奔走、就中の暁闇ライブ。-10 翌日一日かけて最終調整を行って、ライブ当日。 なぜかレオからの厳命で俺は『KKnights』のメンバーの隣に必ずいること。なんて言われたので、だいたいレオに引っ付くことにした。いや、衣装の着替えは別個でお願いします。そこまで一緒にいる意味はないからな。おい、引っ付くなって言ってるでしょ!暑いわ。べりっとレオを剥がしたりした。そうこう言ってたらライブ直前で衣装にも着替えた俺たちは、舞台袖に立って、転校生の衣装チェックが入り、程なくしてりっちゃんが俺を呼んだ。 「緊張してる?」 「俺用のソロとかなかったからね。してるっちゃしてるけど、後からみんな来るし楽しみだよ?」 「まぁ、安心してなよ。番犬。おれたちがフォローするから、そこまでは持ってね」 「わかってますー。」 ぷいっと横を向いたら難しい顔したすーちゃんが俺を見てた。ので、声を投げると俺に気づいてなんでもないですよ。って言うけど、俺がどんだけお前を見てると思ってんだ?バレねえとか思ってると駄目だぞ。おいこら。すーちゃんをつついてたら、ナルくんに止められた。何か隠してるだろー?とすーちゃんに詰め寄るとSPは配備してますから!とか言われて察しがついた。おい、お前ら本気で心配しすぎじゃない?俺事務所今嫌いなターンだけどちょっと同情したくなるじゃんかね。…しないけど。 「文哉、そろそろステージ上がりなよ」 「はーい。わかったわ、レオ―みんな、先にいってきまーす。」 「俺たちもすぐに行くからな〜」 最後にメンバーに手を振って俺はステージに上る。真っ暗なステージの中央に立って客席に背中を向ける。観客席がずっと、ざわめいてる。ステージに照明すらついてないから俺に気づくことはない。もうすぐ音がなりだしたら俺のソロが始まる。ダンサブル寄りでちょっと『Knights』らしくないけれど、俺の好みに合わせて作ってくれた曲だ。観客がどんな反応をしてくれるかな。なんて思いながらウキウキしてると、ギターがかき鳴らされだした。それと同時にステージに灯りが付きだして俺の背中を照らす。が、まだ動かない。シンバルの音が鳴り始めて俺は踊りを開始する。ちょっとだれた感じの割にしっかりとした音が聞こえる。 練習中はずっと一人だったけれど、それでも『Knights』と踊れるということが楽しみで仕方なかった。すぐに歌いだしが始まって、マイク片手に反対側の手を高く上げて歌いだす。観客のざわめきが少し。なんだよ俺がソロやってたらおかしいのか?歌詞をなぞって誰かのソロを奪うやつなんて認識なのかもしれないね。それでも俺は普通に歌って踊る。メロディラインが変わると同時に歌詞通りに手を上げて指させばそのステージの両端でレオとセナが飛び上がってステージに登場して俺と一緒の動きをしていく。そのままくるっと回りながら歌えばすぐにサビだ。俺の歌声に合わせてレオとセナが踊る光景がいつもと違って見えてキラキラして見えた。 ステップを踏めば、レオとセナが俺の方に手を伸ばしてる。俺はその手を掴んで笑みがこぼれる。レオに楽しそうだな!なんて言われて歌ってる最中だったから返事代わりに俺はレオの手を強く握ってから離して三人でそろった動きを展開していく。似たようなシンコペーションになるけれど、それでも2番はBメロから、残りのメンバーが出てくる。 俺たち3人で音に合わせて別の方向を指させば重たいシンバルの音に合わせて三人が飛び出した。俺のソロ曲だけれど、振りに対してはソロはない。サビにはいるまでは3人で踊るのだ。サビに入れば6人で踊りだす。が、俺が先頭にセンターに立って踊る。今までの光景にしたら珍しいだろう。 客席からあんまり聞かないタイプの叫びも少し、久々のライブだったりレオとセナと踊れてるのがうれしくて、ファンサービスも熱が入る。嬉しい楽しいを体中で表現してそのまま踊り倒していれば、間奏に入る。コールアンドレスポンスも挟む。ちょっとレオのフリーダムに巻き込まれ俺のマイクを奪ってコールアンドレスポンスをレオがする所もあったけれど、これぐらいの初見殺しなんて、うちではよくあることなのできれいに交わしきる。 楽曲こそユニットには合わない珍しい曲調で、不思議な感じはするけれどこれでダメだったらまた違うアプローチを考えなければならないなぁ、なんて今考えることでないことを俺は考えたが、パフォーマンスに熱が入り考えるなんて余裕がなくなってくる。 歌いながら客席にマイクを向けてを繰り返す。曲間も踊るし歌うし遊ぶしはしゃぐから、俺の体力がガンガン減っていく。それでも楽しくて顔がゆるくなっていく気がする。叫ぶ様に歌う頃にはようやく一曲目が終わる。いつもよりも伸びるように踊れるのが楽しくて、楽曲が終わった瞬間にすーちゃんにとびかかると、ちょっと!と怒られたけれど、いいじゃんね。たまには。ほら。次の曲の持ち場いこう?とすーちゃんの手を引いていけば、はしゃぎすぎーとりっちゃんに止められたのだが、俺は久々に存分に踊れる今が楽しいのだ。ほらほらりっちゃんも!と急かして、近くのファンにサービスしてから、汗かきすぎたのでステージ最前に置いた水筒で水分補給してると、セナに連れ戻された。理不尽。いいじゃんね。そうこうして二曲目が始まる。っていうか、セナに叩かれたのが痛い。 ←/back/→ ×
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