2021 誕生日
深夜零時、俺は『HestiaCraft』の事務所で書類仕事に頭を抱えていた。
夢ノ咲で、七夕系のイベントが終わっての終了報告書に目を通していたら、時間はあっという間に溶けていく。その日のうちにレポートが出てくるのは優秀だけど、俺もその分振り回されてるの、笑うしかない、一通りに書類を目を通し終わったら、タイミングよくホールハンズが鳴った。
「はい、『HestiaCraft』青葉です」
「あ、ゆらぎくん。俺です」
「……あぁつむぎくん。」
「今、星奏館ですか?」
ううん、まだ事務所。夢ノ咲の七夕イベントの後片付けしてる。それだけ伝えると、そういえばそんな時期ですね。なんて電話の向こう側が笑っている。どうしたんだ?なんて問いかけたら、ノックの音が響いて、すぐに俺なんであけてくださーい。なんてのんきな声がドアの向こうで聞こえた。
「こんな時間までお前も仕事するな!」
「ゆらぎくんがご飯食べてなさそうだったので、持ってきたんですよー。」
「わー。オトウトガヤサシー」
「露骨に嫌な顔しないでくださいよ」
そういいながら、俺の机の上に俺の好物ばかりを並べていく。いつものじゃこおかかチーズのおにぎりと明太イカサーモンのおにぎり、それにサラダと白と黒のケーキが一つづつ。ケーキ……?白黒のそれとつむぎくんを交互に見て、七月八日だと理解した。俺の誕生日だ。
「誕生日か。」
「思い出しましたね!明日楽しみにしてますよ。ゆらぎくん」
「明日、あれか。」
「サプライズ俺も出るんで。」
「今、言っちゃっていいやつなの?」
「タイミングの問題なので。」
「飲み物なんかいれる?」
「お茶は二人分持ってきたんですよ。」
なので、仕事いったんやめて、食べましょう。なんて言われたら、俺も仕事の手を止めるしかない。まぁ、飯も食い逸れていたので、タイミング的にちょうどいい。仕方ないので、つむぎくんにのっかることにした。持ってた書類の山たちを横に動かしながらも、会話を進めていく。俺の事務所の隅に置いてある食器棚から二人分のコップを引っ張り出している。もう勝手知ったるよその家みたいな感じで触ってる。ことに呆れも覚えるけど。
「明日、どんなことをするんですか?」
「まぁ普通のことだよ。トークしたり、なにしたり。ってさ。」
「ゆらぎくんなら、問題なく進めれそうですよねぇ。」
「……っていうか、俺、アイドル枠でいいのか?」
「アイドルだと思ってますよ。俺は。」
まさかの投げられた感じの一言に、俺が動揺する。まともにライブしてないし、どっちかっていうと練習兵みたいな立ち位置だと思ってるから、ちょっと驚いた。なんだろう、敏腕司令官とチュートリアル兵士の俺みたいな。そういうゲームありそう。企画書一回かいてみっかな。なんて考えてたら、つむぎくんに仕事の顔してるとか言われた。
「おっと。悪い。一個思いついてしまったから。」
「もう、ご飯食べますよ!」
「つむぎくんも食べるの?」
「俺も食べます。」
「そ、じゃあ。いただきます。」
俺の好きな味に舌鼓をうちながら、俺たち二人の夜は更けていく。ちなみに、二人でソファーで寝て、起きたので。あんずにしこたま怒られた。
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