20180708 青葉ゆらぎ誕生日話。 





日曜日俺は校内バイトの振付を考えるために登校する。『Switch』はお休みらしく今日は俺一人でぼんやり登校。適当にパンを購入してから学校に入ると、あんずが青葉先輩これ急な仕事なんですけど!お願いしてもいいですか?そういって差し出されたのは分厚い束の急ぎの書類らしい。締め切りを聞くと今日の夕方。中身を見てもどうしたって一日かかるような内容だった。

「いいよ。振付の締切には余裕あるし。」

そんなことを言ったのは6時間ほど前だった。俺は今、三毛縞と守沢に誘拐されている。小休憩に出かけるために杖をついて、部屋を出た瞬間に今だ三毛縞さん!という守沢の声と真っ暗な視界。いや、まって。なにこれ。そのままぐっと担がれてる。杖を倒してわたふたしてる間に足が浮いてるし腰回りに手が回って腹に圧迫感。それから加速感。角を二つほど曲がってようやく俺の思考がまともになりだした。

「しばらく大人しくしておいてほしいなあゆらぎさん!」
「三毛縞、なんだこれ!?」
「青葉、暴れると落ちるぞ!」

いや、暴れる要因作ってるのお前らだけど!?そのまま叫べば三毛縞はわははは!と笑っているしなんだこれ!?誰か説明して!!そうこう叫んでいるうちに三毛縞達は目的地についたらしく、俺は降ろされた。三毛縞なんだよ!っていうか俺の杖は!抗議してたら守沢が拾ってくれたらしい。ありがとう。と礼を言うが連れ去りについては俺は文句だらけだ。

「ゆらぎさん、ひとまず先にここに入ってほしい。」
「は?休憩に購買に行こうと思ってたんだけど」
「ひとまず入ってくれるだけでいい。」
「いや、はいそうですか。ってなるかよ」

いいから!入ってみるとわかるぞ!と背中を押されるので、俺はあきらめて促されるまま部屋に入る。小さな会議室正面奥に俺のユニット『Diana』のロゴとイメージカラーの薄い黄色で塗られてた。ぼんやりとその光景を見てると、あんずとつむぎくんがやってきた。

「ゆらぎ先輩っ。」
「ゆらぎくんお誕生日おめでとうございます!」
「……誕生日……」

ぽつりと言葉を出せば、今日ですよ。と7月8日。と言われてあぁ誕生日だったっけ。と思い出す。誕生日ってろくな思い出ないんだよな、と思っているとつむぎくんがあんずちゃんお手製のケーキですよ!と持ってくる。フルーツいっぱい入ったケーキはちょっと背の高いケーキで、ガラガラとワゴンを転がしてやってきた。

「母親からゆらぎくんの誕生日はあんまりいい思い出がないとは聞いてますから、今日はたくさん呼んじゃいました!」
「呼ぶ?」

えぇ、この人とこの人と。と指折り数えていくのは俺がよく振付しているユニットばかり。羽風とかもカウントに入ってて笑う。どれもこれも俺とそれなりに知り合ってる人なのできっとこれも俺が4年間夢ノ咲でつないだ縁なんだろう。人の縁は奇妙で結局自分に帰ってくるのだ。仕事であったとしてもそれは付き合いなのだろう。まぁ、二つも年上になってしまう俺にはゆかりもない話だと思っていたのに、こうして誕生日会的なのを開いてくれるのがちょっとうれしい。あいつらとはこういうことしなかったしなぁ。と思い返していると入り口から三毛縞の大きな声が聞こえる。視線を向けると地を割るほどの大きな音を鳴らして三毛縞とクラスメイト達が立ってた。

「ゆらぎさん!ママからのいや、3Aからのプレゼントだあ!」
「うわぁつ!」

クリームいっぱいの皿が俺の顔めがけてまっしぐら。俺はなすすべなくそのクリームを甘んじて受けることになる。三毛縞の時には失敗したんだよねぇ。と意地悪そうに楽しげな顔をしてる瀬名、入り口でおなかを抱えるほど笑っている天祥院、むすっとした蓮巳とお嬢さんにクリームが飛ばない様に目を吊り上げてる斎宮。追撃をかけてくる守沢、悪乗りして第三波の羽風、もう周りが楽しんでるからなんでもいいです。といいつつも、俺は両手いっぱいにクリームをかき集めて笑ってやる。

「ゆらぎくん?どうしたんですか?」
「羽風、三毛縞。守沢、瀬名。やっていいのはやる覚悟を持ってるやつだけだよ!!!」
「俺そんなこといってもやってもないんだけどぉ!?」
「連帯責任じゃ!!喰らえ天祥院!!今こそお前の息の根を止めてやる!!」
「ゆらぎくんほんとに止まっちゃいますよ〜」
「いいよ止まれ!ちったあ俺も浮かばれるよ!!」
「それって青葉くん死んでない?」
「お前も殺して俺も死ぬ!自分の運命ぐらい自分で救ってやらあ!」


勿論余ったクリームは最後みんなでおいしくいただきました。



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