20220228 HPB!!





誕生日祝いの企画もおわって、登良はほっと胸を撫で下ろした。
一人で番組に出るなんて初めてで、ゲストとして出てくるのはユニットのメンバーや顔見知りの人であれど、企画を回す進行役も登良自身でやることになっていて、前から練習すればよかったとひっそり後悔していたからだ。舞台袖をはけて、事務所に帰る道中どこからともなくひょっこりと大きな箱を持った奏汰が顔を出した。

「とら
「深海先輩?どうしたんですか?大きな荷物……どこかに運ぶならやりますよ。」
「だめです。これは『ごろつき』からとらの『たんじょうび』だときいたので、『ぷれぜんと』もってきたんですから」

……俺の?
言葉とともに差し出された箱を受け取る。重たそうにも見えたのだが、箱は軽すぎて驚いた。ノートを立てたような大きさのそれは、何だろうと振りかけたが、いやいやそういうのは良くないと自制心が生まれて、辛うじて踏みとどまって大事そうに抱えた。

「『じむしょ』であけてくださいね。 」
「はい、そのとおりに。ありがとうございます……あの、深海先輩も開けるときご一緒してくださいませんか?」
「えぇ、もちろん。あなたもかわいい『ぼくのこ』ですからね。あぁ、むかしみたいに『かにゃくん』とよんでもいいんですよ?」
「いっ、いくつの話をしてるんですか!!もうそれ兄から聞きました!」

兄曰く、言葉も少し覚えるようになった頃の話だ。登良にそんな記憶もなく、親の決めた役目のことも知らずに兄と奏汰の後を舌足らずな言葉を出しながら追いかけるような、年端も行かない子どもの頃の話を引っ張り出されて登良は声を張り上げたが、奏汰は気にせずそのままニコニコ笑顔を浮かべている。

「きがついたら、ぼくのことを『かみさま』としてよぶようになっていますし。」
「すみません……えぇっと……か、なた、せんぱい?」
「なんですか、とら?」
「頂いたプレゼント、早く開けたいので、事務所に急ぎましょう!」

利き手で荷物を抱え込み、空いた手で奏汰の手を引く。強く手を引かれた奏汰はクスクス笑ってその勢いに従いながら、二人でリズリンの事務所に向かう。
二人ではしゃぎながらプレゼントを開けるのだが、その中身が生きた魚であったため、慌てて近くに居そうな羽風と神崎を呼び出してリズリン事務所は瞬く間に阿鼻叫喚の地となったのは、違う話で語られる。。



[*前] | Back | [次#]




×