2






そしてこのあとこう続けるつもりだったんだろう。『Trickstar』の革命を正しく、今度こそ完璧に成就させるために、自分の仕事を手伝え〜ってさ。
そういう交渉術だ。と言いながらやれやれというように首を振る紅朗を見て、登良は兄に視線を向けると、流石だなぁ。なんて言いつつカラカラ笑う。どうやら本当にそうだったらしい。戦争のいろはを知らない登良くん以外の一年生や大半の二年生には効果的なんだけど!なんていうが、まぁそう言い出すのは兄のいつもなので、そういうことなんだろう。と納得して視線を落とせば、紅朗は弟を巻き込むんじゃねえと怒っていた。……関節決めるののはいいんだけれど、折らない様に気を付けてください。と登良は言葉を足せば、斑は大丈夫だぞお!登良くんのお兄ちゃんはどうこう。と言い出すので、諦めて登良折ってください。そう言い切った。そうだ。この兄は腕一本折れたって平然と笑って居そうな気がした。

「俺は『ソロユニット』だしなあ。孤高に戦ってそれでも勝利するためには使える手はぜんぶ使うぞお」
「えっと…?」
「すいません、兄が…」

失礼なことを言って。なんていう前に斑は本気で言ったわけじゃないからと、言うがたぶんそうじゃないだろうと登良は思った。生まれてからずっと前を歩いている男が何を考えているのかなんていうのは登良にはわからない。

「冗談?そうは思えなかったぞ。」
「うん、すごく嫌な感じがした。」
「嫌なことを言うのが趣味だからなあ!というのも冗談。実際、外から見ていると君たちの事がよく解らないんだよなあ。流されて翻弄されていたら、たまたま運よく価値を拾ったようにしか思えない。だから一回、一緒に仕事をして実力や思想を見定めたいんだよなあ。話が大きく逸れていたけど、俺の今の目的とも一致してるしなあ」
「どこまでが冗談なんだか。」
「おやあ?登良くんは自分が構われなくて不機嫌かなあ?」

そんなわけないでしょう。大将、話がそれてるんで戻しましょう。兄を無視して、紅朗に投げたらお前ら兄弟間こじらせすぎだろ。なんてこぼす。それを聞かないふりしていると、スバルは斑に目的を問いかけた。目的は仕事であると言う。ソロユニット『MaM』の活動が評価されて人脈や実績が出来て資金は用意するから仕事をしてくれと言われたらしい。そして内容も決まってないから仲間を集める所からだ。というので、もしかして。と登良は思った。今回こうして集まっている面々は兄の仕事をしたい人物じゃないかと。そう思うと一瞬にして嘘でしょ…ありえない。とも思えた。創と友也が慕っている先輩と同じ舞台を踏むだなんて。胃が痛くなってきた。少し主張をし始める意を抑えながら、俯く。…どうしよう、下手したら創と友也に殺されるかもしれない。そんなこと無いとは思うのだけれど、いやあるかもしれない。うわぁ…どうしよう。
ぐるぐると創と友也に合わせる顔がない。どうしようと思考を巡らせる。考え込みすぎて気持ち悪い気がしてきた。かんがえるなとおもえど、どうしても思考はそっちに寄っていく。

「お前考えすぎんなよ。まぁ、いいや。さっき神崎と菓子を作りながら話してたんだけどさ。うちの蓮巳が個人的に抱えてる案件がある。」

新選組がどうとかいう、町興し企画らしいんだけどよ。
斑には人脈と資金はあるけれど、中身も決まってなく『ユニット』を探している。紅朗は内容が決まってて『紅月』は出る。マッチングできないか?と彼らは言う。そして斑は仕事用に登良を欲した…。……『紅月』と仕事……。脳裏に【DDD】が始まる前の、初めてのライブが頭の中によぎった。あれやこれやと思考を回していることに気づいてか斑は登良に声をかけた。

「登良くんにもお手伝いして欲しいんだなあ!」
「昼間の明るいところでやるライブだし、周りは同学年は居ない。いい経験になるだろう?」
「でも…。」

まわりは話題に富んだ人物ばかりだ。学院ナンバー2と学院の革命児、それから問題児の兄。そこに話題性も乏しい自分で評価が下がりはしないだろうか、揚句に『Ra*bits』に迷惑が掛からないだろうか。色々と一瞬にして逡巡する。

「俺で、周りの評価が落ちないなら…」
「なずなさんからも、否が応でも出してくれ!と言われてたのでなよかったよかった」
「登良も出るんだな。それはよかった。まぁ、良い返事を期待して待ってろ。今日の内にでも、あいつを説得しに行くからさ」

そういって紅朗は歯を見せて笑い心配すんなと登良を笑った。



[*前] | Back | [次#]




×