俺と跳進!夜明けを告げる維新ライブ 3 





「革命を成し、君たちはすべてを変える権利を得た、なのにその権利を放り出し、浮かれて飛び回っている。かつての『五奇人』と同じように。」

探るような三毛縞の目線が氷鷹を見た。あ、喧嘩売りにいってるな、とか客観的しつつ、どっかで止めるところを計っておこうと聞き耳をたてる。
あえて問おう、君たちは何をした?生徒会に挑み、彼らが築き上げた牙城を破壊しただけだろう?政治家でも思想家でもない、単なる爆弾は歴史書に名が残らない。今のままでは、君たちはそういう単なる事象として、事故として記録され、あっという間に忘れ去られて政治の実権を握ったままの生徒会によって歴史は築かれる。何もかわっていない、外から見れば君たちなんかいても居なくても同じだったなあ。

「三毛縞。やりすぎだっての。事例だって事故だって、小さくは歴史に残るさ。ま、マイナーな部分にはなるだろうけどよ。明星も氷鷹も転校生もさ、怖い顔すんなっての。まぁたちの悪い煽りが旨いねえ。零…朔間を見てるみてえだわ。」
「さすがは朔間の肝煎りだな、煽るのは一丁前じゃねえか」

凍っていく空気を、やわからーく解くように俺は、なー。と気の抜けた相づちを打つ。昔からバランスと辻褄を合わせるのだけは得意でね。三毛縞がムチになるなら俺は飴にならざる得ない。思考誘導とか使いやがって、と思いつつ俺は神崎にお茶のおかわりをせがむ。底に多少残してるので、あつあつにならない。嬉しい。

「『Trickstar』の革命を正しく、今度こそ完璧に成就させるために自分の仕事を手伝え〜ってさ。そういう交渉だよ。蓮巳もよくやる手だ、あいつあ下手くそだけどな」
「あれは人がよすぎる。」
「さすがは一閥だなあ、百戦錬磨経験豊富な三年生が近くにいるとやりづらいなあ、戦争のいろはを知らない一年生や大半の二年生には効果的なんだけど!」
「場数が違うね。一昨日こい、つつき方が温い。」

お前はどっちに味方してんだと鬼龍に睨まれたが、俺は俺だけの味方だよ。と笑って過ごす。だって、俺は来年のこの時期にはただの一般人に成り下がってる可能性もあるわけだしー。よそのユニットなんて面倒見てれないっての。

「俺も『ソロユニット』だしなあ、孤独に戦ってそれでも勝利するためには使える手をぜんぶ使うぞ。」
「戦争なら俺もそうするだろうけど、降ってこない火の粉の心配なんてするだけムダ。」

しばらくは、俺も活動資金ためてのんびり平均の成績納めるぐらいにしようとおもってるし。三毛縞はジョークとか言ってるけど、どこまで本気なのだかわかんねえから怖いっての、本気で言ったんじゃない。とか言うけど多少下心はお前は。嫌なことをいうのが趣味とかお前も人がわるいっての。

実際、外から見ていると君たちのことがよくわからないんだよなあ。流されて翻弄されていたら、たまたま運よく勝ちを拾ったようにしか思えない。だから一回、一緒に仕事をして実力や思想を見定めたいんだよあ。話が大きく逸れていたけど、俺の今の目的とも一致してるしなあ。

「目的って?」
「お祭りだ。あぁ、君たちに流に言うと仕事だなあ。これまでの『MaM』の活動が評価されて人脈や実績などができて、資金などは用意するから、今度はおおっきな仕事をしてほしいと頼まれたんだよなあ。」

具体的な内容は決まってないから、まずは仲間を集めようと思っている。適当な子を手当たり次第に勧誘して内容はその子達と相談しようって考えたわけだなあ。ライブをするならゆらぎさんに手伝ってもらって、それからあんずさんとそのお気に入りである『Trickstar』に『ちょっかい』を出したわけだ。追いかけっこの途中で紅朗さんも見つけたからついでに組み込んだけど。なにをするかなぁ。楽しそうな口調のわりに、なんかあんまりな感じがするけど。ほら、鬼龍が馬鹿にすんじゃねえと。怒っている。そりゃあ、誰だってついで扱いされたら怒るわな。

「まぁいいや、さっき神崎と菓子を作りながら話したんだけどさ。うちの蓮巳が個人的に抱えてる案件がある。新撰組がどうとかいう町興し企画らしいんだけどよ。」

三毛縞。てめぇは人脈と資金があって、具体的な仕事は未確定で参加する『ユニット』も勧誘中。こっちは内容が決まってて最低でも『紅月』は出張る。
なんかタイミングよすぎない?朔間の後継者の三毛縞だからこそ、俺は怪しむべきだと思うが、まぁ、あのメガネのことだし、悩んで抱え込んでるから助けれるなら出たい。っていう、マッチポンプ。ビジネス的な用語を言えば、ウインウインの関係とかってやつだけど。さぁね、俺はしらね。まぁ、仲良きことはいいことだよな。普通は。そう、普通は。うん、俺のとこがおかしいの知ってる。

「ともあれ、こっちの案件と、三毛縞の案件。上手に噛み合ってひとつになるんじゃねえのか?」
「ま、俺も踊る場所くれるってんだから、『Diana』は協力はするけどよ。」
「三毛縞よぉ、てめぇのことだから、どうせこの展開は織り込み済みだろ。だから、俺に声をかけたんだ。違うか?糸を引きやがったな、てめぇは耳が早いし、朔間と同じで方々に人脈があるから情報も集まってくる。別に隠してもいねぇんだろうし、蓮巳の抱えた案件についても把握してるはずだ。」

相変わらず、考えなしの馬鹿に見えて姑息に策を巡らせやがる。やれやれと言わんばかりに鬼龍が首を振った。三毛縞も笑いながら、抗争を経てもほぼ無傷なんだよなあ。今はそんなふうにずる賢く立ち回らずに、若気の至りでがむしゃらに戦うべきだったと思ってるけど、死に時を見失った。何かが出来たはずなのに物語に深く関われなかった。ずっと後悔している。ともおあれ、俺には何の損もないからなあ、『紅月』と組んで一緒に仕事をするのも吝かじゃないぞお。
三毛縞は去年の話をしているが、俺は去年の話なんてそんなに知らない。足のリハビリと、最低限の点数をとるためのレポート提出とユニットの後方支援しかしてないので、ほぼほぼ学校には来てない。そんな間に、五奇人と生徒会とドンパチしてたのはつむぎくんやアイツ等から聞いてたけど、まぁ、詳しくは知らないので、口は出さない。出したらややこしくなりそうだし、やぶにつつきたくないし、つつかれたってろくなもんは出てこないし、出さねえっての。

「あいつがどれだけ嫌そうな顔しても、俺が『うん』って言わせてやるよ。あいつは俺よりずっと頭も回るしな、理屈を説明すりゃ納得するだろうぜ。」

つうか、あいつは結局善人だし、押しに弱ェからな。俺ぐらいの気遣いの足りねぇ乱暴者が『いいから黙って従え』って強く言えば首を縦にふるさ。まぁ良い返事を期待して待ってろ、今日のうちにでもあいつを説得しに行くからさ。と鬼龍が占めるので、俺は新撰組についてのライブかーと思いを馳せつつ、三毛縞ー部屋借りてくるから、音源あるー?と空気駄々潰しにするのである。いいよ、俺が空気読めてないのなんて知らないよ。青葉お前も付き合えって言われて、俺は丁寧にご遠慮しておきます。と返事する。俺は踊れれば良いの。のスタンスなので、比較的客観視しようと思ってるよ。振り以外は。そう意思表示してるのでしてると、転校生が紙を広げ出したので、みんなでわいわいと企画の内容をまとめ出す。
以外と出きる子らしいので、俺は感心する。がはしっこのメモに業者と二三書いてるのを見て、ちょっとだけ今度ノウハウを教えてやろう。と決める。なーんもしらないプロデュース科だもんな。どうせ生徒会の手にかかってない業者も必要だろうし、俺のご愛用業者でも繋いでやろうではないか。どうせ、俺が卒業したら誰も使わなくなるんだし。そのまま芸能界入っても、事務所になるわけだから俺が使うこともないんだもんな。
まぁ、タイミングがあればな?



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