-ナルくんと、俺。

ドラマの仕事を終えてセナハウスで読書をしていると、ナルくんが入ってきた。やっほー。と言うのでひらひら手をふっておく。なに読んでるの?と聞かれたので、ホラー映画の原作ー。と軽く答えておく。

「どんなの?」と聞かれたので人裂きピエロからにげるやつー。と返事をしたら文哉ちゃんなんでも読むのね。と言われるが、小さな頃から芸能界に出ていたので周りはどこを見てもおとなばかりだった。一人やることのなかった俺はスタッフさんに文字を教えてもらったりしてひらがな修得さえしてしまったが運の尽き。片っ端からルビを振らせて俺はひらがなを得てシャンプーラベルまで読み漁って文学少年となったのだった。
スタッフに書いて貰ったのはなつかしい。

「昨日は別のを読んでたわよね?」
「んー昨日は児童文学ー七本連作の本だよー。」
「文哉ちゃんのお家の本棚ってどうなってるのかしら?たくさん本がありそうねぇ。」
「昔の台本から何から何まで入れてるから見てて楽しいよ。ほら、あの国民的歌番組のやつとかも親が大事にとってるし。最近は底が抜けるとか言われてほとんど事務所に置かせてもらってる〜」

ほら、この間漫画編集のドラマ見た?部屋の壁一面に刊行した漫画を片っ端からおいてるの。そういうのみたいだよ。たまにレオが霊感のために来たりするけど、なかなか出てこないよねー。
ケラケラ陽気に笑い、ねぇ今度文哉ちゃんのお家見させて貰っても?とナルくんが俺に聞く。セナもまだ入れたことないから、そのあとね。じゃないとセナがすねちゃうからね。言葉を足すと、急に背後で気配がして頭をぐちゃぐちゃに撫でられた。

「ぜーんぶ聞いてるけど?」
「セナ、こんどナルくんと一緒に事務所くるー?昔、遊木と一緒に写った記事が…」
「なにそれ、聞いてないけど?」
「そりゃあ小学生ぐらいの記事の話あんましないもんねー」

で、来る?と聞くとセナは即答で行くに決まってると言うので、じゃあナルくんも一緒においでよー。お茶とお菓子とスルメ置いて待ってるよー。俺に与えられたあの部屋はひどく静かだからね、賑やかになって嬉しいよ。なんて告げると、セナとナルくんはお互いの顔を見合わせて、不思議がる。日程はレッスンもない来週の日に指定して、とりあえず俺は事務所片付けなきゃ。と思い至るのだった。

「ゆうくんの記事だなんて…」
「あ、セナと俺と遊木のインタビューのやつもあるよー」
「出てるやつも保管してるのねー、それだけお仕事たくさんしてるのね!」
「親が収集癖あるからね〜。俺の書いた本とかはしっこのメモ書きやら全部保管されてるよ〜。」

事務所に引き抜き!と言われないようにきちんと説得しといてねー。とあとつけしてるとすーちゃんが入ってきたので今日の読書もおしまいだな。と判断して読みかけの本を閉じる。『Knights』のみんなと取った写真を栞にしてるのは秘密ね。

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