-スカウト!想いの花束。と俺。

現在ネタ作成中のショートストーリーに花をさしこみたくなったので帰りしなに花屋に寄れば、花屋の中にエプロンをしたナルくんがいた。ん?そら似か?とか思って見ていると俺に気づいた見たいでナルくんが手をふった。やっぱりナルくんらしいので、俺はそっち(寄る。

「あれー?雛鳥先輩やんかー」
「あぁ。斎宮のとこのガキンチョ。」
「文哉ちゃん、いらっしゃい」
「ナルくん、どしたの?」

親鳥の前やと偉い態度ちゃうやん。と隣のガキンチョが言う。俺はそんなやつを視界の外に追いやって、ナルくんに質問を投げる。みかちゃんが困ってたからね!と言うなら仕方ない。

「斎宮のとこのガキンチョ、言っとくけど。セナもナルくんも王様も『Knights』は全員俺の子で俺の主なの。」
「もう文哉ちゃんは年下をいびらないの。」

ナルくんに言われたら俺は黙るしかない。ぐぬぅ。と黙りながらも、まぁナルくんの友達だからね!とぷいっと横を向く。そちらには青葉がいた。うわー。と声に出すと、青葉と視線が重なった。こちらに気づいて手を振っている。

「まぁ、ナルくんのオトモダチなら、仕方ないけど。やりすぎなら、斎宮のとこのガキンチョでも叩き潰すからね」
「だめよ、文哉ちゃん」
「ちぇー。」

ちょっと見てるから決まったら声かけるから、ほっといてー。手をひらひらふって、俺は店の片っ端から花を見ていく。方向性は決まってるので花言葉を思い浮かべながら話の筋を決める。ふらふらしてると青葉に「文哉くん。どうしました?」とか言われたが、あとでナルくんに頼むからほっといてー。と告げると青葉は離れてった。楽でいいや。と判断して、このはな綺麗だなぁ。とか刺ついてる。とか新たな発見をしつつ、使えそうな花をかたっぱしからメモに書き込んでいく。これをいくつ。あれの何色をどう。とかいて裏にも続く。しっかり書いてメモ用紙を一枚引きちぎる。予算はいくら。どんな用途にするか、まで一通り書き込んでから、近くにいた青葉を呼ぶ。これ、二時間後ぐらいにとりにくるからよろしく、と突きつける。青葉は一瞬わたわたしてから、まあ誰が作ってもいいよ。資料代だし、とだけ言って、俺は店を出ようとしたら、転校生が俺に駆け寄ってきた。

「保村先輩!」
「なに?転校生。忙しいんだけど。」
「あ、えっと…ですね。花言葉って詳しいんですか?」
「話作るのにある程度は知ってるし、調べたけど。なに?要領得ないんだけど?」
「花束、私に作らせてください!」

別に誰でもいいんだけど。資料だし。というか、店内散歩料だと思ってるから、別に誰が作ってもいいよ。というと、部屋の真ん中でナルくんがクスクス笑って、素直じゃないわね文哉ちゃん。とちょっと嬉しそう。いや、そう言われても困るんだけど。なつかれるのは性分じゃない。何なの?とぎろりと俺は転校生を睨むと、そんな怖い顔しないでよ、といわれるので俺ははいはい。と返事して肩を落とす。

「勝手にして、俺しばらく作業したいし近くの茶店入るけど。出来たら連絡ちょうだい。」
「文哉ちゃん自分の資料でしょ?見ていきなさいよ。ほら、あんずちゃん、椅子椅子。」
「あ、保村先輩どうぞ!」

いや、どうぞじゃないよ。でも、ナルくんのいうことは一部正論でもあるので、俺は仕方なくという体を保ちながら椅子に腰かける。作業用のノートを開いて、あれやこれやと書いて携帯を取り出す。百科事典アプリを呼び出したりネットワークに繋がったオンライン辞書こういうとき便利だよな。となんて思いつつ、転校生の手の中で集められて彩り豊かで、同時に清廉さも兼ねた花束が出来上がる。俺が見ていて気づいたのかあたふたしだしている。
悪かったね。なんていいつつ視線を向けると、今入ったばかりのお客と目があった。ほかを一瞥してみたが、ガキンチョは別の客の対応中で、青葉は電話対応して手が離せない。同じ制服を着ている俺が椅子にふんぞり返っているのもどうかと考える。お客さんの顔が曇った気がして、俺は作業用文房具と、壁にかかっていたエプロンを掴んでその入ってきたばかりの客に声をかける。

「いらっしゃいませ、すみません大変お待たせしました。どのようなご用件ですか?」
「あぁ、えっと。今度娘のピアノのお稽古でー」

客が話始めたので俺はかたっぱしからメモをとる。俺に作る気はないからな。ピアノのお稽古で先生に渡すそうだ。日程から色から、どんな風にしたいのか等をかたっぱしから会話に混ぜ込んで問いかける。なんかインタビューに近いようなと思いつつ、娘さんおいくつなんですかー?とか世間話も混ぜ混む。どうも娘さんはまだ小さいらしい、娘さんのお洋服のお色はどんなかんじですか?娘さんからお稽古の先生になら娘さんのお洋服に会わせた方が素敵にまとまりやすいと思いすよ?そうねえ、娘のはーと話してくれるので書き込む。余計かもしれないけど、有っても損はない。どれぐらいのお花がいいですかねー?うんうんこれぐらいのサイズのー。あ、この花沢山詰めたりすると可愛くなりますよー。花言葉とかも素敵でー。とか営業トークしつつもサイズも具体的に聞き込んで予算をうかがって最後に名前を聞く。ではこの日に。こんなかんじで。とメモを読み上げれば、満足そうに客は帰ってった。青葉の電話も終わりガキンチョも接客対応が終わったらしくこっちを見ていた。

「文哉くんすごいですね〜。マニュアルも読んでないのにそこまで、とは。」
「伊達に大人の世界に足突っ込んでねえの。5W1Hさえ整えてたらいいの。」
「雛鳥先輩ありがとーな、お客さん帰ってまうなーって思っててんけど。」
「勝手に手出して悪かったな。笑顔が曇ったからね。手出したわ。」
「手伝ってくれたんやし、お茶奢らせてください雛鳥…ううん保村先輩。」
「要らない。つるむの嫌い。俺が好きでやったことだし、手伝いバイトが支払える雀の涙ぐらいの賃金なんて興味ないし。」

お客さんが笑って帰るのを提供するのがサービス業、スマイルゼロ円。と言いつつ書き込んだメモを千切って青葉に押し付ける。でも…とガキンチョがごねるので次ガッコで会ったら水奢って、それでいいから。とガキンチョの肩を叩いて俺は転校生のもとに向かう。てんこーせー、花できたー?と問いかけると、はいどうぞ!と言わんばかりの花束を差し出される。ふーん。とじろじろ見てから、俺は一塊の花がついた一本を取り出して、転校生の耳元にさしこむ。

「先輩!?」
「いいよ、やるよ。ほい、ナルくんも転校生もおそろいー。身内じゃない男にさしこむ趣味はないから残り二本は転校生からあいつらの胸ポケットにでもやって。」

んじゃ、代金な。と転校生に多目に諭吉を握らせる。予算以上の金額の二枚の札にぎょっとした転校生にそのお釣で全員飯食って帰れ、と耳打ちして俺は店を出る。ナルくんが俺を呼び止めるので、そのとーりに受け取っといて。三年生の言うこと、たまには聞いとけ。と言い放って、今度こそ俺は店を出る。あ、領収書きってもらうの忘れたわ。ま、いっか。とりあえず帰って仕事しよ。

「鳴上くん。この花ってダメだったのかな?四本入れた四本突き返された感じ…」
「そんなことないわよカランコエは、文哉ちゃんの好きな花よ。その通りに受けとれって言ってたじゃない。文哉ちゃん、素直じゃないからね〜もう、身内にとことん甘いんだから!あの泉ちゃん二号は。」
「ね、鳴上くん。この花の花言葉何かな?」
「青葉先輩にマニュアル借りて探してみなさい。そういうのは調べてみてこそ意味があるわ、ほんと、優しい先輩よねー」

なんて会話繰り広げられてたってナルくんから後日聞いた。俺に教えんな。鳥肌が立つ。おえっ。





カランコエの花言葉。
幸福を告げる。
たくさんの小さな思い出。
あなたを守る。
おおらかな心。
人徳。
Knightsの文哉らしい花だと思ってます。

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