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ライブの詳細を聞いた翌日、学校が終わったあとにあんずからもらったチケットを使ってみんなで現地の確認にきた。はじめての場所でもあるので、どんな舞台になるのか想像が出来なかったのもあったのが一つの理由だ。昨日の雨が嘘のように晴れて、水溜まりひとつ無いスッキリとした晴天である。光が元気よく走り回るのを友也がとめる。創は嬉しそうにあちらこちらを見回しながら、登良の横を歩いている。

「登良、創を見ておいてくれよお、光が迷子になっちゃわないよう目を光らせてるのに、創や登良の面倒まで見きれないぞ?」
「大丈夫だよ、ちゃんと後ろをついていくから安心してよ。」
「頼むぞ、登良!」

まかせて、と返事をすると友也は光を追いかけていった。そんな背中をみながら、創は感動しているので、登良はそれに相槌をうちながら最悪光の首根っこを掴むタイミングをも測っておく。瞬間火力は光よりも登良の方が早いのだが、すぐに失速するのだ。なずなは全員に釘をさしながら、まぁちょっとだけなら、と溢しているので、登良と創はあとで何に乗ろうかと、パンフレットを二人で眺めながら、あれやこれやと相談しつつ今回の目的のステージを目指していると、ふとなずなが足を止めてあれってあんずたちじゃなかいか?というので、パンフレットから目線をあげると、確かにあんずだった。おーい、となずなが手を振るとむこうもこちらに気づいたらしく、手を振り返してこちらにやってきた。友也に声をかけて戻ってくるように伝えると、光に引きずられて友也たちも帰ってきた。

「こんにちは!」
「ひなたちゃん?それともゆうちゃん?」
「こんにちは、ゆうた。」

あ!今オレが答えようとしてたのに!と光に怒られたが、登良はごめんね、と笑いながら交わす。登良くんは間違えないよねぇ恐れ入るよ。とカラカラ笑って言う。そんなところに、光があんずのね〜ちゃんとデート?なんて疑問を投げる。登良は、そうなの?とあんずに問いかければ、にっこり笑ってるし、ゆうたは違う違う!俺達は下見にきただけだから!とあわてて取り繕っている。ねっ?とあんずに話を振ると、あんずも真っ赤になっているので、登良は顔を青くした。いや、デートだったら否定出来ない。お邪魔したかも!とジャッジを下す。早くこの場を去るべきだ、と脳が処理をするのだが、自然に見せけてんお移動なんて登良には出来ない。わたわたどうしようと全員の顔を見たが打開するような一点すら見つけられない。どうしよう、が頭を巡りだして一杯になりそうになっていると、あんずははははと笑いながら登良に話しかける。

「今日とても日差しが強くて暑いね!」
「ふぇっ、このへん遮るものがないから日差しが当たって暑いですよね。」
「登良くん、顔色真っ青だけど、大丈夫?」
「あっ、いや、だいじょうぶ、です。はい。」

……どうもデートじゃなかったらしい。杞憂に終わってよかった、と一人ほっと胸を撫で下ろすと、ゆうたと目があって登良は苦笑を浮かべると、ゆうたは登良の耳にひっそりと言葉を囁く。もしかして俺とあんずさん。デートだと思った?ひっそり囁かれる言葉に、すぐさま一度頷く。変に気を使わせてごめんね、とゆうたが言うが、登良は勝手に思って勝手に判断しただけだから気にしないで。と眉を下げた。

「それより、『Ra*bits』も【ライブパーティー】の下見ですか?皆さんも出演するってあんずさんから聞いてますよ〜」

同じライブに出る者同士、仲良くしてもらえると嬉しいです!ゆうたが言えば、なずなもよろしくと笑顔で挨拶を取り交わして話し込もうとするのだが、光がなずなの袖を引いてはやくジェットコースターに乗りたいと声をあげた。登良は、光。まずは下見。と嗜めた。が、なずなが気をきかせて、お前たちは遊んでくるか?と声をかける。そんな言葉に反応して、光は目を輝かせ、登良の腕を掴んで走り出す。

「創ちゃん、友ちゃん、あっちにたくさんアトラクションがあるぜ!登良ちゃん、乗り尽くしちゃうんだぜ〜!」
「光、早い!減速!」

ぐっと首根っこをつかみ返して、光の速度を落とす。友也は登良の光の動かし方に感心しつつ、たぶん自分では出来ないやり方だと思いながらそのあとを追いかける。創は待ってください〜と声をかけてから、創はゆうたを見た。

「葵くんもよければどうですか?一年生どうし、交流を深められたらいいなって、思ったんですけど?」
「お誘いは嬉しいんだけど、下見をしないといけないし。」
「そういえば、ひなたくんは一緒じゃないんですか?」
「今日はちょっとね、」

俺一人で遊園地を楽しんだりしたら、アニキが五月蝿そうだし。遊ぶのはやめておいた方が良さそうだ。そう創に告げると、なずなが一緒にどうだと声をかける。一緒にステージに立つわけだし、あれこれ相談できると助かる。というので、ゆうたはそれに乗っかってぺこりと頭を下げる。創はじゃあぼくたちは行きますね!と声をかけて、創は光たちのあとを追いかけた。



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