登良となずなと斑。
三毛縞登良は兄の竹を割ったかのような明朗な性格に当てられたが故にすこしひねくれていた。
対面するのが億劫になって、思春期を迎え初めた頃から言葉は端的になった。声変わりもまだ迎えてない喉にも嫌気がさして言葉数が減る。人との付き合いは嫌いじゃないが、いかんせん声が嫌いなので喋りたくない。声にならないため息を吐いて、担任に提出するように書き纏めたノートを持って職員室に向かう。角を二つほど曲がった先で、つい最近知り合ったユニットの先輩がそこにいた。
「お!登良ちん」
「に〜ちゃん」
「日誌?」
ん。と答えて、次は明後日?と問えば、そうだぞ!と返ってきたので登良はそっか。と頷いて、頭に叩き込むために、二度ほど呟きながら頷く。昨日携帯にスケジュールをいれた。と言われて、そんなことあったっけな。と記憶をふるいおこすが、心当たりはない。後で携帯を見ればいいかと、決断し、一つ頷く。
「今度のライブ頑張ろうな!」
「ん。」
「心配事があるならいうんだぞ!」
心配事…。と呟いて考える、悩みはあるが説明も面倒だと想い、「しいて言うなら…」と言葉を切った。兄がうざい。と言いかけたが、言うのを辞めた。どうやってのりきるか、と考えた刹那、がしっと大きな手が登良の頭を撫でた。
「登良くん!悩みがあるなら言う方がいいんだぞぉ!」
「これがうざい。」
「うざいだんて、ママはそんな言い方許しません」
「…面倒」
ママだって傷つくんだぞ!と言いつつ頭を撫でる力が増す。それと比例して登良の眉間に皺が寄る。がそれでも、反撃することもなくただただ、「…面倒」とだけ口を開く。それを聞いて、なずなもあー。と共感の同調をする。言いたいことは察せた。明るすぎてみてるのが疲れるのだと登良は言いたいのだ。むりくりに斑の腕を潜り抜け、登良君はーという自分の兄を一度睨んでから「じゃあ、行くから。に〜ちゃん。またね。」と手を振って一年の校舎の方に向いて歩いていった。部活の最中に登良くんを見つけてな、こっちに来てみたんだが。仕方ないな。と斑は笑ってじゃあと陸上部の方向に走って行った。
案外あの二人の仲はこじれているのかもしれない。と仁兎は考えた。
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