると天祥院の金と青葉と鬼龍の線が濃いけれども、俺たちが5人なので、引くならば蓮巳、鬼龍、青葉…。生徒会のつながりを考えるとユニット間、諸々と考えれば、青葉を外すべきなのだろうか。そうやって悩みながら、確定にレオと仁兎、天祥院を書き込んで、天祥院の面倒を見るために蓮巳を添えて、どちらか一人。として鬼龍、青葉。を書き込む。これならある程度の対策はとれる。そのままメモを持ち上げて見ると素っと逃げて、セナの手に収まる。 「いや、情報は掴んでるから。そういうの考えるのやめてそっちに対策をとって。」 「はい。」 「にしても、なずにゃんと『ナイトキラーズ』っていうだけでそこまで詰めれるんだねぇ。」 「気味悪いほどメモ見つめてるからねぇ。そのうち熱でも出すんじゃない?」 「縁起でもないことを言わないでよねぇ。くまくん。」 ほら、こいつらだよ。とセナが指さしたのは鬼龍。どうも確定情報はすべて正解らしい。…いろいろと頭痛がしてくる。これ全部に対策を練るならば問題は多い。一本の筋にして俺が変幻自在に動くべきなんだろう。 「凛月くん、方向を決めよう。」 「そうだねぇ。その面子だとみんな本気で挑まなきゃ勝てないね。」 【デュエル】と似たようなスタイルになるならば、人が把握できた時点で出る順番も絞ることはかなりできる。仁兎や蓮巳なら思考のトレースはしやすい。クラスや性格である程度見ている分フォーマットは敷きやすい。ガサガサと紙を取り出していたら、凛月くんがやってきて作戦を立てようと俺に言うから、セナも二人で決まったら教えてというので、二人で作戦会議が執り行われる。 俺の予測に基づいての相手の飛び出し方に対して、出る順番を決めて振り当てられた楽曲を決める。二人であぁだこうだと議論をして、それぞれに合うことやものを決めていく。 「ふ〜ちゃんは、何をやっても大丈夫〜。」 「どういうこと?」 「##name_##のソロだなんて何をしても票が入るってば。安心しなよ。」 「…それ、喜んでいいのか?」 「勝利だから問題ないよ。」 嬉しくない確定勝利を予測されて、俺はどうしていいのだろうか。何とも言えない顔をして、とりあえず俺が一発目だと決まるのだが、正直喜んでいいのかわからない。首をかしげていると、セナが混ざったので今までの決定したことを述べると、セナも何となく理解したのか俺を一発目に出すのに賛同しているが、まったくもって俺が理解できずただただ首をかしげるのだが、凛月くんも鳴上くんも俺を見て笑っていた。よくわからずちょっと腹が立ったので俺は朱桜くんに対して当社比倍ほど厳しくして置いた。あぁ、わざとじゃないもんね。強くなるためだもんね。八つ当たりじゃないよ? ←/back/→ ×
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