俺と最後の踏伐・夜の終演ライブ。 02
企画書やらをこねくりまわすと気づけば21時だった。終わってないが仕方ない。書類を切り上げて帰路につくために空き教室を出ると、起きたばかりなのか比較的元気な朔間と出会った。空いた方の手を上げると、久しぶりじゃのう。と剣呑に笑う。今終わりかな?まぁ俺のライブ用に企画書がまとまんなくてさ?ほう。ライブをやるのか?そう。…卒業前にさ、そんなにライブに結果立てなかったし、一年前は返礼祭もできなくて送り出せなかったからさ。やりたいことを詰め込んだだけのライブだからさ。企画書が終わんねぇの。
「最近悪巧みをしてるようじゃの」
「悪巧みなんてしてないさ。夢のために生徒会の目を潜り行けるルールを探してるのさ」
ほう。と朔間が感嘆とした声を上げる。その声にどんな感情を持ってるのかなんて俺は知らないが、その目は獣を狩るように見つめている。一年前の感じも欠片さえ表さないこいつは今何を考えてるのだろうかと、怪しむ。
「なかなか愉快な事をしてんじゃねえか」
「あ?」
「なんでもないんじゃよ。」
年寄りは口が滑りやすくていかんの。まぁ良からぬ事を企んでおるのじゃろゆらぎくんや、良ければじじいに一枚噛ましてくれんかの?なんていう申し出につい最近みた光景が重なる。何でお前まで俺に言わそうとしてるんだよ朔間。ってか、俺ら同い年だろうが。見た目的には。な!
「ゆらぎくん、夢は言わねば叶わぬぞ?」
言わないと夢は叶いませんよ?日々樹に言われた言葉が脳裏を走る。この間の会話を聞かれていたのか。とも思える言い回しに眉を潜める。言いたくないのかの?と朔間が方向性を変えてきた。否五奇人が仕掛けようとしているのか?…いやいや考えすぎかもしれん。
言わない方が良い。なんて朔間に伝えると「言いたくないのか、じゃあ見せてくれんかの?ゆらぎくん」そう、満足そうに彼はいう。それを聞いた俺は「…は?」なんて情けない声が俺から出た。言わないなら書いてみろ。的な一休さんも笑う逃げ道だ。どうするべきかと、頭を回す。まぁ回しても足りてないのだが。返事を濁していたら「五人ぐらいほしいのじゃろにゆらぎくん」朔間は満足げに頷く。おい、俺のやりたいことわかってんじゃねえかよ。
「改めて問なおそうか、ゆらぎくん。明日の夜にゆらぎくんの心を見せてくれんかの?」
窓ガラスから月光がさしこんで朔間を照らす。まるで彼のステージだと言わんばかりの照明は、朔間を神秘的に魅せてくる。ゆるく笑う彼は酷く艶やかに俺に手を向けようとする。男を虜にする男の吸血鬼なんているはずないのに、神秘性にやられてか俺はその手を掴んだ。
「素直な子じゃの。じゃあ明日お主の心を見せてくれんか?」
「…喜んで。じゃあ俺のなかで決めた企画書、明日のこの時間に見せてやるよ。」
んーじじいに細やかな字は読みづらいから踊ってくれんか?と言われたので、俺は結論徹夜して翌日踊る羽目になった。いや、踊るの好きだけど。夜通しはやめてくれよ。
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