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繁華街を歩きながら、登良は殿を勤めて歩く、ぼんやりと思考は兄についてだった。にぎやかだなぁ。と思いつつ歩いていると、今年は何に出ようかと考えてるらしい。ぼんやりとこうやって歩いてるのもいつか、後継者を継いでしまうとこうやってみんなと歩くのもなくなるのかな、と考えてしまう。考えすぎなのはよくないのだが、んーと考えてると、前の賑やかさが消えていった。疑問符を浮かべながら、友也に追い付く。

「友也、変わる?」
「まだ大丈夫。最近眠れてないみたいだし、無理はすんなよ。」
「あぁうん。大丈夫。……友也。」
「どうしたんだ?なにかあったか?」

もしも、俺が『Ra*bits』から居なくなったらどうする?そう問いかけようとしたが、うまく喉に張り付いて言葉が出てこなくなった。どうした?と聞かれて友也が振り向いた。瞬間にあわてふためいた。登良、どうした?何があった?お前泣いてるぞ!と言われて登良は自分の瞳から涙がこぼれ落ちているのに気がついた。

「なんで?」
「それはこっちがなんでだよ、登良!。」
「友ちゃんなにかあったの?」
「登良くん、どうしたんです?」
「う、うん。大丈夫。」

すぐに泣き止む。と言えど、涙が止まることを知らずにボロボロとこぼれ落ちてくる。ぐしぐし服の裾で擦り上げると。光に擦り上げてた腕を取られる。どうしたんだぜ?いつもの登良ちゃんとは違うんだぜ?そこまできて、自分のメンタルが異常をきたしていると自覚をした。ふるふると首を振ると、何でもないわけないだろ登良。と友也が声を上げる。思った以上の大声が出て、登良はびくりと体を震わせて友也を見上げる。

「ごめん、でも、どうしたんだ?」
「動揺した。」
「……ふぁっ?ごめん、おれ寝てたな。って、登良ちんどうした!?なにがあったんら!?」
「なんでもない。今まで黙ってたことを話す、でも、時間がほしい。それまでに言いたいこと全部考えるから仕事が終わるまで一人にしておいてほしい。ごめん。」

ゆるゆると首を振って、登良はそのまま、走り出した。なにがあったんだ?と友也が首をかしげて、最近確かに様子が可笑しいですよね。と創が言う。光はただただ疑問符をつけて、登良の背中を見つめている。なずなはそんな一年生を見ながら、もしかして、と口に出す。に〜ちゃん、なにか知ってるんですか?と創が問いかけるが、いや、さっき言ってた斑ちんのやつかな?と首をかしげる。三毛ちゃん先輩?と聞かれて、ハッとして勘違いかなと言いつつその背中を見送る。考えすぎなのもやっぱり問題だな、となずなは小さくなる背中を見つめて、あくびを一つこぼす。四人は話をして、バスに乗る選択肢を選ぶので、光がすぐに追いかけてバスに乗るから!と引っ張ってくるのだった。
引っ張られるようにしてバスに乗り込んで、登良は一人離れたところに立って、ぼんやりと考え事をする。本当にこのまま続けるのが有益なのか、いつか後継者となったらどうなるのだろう?姉妹校は吸収合併されてなくなって来ているというのに、何をしろと言うのだろう。万が一、なんていつくるのだろうか。兄の考えが読めなくて、鞄から書くものとクリップボードを引っ張り出すと、片っ端からガリガリと連立するように単語を全部書き上げてまとめる。そこから必要なものを拾い上げて紐付けさせていく。それらを見つめて、登良はペンを持ち変えて、次々に塗り足したりして文字を作り上げる。どれだけ同じことを書いても、結論は先程から変わらずそろそろ腹を決める頃合いなんだろうと息をつく。考えたいことは考え終わると、バスは目的地についたようだ。降りるぞ、登良ちん。と言われて、登良はうん。と小さく返事して一番後ろを歩く。

「大丈夫か?登良ちん。」
「大丈夫だよ。今後どうするかみんなで決めたい。に〜ちゃんも参加してほしい。に〜ちゃんも『Ra*bits』だから、俺が兄の後継者の知恵を得るか得ないか。」
「斑ちんの後継者?」

なずなは首をかしげる。それでも登良は言葉を続ける。
あの兄は人を壊す。壊れるまえに俺は逃げるべきなのかわからない。壊れてるかもわからない。ただ、さっき俺は自分で壊れかけてると自覚したから考えてる。でも、いつか『Ra*bits』のためになる知恵なら、持ってて損はない。でも、得かもわからない。わからないから踏み込めないのに次から次に外国語や企画書の課題が片っ端からやってくるのだ。それが片付かない、それが負担となって私生活にやってきて、こうして影響を与えている。

「登良ちん、そんなことをやってたのか!?」
「みんなのために必要だと思ってた。でも、わからない。」
「登良ちんは考えすぎだって、おれが一番知ってる。それでも、今回みんなに相談するところまで持っていって偉いぞ!」
「……そんなことない。もっとちゃんとしてたら、あの兄の対応を全部対応しきって、こうして途中で涙をこぼすこともないよ。」

持ってたらいいスキルも悪いスキルも今は全部俺の中に入っている。それを取捨選択するほどの余裕はない。体力もメンタルも限界に近い。そろそろこの習得も終わるだろうけれど、どうするかはみんなで決めたい。そう言って、登良は黙って歩きながら思考をねじり曲げて整える。まず、おそらく話すよりも前に、決めること、進めることはたくさんある。今日の仕事が終わったら、朔間さんと兄と話をつけなければと考えて、ポケットから携帯を取り出す。夜に勉強があるということは兄の時間は確保できるだろう。迷うことなく登良は自分の兄に連絡のために今夜朔間さんのところに集合。それだけをメールで送ればすぐに返事はやってきた。登良はいつもの変わらない表情を浮かべてとりあえず仕事ですから。となずなに笑いかけた。スタジオはもうすぐだった。



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