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確か、体育倉庫にいたはずだったと登良は記憶していたのだが、この現状は何なのかと首をかしげた。

「登良くん、ごめんなさい!僕が確認してなかったから!」
「いや、俺も気付いてなくてそこまでちゃんとお前が暗いのがダメだって知らなかったから!ごめんな登良!!」

…なにがどうなって、目覚めたら両隣で泣いているのか全くわからなかった。どうしたの?なにがあったの?と声にするまもなく保健室に光が飛び込んできた。光に状況説明を求めるために声を上げたのだが、それよりも光の声が大きくかきけされた。

「登良ぢゃん、死んじゃうかと…!」

光が涙を泣きそうになりながら登良の足元でわんわん泣き始める。二方向だけと思ってたが、どうやら三方向だったらしい。左右を創と友也、正面膝上に光を乗せて、登良はどこから対応していいか考える。誰を最初にして最後になるのだが、後日俺が最後だったから。も言われると優先度が。と様々な事が浮かんでは消えてそして、わたわたと慌てる。誰に聞いてもわんわん泣くだけで、夢なら覚めてと内心願いだした頃、ついたての間からなずなが顔を出した。

「あ、登良ちん、もう大丈夫か?」
「に〜ちゃん、状況が全くわからないんだけど。助けてぇ…」

ほら、みんな。登良ちんが状況理解してないから。一旦離れような?。声掛しつつぐずぐず泣いている三人を、なずなはむりやりひっぺがしてからほら、と手近なところから椅子を人数分出して、座るように促す。

「登良ちんはどこまで覚えてるんだ?」
「んっと……体育倉庫で、閉じ込められて……ぐらい…?」

じゃあほぼ最初だな。6時限目に、体育の準備でおれと紅朗ちんで体育倉庫に入ったら、気を失ってる登良ちんを見つけて、慌てて保健室に詰め込んだんだけど……それだけ首をかしげてたら大丈夫そうだな。まぁ、登良ちんの顔色も良さそうでよかったよ。

「登良くん、ぼくが体育倉庫の鍵を閉めたんです。登良くんが見えなかったので、本当にごめんなさい。」
「俺死んでないから、大丈夫だよ?」

そりゃあ怖くて白骨になるんだろうなとか考えたけど。今は外に出てるし、ねぇ?恐ろしく前向きなんだかネガティブなんだか。自分のコンディションぐらい自分で管理しますよ、突発的なトラブルさえなければ。そういうところ斑ちんと似てるよなぁ。ですか?登良ちゃんと三毛ちゃん先輩はそっくりなんだぜ。…嫌だ、訂正して光。
やんややんやと五人で笑いながら話していれば、そっとあんずが顔を出した。登良くんが倒れたって聞いたんだけど?。そっと伺うようにパーテーションの間から顔を覗かせたので、泣いていた創も友也も光もぴたりとそこで動きを止めた。

「あんず先輩?」
「登良くん!よかったー安心したよー。あ、もしかして『Ra*bits』みんな揃ってる?」
「はい揃ってます!みんな俺のお見舞いだそうです。」

ちょうどよかったー。今ね、『Ra*bits』にお仕事持ってきたんだけど。みんないるんだね。よかったよかった。なんて言ってから背中に隠した企画書を取り出して、口頭で効果音をつけて前に付きだしたので、代表してなずなが企画書を受け取り音読する。

「なになに。暗闇ライブ?…え?ちょっとこれは…」
「ライブですか?いいですよ。やりましょう?」

ちょっと登良ちん!暗いのがダメだって!まぁ嫌いですしあんまりそういうところに身を置きたくはないですけど。
考えながらも登良はなんとか仕事を出来ないかと考える。『Ra*bits』の指名となるのだから断る理由はないと登良は主張した。

「暗闇って、登良ちゃん大丈夫じゃないんだぜ?」
「でも、光も創も友也もに〜ちゃんもいるから大丈夫だよ?むしろ、なんで断ろうとするの?」

こてんと首を傾げると、友也はだって。と言葉を濁らせるので、登良はまっすぐ友也を見つめて、どうして?そう問いかける。俺はたくさん迷ってみんなに手を引っ張られて歩いてるけど、そこは好きか嫌いか行きたくないか行きたいかは俺が決めるの。誰にも決めさせないよ?とその目は語りかけてるようだと友也は思った。そして、こう言いだしたら頑固なのも知っているが気を失うほどの嫌いを抱えて登良は嫌にならないのか。逆に問いかけようとしたら、なずなが登良ちんがそういうならば。なんて可決を発した。創と光が驚きの声を上げれど、登良は静かにニッコリ笑っていた。



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