奔走、就中の暁闇ライブ。-11

そのままつつがなく進行を進めて、パフォーマンスを進めていく。間のMCでは一曲目について触れて話していると、新しいマネージャーの姿が見えた。なんだよ、探しにでもきたのかな?なんて俺はぼんやり思いながらも最前列のお客さんとMCのナルくんに相づちを打つ。ほらほら、俺は働かないのか?愛想振り撒いて尻尾ふって番犬らしいことしてるよ?ねぇ、あ痛い。セナ全力で殴ったでしょ?

「文哉ちゃんは初めてのソロどうだったの?」
「ソロって楽しいけど、やっぱりいつものがしっくりくるよ。って思ったらソロとか立派にやるすーちゃんって偉いね」
「私ですか!?」
「君以外にこのステージにすーちゃんっていないよ?セナの意地悪によくついていって偉いねー」
「ちょっと保村先輩!」
「ほら、仲間だから保村じゃなくていいんだよー末っ子ちゃん?」

末っ子なんて呼ばないでください!なんて俺を拒否する。まぁ、わざと声を大にして言ってるので、回りはみんなクスクス笑ってた。そのまま構い倒してたら、スーちゃん拗ねるからやめな。とりっちゃんに止められた。ちえっ。

「ほら、文哉着替えてきな。」
「え?着替えなんて打ち合わせになかったよね?」
「俺たちがあるって言えば?」
「はい、あります。セナとレオには間違いないもんね!」

ナルくんが呆れて頭ふってたけど、これが俺だから仕方ない。レオとセナがカラスが白いっていうならば、俺はそれを探すかして、実現させてやるよ。なんてね。とりあえず1曲以内に帰ってきなよ。と言われて、俺はさっさと舞台袖引っ込む。スタッフがあわてふためいてる中を通り抜ければ、転校生の隣にむっちゃんがいた。ちょっとしばらく見てない間にやつれたようにも見えるけれど、こんな姿のむっちゃんを見るのは初めてかもしれない。俺はここにむっちゃんがいることにも驚いてるし、いまいち理解が及ばない。

「は?むっちゃん?」
「文哉、久しぶり。」
「なんで、ここにいるのさ。」

んー瀬名くんと鳴上くんがマネージャー通して連絡くれてね。この時間なら事務所も手出しできないから、ここで決めること決めちゃいなさいって、あの子たちが便宜図ってくれたのよ。いい友達持ったね。文哉。
親の慈愛みたいな顔で微笑まれた。いや、なんであんたここにいるの?疑問符を浮かばしていると、転校生が細々と話してくれた。…っていうか、今むっちゃんが言ってたよな。セナとナルくんのマネージャーが連絡くれたって。転校生耳ついてる?

「文哉。今度私が事務所を立ち上げるの。来ない?ってか、来な。あの人もたまに顔出してくれるって約束してくれた。」
「まじ?」
「だから、首を縦に振りな。そしたら超優秀なマネージャーが助けてやるよ。苦しいんでしょ?瀬名くんや鳴上くんが血相かえて私のところに飛び込んでくるぐらいのんだから、結構きつくなってるんじゃない?」
そういうところが男前すぎるっての。俺は迷うことなく首を縦に振る。あんな事務所わってられっか。違約金がいくらであろうが俺は働いてやる。そう意気込んでると、とりあえずライブに戻りな。ほらお着替えタイムだよ。なんていいつつクツクツ笑って俺の衣装を取り出した。待って、その服…。

「おい、待て。転校生。その服まさか。」
「泉の乙女役よろしくお願いします。」
「また俺かよ!!」
「いいじゃん、…世の中そういう趣味もあるよね?」
「むっちゃん、あんたが絡むと話がややこしくなる!」

転校生か目をキラキラさせて、ほら一曲分しか時間がないんですから。といいつつメイク箱をたぐり寄せてくる。まって、色々突っ込む部分がありすぎて処理が追い付かない。俺、そんな練習してないし、ってか二度とやらねえって言ったじゃんね?三度目なんたけど?!

「睦弥さん、押さえてください。」
「合点承知」
「むっちゃん!俺のマネージャーでしょ?」
「まだ、契約書通してないから文哉のマネージャーじゃないしー」
「おい、睦弥!!」

あんたが元気に生きれるようにするのが私の仕事だし、ステージが終わったら最後の戦争になるから、あんたも気を引き締めなよ。とりあえずあんたの仲間が心配してたんだ、応えてやりな。
うん。だからって女装はないだろ。とかごねたけど、むっちゃんにかかれば俺は素直に言うことを聞かざる得ない。なんだこの圧倒的親が横に立ってる感は。おい転校生わかったから衣装持ってこい。なんて俺が叫ぶ。もうすぐラスサビの音が聞こえてくる。俺は、まだ一曲目の衣装で早着替えの必要性があるのだ。

「文哉、さっさとここに名前を書いちゃいな。」
「おん。捨てられる前に捨ててやるさ。」

手渡された文章のなかにむっちゃんと、前の社長の名前が書いてある承諾書。むっちゃんの行動力には驚くしかないけれど、ここでこの波に乗っておかねばあの事務所で俺はきっと使い潰されるだろう。そんなのは簡単に想像ついた。手早く渡された書類の一枚目に俺の名前を書いてしまうと同時にむっちゃんから声をかけられた。
これであんたはうちのものだよ。安心しな。今頃家宅捜索入ってると思うよ。ほらほら、説明はあとだ。あとであんたの仲間に感謝して、とりあえずステージに行ってきな。着替えてな。
ちょっとまて、色々聞き捨てならんものがいっぱい聞こえたけれど。突っ込むのはあとだ、もうやけっぱちになりながら俺は早着替えをして、ステージに飛び出してパフォーマンスするのだけど、ヒール履かされるのきいてないって。


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