俺と不羈!女神のトラブルライブ 1 





梅雨も開けて夏が足音を鳴らし出す頃、授業が終わって昼休み。学校に来る途中で買ったパンをかじっていると、瀬名に栄養バランスがと叱られて守沢からフライドポテトを頂戴し、羽風と海について話していると、とんでもない音を立てて、あんずが走り込んできた。漫画みたいに横スライドでブレーキかけて大きな音を立てて扉を開けた。ガン!と鈍い音出してドアぶっ飛んだんだけど。おいおい、無表情プロデューサーさんよ、なんだよ。お前そんなパワフルにしてていいのか?なんて思う。俺と目があって、駆け出してきた。お前怖いんだけど!!

「ゆらぎ先輩!ご指名入りましたっ!!」
「……へ?……」
「指名?」

はい、新しいライブ会場が出来るらしく、そこのVJさんが幻想的な映像を得意とする人らしい。柿落としのためにそこでライブを行うならば、幻想的なのと民俗特化でやりたいという申し出で『Diana』に。、どうも俺にお鉢が回ってきたらしい。いや、俺一人で呼べると思ってるのか、っていうか資料が二年前なんだけど、事故前なんだけどさ。あんずが目をキラキラさせて、どうですか?と問うように俺を射る。

「っていうか、資料が二年前ってありえなくない?」
「そうそう、そういうところってだいたい最新の資料を持ってくるもんだよ。」

俺の手から資料が消えた。消えてった方向を見ると瀬名と羽風が興味深そうに見ている。絶対に怪しいよぉ。止めときなって。とぺらぺら書類を捲りながら瀬名が溢す。芸能界に慣れてる瀬名が言うのだから、間違いないんだろうけれどと俺の視覚に見覚えのある文字が目に入った。あいつらの事務所の名前。俺を来年殺すだなんていった、元メンバーというか、卒業していった『Diana』のメンバーが所属している事務所の名前が見えた。……あいつら、本気かよ。と俺が小さく呟く。牙研いで待っているとか言うのに、あいつらようやくうごきだしたのかよ。と俺は思った。まぁ、事務所の力を借りなきゃいけないぐらいのだから、とぼんやり俺は思考する。

「なんだか、不思議な依頼なんですけど、大丈夫ですか?というより、受けてください。どうも先方は『Diana』が見たいらしくて、それ以外は自由に決めていいから。と仰ってて……」
「はぁ?なんで、『Diana』なの?『Knights』でも問題ないでしょ?」
「ペナルティ食らってるだろ。お前は。」

【DDD】の一連について俺はなにも言うつもりはないが、俺は思考する。あんずやるよ。ただし条件だ。お前に頼むのはメンバーと衣装それからアドバイスだけだ。と告げると守沢に驚かれる。どうしてだ、と詰められるが、いままで俺のやって来たことは一人でやって来たことだ。今回メンバーも自由にしていいと言うならば、楽曲から何からなにまで俺の自由にしてやろうと決める。

「プロデューサーが居るのに、どうしてそんなことを言うんだゆらぎ!」
「前に三毛縞とライブした時にはしっこにメモを一杯書いてたりしたろ?。」

俺が今回全部揃えて並べてやる。繋いでやる。どうせ俺だって今年までだ。来年のことも見通して、お前に遺産をあたえてやるつもりだ。ちょうどいい機会だよ、形見分けってやつかな。カラカラ笑ってそう言うと、あんずがすこしムッとした。お前にプロデュースしてもらいたくないとは言ってない。
お前は一人だ、でもユニットは星の数ほどいる。あんず一人で見れる数だって限度がある。今後自分の手が回らなくなって委託するってなった時に、頼む先がなかったらどうするつもりだ?徹夜でやったっていいことないぞ?俺はお前に、あんずに期待してんだよ。ここを替えたやつだからな。まぁだから、俺からの教えやノウハウを受けれるところは甘んじて受けろ。そして俺を越えてくれ、プロデューサー。

「青葉落ち着きなよ。」
「お前よりプロデュースはやってたんだよ。一人で派閥のように動くから、一閥。って言われてんだけど。俺の実力みせてやるよ。」

盗めるもんは俺から全部盗んでけ。そう伝えると、不満げに彼女はわかりました。と言う。あ、でも、打ち合わせの時には俺の横に念のための立っててほしいかな。時代が変わってるんだから俺とは違うやり方だってあるだろうし。と言えば、あんずは嬉しそうに笑った。こいつ、犬だ。しかも小型犬。投げられても投げられても尻尾振るタイプ。と思ったが口には出さないでおいた。

「メンバーどうしましょうか!青葉先輩!」
「んーあー『fine』以外ならどこでもいいけどなぁ。オススメない?」

そんなのありませんよ。募集でもかけますか?んーでもなー、つむぎくんにばれたら面倒だから、つむぎくん以外で。
そう伝えたはずなのに、メンバーにしれっとつむぎくんが入ってるのだからおい、あんず、訴訟だ。おい、外せって言ったのに何でいるんだよ。つむぎくんよぉ。見つかった瞬間、俺と顔合わせした瞬間にしこたま起こられた。ひでぇ。ひどすぎる。そしてあんずの意趣返しなのかわからないけれど、その日のうちに『Diana』『Switch』『Ra*bits』の3ユニットライブが決定した。一年生4人、二年生1人、三年生3人。バランス悪いな。いいけど、俺大丈夫か?って思うんだけど。まぁ、いいや。絶対に成功させてやるよ。と心に決める。



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