噪音◆渦巻くホラーナイトハロウィンと俺-1

「文哉、今回の雑誌読むのやめた方がいいよ?」
「え?なんで?俺の記事問題だった?」
「いや…実は。」

そういわれたのが2時間前、俺の頭に血が上りっぱなしだ。そもそもの記事だし、メディアだからって横流しにするほど俺は大人じゃなかった。っていうか、まだ高校生だし。タクシーブッ飛ばす高校生って考えたくないけど、コレが一番学院にすっ飛んでいくのだから仕方ない。そう、仕方ないんだ。俺の手元の雑誌には、俺のコラムが乗ってある。所謂献本なんだけど、これの一つの記事にあったのが、俺たち『Knights』と何度かぶつかり合った『Trickstar』がインタビューに応答してるのだが、これが大問題だ。俺たち『Knights』がこきおろされてる記事なのだからこれはクレーム待ったなしだ。おそらくユニット間問題なので教師は動かないし、生徒会だって手を出してこない。だとしたらこれは絶好の好機だと思う。瞬く間に学院が見えてきて、怒りにまかせて俺は運転手に万札握らせて、警備室をも華麗に抜ける。そこは大事、徹底的にルール尊守を教えて込まれてるので、そこをさっと乗り越えて俺は事前に情報を調べ切った俺は真っ先に目的地に到着する。

「ゴルァ、糞餓鬼ども」
「げっ、今来るの!?文哉!?」
「ちょっと!文哉ちゃん、そんなに血相変えないで!司ちゃん、文哉ちゃん抑えて!」
「保村先輩!落ち着いてください!」
「すーちゃん、お座り!!」

俺の腕を掴んで前に進ませない様にするすーちゃんを投げ飛ばして、俺は氷鷹の前に立って記事を付きだす。あぁ、それか。と言われたが、俺の頭は山火事の如く燃えている。それだけ腹に立ててるのだ。お前ら、何考えて発言してんだ?お前ら、メディアにこんな取られようしてるんじゃ、まだまだひよっこだから俺たちが代わりに『SS』に出てやろうか?

「それについては、先ほど話が終わったところだ」
「ほう?で、お前たちはどれぐらい俺たちに何をもたらしてくれるんだ?内容によっちゃ考えてやんないよ。親がどうこう言えど、残念ながら財布係は俺なんでね。親が謝罪文だけでいい。なんて言う考えで居ても財政面ではそうは許さないし、『Knights』の示談が云々言うなら、俺個人で裁判でもどこでも出てやろうか?。」
「ちょっと、文哉」
「セナは黙って。セナがいいだとか、なんだとか言えど俺は許さないよ?編集がやりました、だとか何でも言えるもんねェ。」

お前たちがどういう発言をしたからこういう解釈されてるかわかってんの?そこまで解釈して発言しろ、それが嫌なら自分で記事をかけ。ぎろりと睨みながら発言をしたら遊木がビビッて声を上げた。……遊木に手を出すとセナが怒るから放置で、だ。

「生徒会入ってるやつがそこまで考えてませんでした。っていうなら俺は俺の首をかけてお前たちに勝負を申し込むけど?」
「やっぱりどうしてそんなに怒ってるのかわからないんだけど」
「…ほう?…発言に意はないと。」
「明星くん!!」

ならそれはだいぶ名誉棄損だな。ニッコリ笑うと、後ろがざわついた。それでも俺は気にせず問い詰めようと猶更前に出た瞬間、りっちゃんに脳天殴られた。痛いんだけど!!そう吠えつつも、かるく流されて「それも全部カタついてるから、安心しなよ。ふ〜ちゃん。」何て言われる。

「そういうの俺の仕事なんだけど!!」
「文哉ちゃん、いなかったしねぇ?」
「それにしても連絡も頂戴よ!!俺無駄に走り過ぎたじゃんね!」
「それは保村先輩が我々の話を聞かないからでしょうに。」

呆れられた。そうじゃない、それでもだ。誠意ある文章、っていうだけじゃ足りないんだよ!と俺が唸れば、そうだけど今回は仕方ないから一旦退散しましょ。とナルくんに言われた。違うの!そうじゃないの!俺はあいつらから直接ゴメンナサイが聞きたいの!!そうやって主張せども流された。りっちゃんとナルくんによって俺は文字通り連行された。ちょっと持ち上げないでくれる!!俺チビだから足つかないんだってば!!!おいこら!巨塔たちめ!!くそ…俺も大きかったら…ナルくんぐらいまであったら!!とか思うけど、18歳なのでたぶん伸びない。悲しい。

「本当に、終わったな。っていう瞬間に保村先輩が来て大騒動になったんですからね。」
「本当に終わった後に俺が掘り返しに行ってたんだなぁ…」
「そうですよ。もう、私たちのために吠えるのは構いませんけど、もうちょっと前後を読んでください」
「君がいうのすーちゃん?」
「とはいえ、ここまでが現状というか、前提です。何かご質問は有りますか、Leader?」

それが、昨日。俺はすーちゃんに呼び出されて屋上に来たら作業中のレオに語りかけてるので、それを聞きながらなぜ呼ばれたのか首を傾げた。昨日、こんこんと説明されて俺もある程度納得はしてる。納得してないのは俺よりも先にみんなが抗議しにいった部分なだけで。

「はい、作曲に夢中で聞いていませんね、無駄な時間を過ごしました。」
「俺は聞いてたけど。」
「保村先輩はいいんです。昨日のことを存じてるんですから。せっかくSmartphoneを無くしがちなLeaderが時代に取り残されないよう、適時こうして現状を説明しにきて差し上げているというのに」
「すーちゃん、偉いねぇ。いい子良い子。」

俺は、すーちゃんの頭をなでるとちょっと!!なんて言って手を払われたが、レオはちゃんと聞いてるぞ?とか俺は判断する。うん。小声でぼそっと悪口を言ってるけど、それも聞こえてるぞ。少なくとも俺は。

「何だとう!?聞き捨てならんっ、馬鹿って言ったやつが馬鹿なんだぞ!」
「ほら、いわんこっちゃない。」
「あとサイコパスって言ったやつがサイコパスだっ」
「そこまで言ってないから、レオも落ち着こう?」
「聞こえているではありませんかLeader、だったらせめて相槌ぐらい打って欲しいものです」

独り言をしている気分になっちゃう。と言うすーちゃんをなだめつつ、俺が代わりに礼を言えば、先輩が言うのは違うと怒りだすので俺も適当に慰めつつ、脳内でコラムの内容を描いているとすーちゃんとレオのやり取りが聞こえる。もうすぐハロウィンのライブだっけ、と脳内で浮かぶ。

「え?意地悪をしたほうがいい?ずっとキツく当たってたからさぁ。もっと褒めてやったほうがいいのかと思ったんだけど?どうなの?文哉?」
「…んーたまに甘くしとかないと、どこで噛まれるかわかんないしねぇ。」
「保村先輩!」
「難しいっ、というかめんどくさいなお前!」

めんどくさいだって。とカラカラ笑うと、すーちゃんから怒られた。一言怒られたけれども、そのまますーちゃんはレオに今度のライブへの要請を行う。それと関係ない話に流れて作業に入ろうとするのですーちゃんがレオの楽譜を取り上げた。俺に楽譜頂戴。と言われたので、要望のままレオに白紙の楽譜を渡せば、すーちゃんに俺の手持ちの紙全部持ってかれた。…あの、それ、俺のコラム用のも入ってるんですけど…あの。すーちゃん。返してくんない?

「おまえは悪魔の子だ!血も涙もない略奪者だ!文哉も紙がないと、生きてけないのにな!」
「……いや、頭の中にある程度入ってるけどさ…」
「騎士も元をただせばそういう存在だったかもしれないけど、今はそんな話はしてないな!」

適当に相槌を打ってると、すーちゃんはどこまで説明したかと思いだす様に記憶を掘り返してるので、俺がどこまでだよ。と教える。礼を言われたが、そうじゃない。

「やっぱり『Knights』も変わったなぁ。昔なら徹底的にその『Trickstar』とやらをぶっ潰してただろうに」
「…そうなの?」

俺だって『Knights』に入ったのは今年の問題なので、詳細はあんまり知らない。人の心が壊れてぼんやりとしていた根無し草時期なので、なんとも言えない。理解を示して諭して、『次からは気を付けてね』みたいに言って無罪放免にしたんだって?いい子ちゃんか?文哉が居ながら。

「俺は吠えたよ。全部終わってからだったみたいだけどさ。」
「話が全部終わった瞬間に保村先輩が突っ込んできた時はかなりびっくりしたんですけど。」
「飼い主が先に突っ走っていくと思わないじゃんね。ナルくんもセナも、雑誌に載ってるのなんて知らなかったし。」
「無駄に事を荒立てるべきではないという瀬名先輩たちの判断でしょう。感情的にはあまり納得していませんけどね。私は。」

俺も、と同意したが、問題は解決してないし、記事に至って音沙汰なしときた。事務所を介して抗議もしてるが、まぁ、学院と事務所は関係ないからって取りつく島はないようだ。どうやって抗議しにいくかが難しい。

「おおいいやつらだな!きにいった!ずっと敵対してたって聞いたからさぁ、てっきり吐き気を催すような邪悪な連中かと思ってた!」

文哉から聞いたけど、俺がいない間『Knights』は微妙に道から外れたこともしたっぽいしなぁ。それなら俺たちの方が悪か。その宿敵なら『Trickstar』のほうが正義だよな。ぶつぶつと言葉をこぼすレオに、正義だと悪だのと言うので、まぁそうだよなぁ。と俺も同意する。

「悪なら悪だと開き直って楽しめるぞ〜『ナイトキラーズ』も愉快だったし、ワクワクした!またやりたい!」
「…それは遠慮したいなぁ。誰とも戦いたくないなぁ。二度と。」
「そういうところが、犬だよな。文哉は。」
「へいへい。どーも、飼い主さんよ。」

次にあんな狂乱騒ぎを繰り広げたら、今度こそ愛想を尽かしますからね。ともあれ、話を戻しますけど。天祥院のお兄様が的確に手を打ってくださったので、件の雑誌記事による被害は最低限におさまったのです。
…天祥院のお兄さまぁ?俺とレオの声が被って、二人で顔を見合わせた。あれをお兄様だなんて呼べるすーちゃんの気心が知れない。知りたくない。気持ちわる、おえっ。

「Leaderも保村先輩もお知り合いでしょう?あの方を忌々しい『KnightsKillers』に招いて一緒に戦ってましたし?」
「友だちだったんだよ。まぁ、あいつが対処したなら、宜なるかな。綺麗に解決したはずだろ、何が問題になってるんだ?」
「正確には解決しつつあるという感じなのですよ。」

口で説明するのは難しいので、できればこれから私に同伴していただきたいのですが。百聞は一見にしかず。我々がいかに厄介な状況に置かれているか、見れば一目でわかると思います。そういうすーちゃんにレオはあんまりいい返事をしない。どうしてもおれが手や口を出さなきゃ駄目そうだったら文哉が迎えに来て。そしたら追いついて駆けつけるからさ。

「おっけーレオ。」
「今回は本当に申し訳ないけど、俺は不参加にさせてほしい。」
「え?まじ?」
「今回『も』ですけどね。真面目に活動してください。頼みますから。」
「…あ、そっか…はぁ。」

そういうことね。と俺は納得していると、すーちゃんがレオに問いかけてるが。まぁ、セナのことを考えたらすぐに答えが出る。レオの答えを聞きながら頷いて、しばらく俺はレオの監視かな。と結論付けて、コラムについて思考を飛ばして時間を過ごす。すーちゃんに睨まれたが俺は俺を慰めるのに必死なんですー。すーちゃんを追い出して、しばらく時間を過ごしていたら粗方霊感を使い果たしたレオが顔を上げた。

「お、文哉。うっちゅ〜。」
「はい、うっちゅー。」
「こんなところにいるの、珍しいな。」
「まぁね。レオは?」
「いい霊感が来たからな〜」

そっか。と返事をしつつ、俺はセナの行った先に思考を飛ばす。多分、きっと『Trickstar』の面々にイライラさせられてるんじゃないかな。とか予想するが、まぁ、『Trickstar』面々の思考は読めないのでわからない。
んーそうなんだ。適当に返事しつつ、事務所移動ばかりしてた俺だけが事務所の金の卵なわけで、そっちも真面目に動かなきゃなぁ。なんて思考を飛ばしていると、レオが最近どうだ?と話を振ってくる。

「ん。最近、ってか、レオが帰ってきたから調子はいいよ。よく寝れるし、睡眠時間も削るほど読書が必要ないよ。」
「また痩せたか?」

…ばれたか、と思ったがそのまま役作り〜と適当にごまかして笑ってみたが、レオにばれた。俺は嘘つけませーん。でもレオが帰ってきてから徐々に体重は戻ってるから許して。と笑ってレオに抱きついておく。久々のレオ成分補充。嬉しくてエヘヘと笑ってれば、霊感わいてきたとレオが俺をひっぺがして走り出した。ちょっと待てレオ!!走ってかないで!!
見えなくなってしまったレオを追いかけるか、セナたちの方に合流するべきか色々思考巡らせて今後の予定を一瞬で立ち上げる。レオ成分を一瞬でも補充できたのだから、とりあえずセナ側に行くべきだろうと判断する。それまでにレオに会えたらレオに寄りそう。それだけ。ざくっと判断して、俺はゆるゆる歩いてたら事務所から電話がかかってきてあれやこれや打ち合わせして、厨房に入ろうとしてたらレオと遊木が話し込んでいた。うん、危険な香りがする。この間っていうか数日前だけど、言ってたよな〜。何するかわかんないって。春先に監禁事件とかやっちゃってるから、それ以上の事って刺殺とかだけど、いや、レオならやりかねん。そう判断して俺はそっと抜き足差し足で二人の声を拾うために身を潜めた。

「だから気楽に悩みを吐け!王さまの耳はロバの耳〜」

そう聞こえて、俺は頭を抱えるのだった。

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