俺とリフレクション!ミラーライブ 4
15分基本体操を終えた俺は、そのまま練習を続けて全員で縦のタイミングを合わせることを徹底的に練習して今日は終わる。単純な練習だったけれど俺は久々の練習だし、とっても楽しかった。このまま練習しよう。とつむぎくんに提案すると明日は休めと言われたけど、そんなもんは無視だよ。久々の練習だもんな。明日の晩御飯俺がやるっていうことで話をつけて葵たちに聞いてみる。
「このまま練習するけど、二人はどうする?こっからほぼほぼ個人連だけどさ。」
「どうしてそこまで踊りに執着してるんですか?」
「…執着?」
「ずっとなにかに憑かれたかのようにも見えましたし。」
「仕方ないですよ。ゆらぎくんは昔からこうですから」
……とりあえず、そうか。と納得して、一旦この場は解散となった。俺たちはやりたい曲などの打ち合わせもあるのでいったん帰りますよ。明日はゆらぎくんがご飯を作ってくれるならいつまででも踊っていいです。って言われたので、今日はしぶしぶ変えることにした。制服に着替えながらぼんやりとさっきの葵たちの言葉にどこかひっかかりを覚えていろいろと考えて見るが、なんでだろうね。多分根底は生まれた習慣なんだろうけどさ。
「ゆらぎくん、はやく出ないと、明日のパン買いそびれますよ。」
「そうだね。今行くよ。」
そうして二人での帰り道。買い物も済ませて電車に乗って二人で並んでてふと思い出した。小さな頃の話だ。
「あんまり、電車乗ったことなかったんだよな。」
「……いきなりどうしたんですか?」
あんまりさ小さな頃からそんなに遠出をしたことなくてさ。そうやって思いをはせてたからかな。おとぎ話でもあるじゃん、赤い靴って。ぽつぽつとつぶやいてたら、つむぎくんが今日のひなたくんたちの言葉を考えてるんですか?と問いかけてくる。のでふとももをつねっといた。…夏目の気持ちが分かった気がする。
「ちょっとゆらぎくん!」
「いいじゃん。べつに。」
「執着だったのかもしれない。星明りしかない夜の部屋でさ。一人、寝付けなくてずっと考えてたこともあったんだよ。」
光の階段を上って別の世界に行って、そこの力を手に入れてもっといろんな人を救うんだ。って小さなころは思ってたよ。人を救えば親父が喜ぶ。だから俺はそこで頑張ってたんだよなぁ。俺の手を引いて歩いた人が迷ったんだよ。その時に人の間から見た景色がさ、どこかの大きな公園で。そこで人が踊ってたんだ。地面を蹴って、足に羽が生えたように踊ってたんだよ。その時に、俺はそっと感動してさ。手を引いてくれた人に言ったらそれは俗世だから離れなさい。っていうからずっと見て見ぬふりして忘れようとしてたんだけど、どこか心の中で残ってて。足に羽が生えるには、って考えてたりしたんだよ。子どもぽいだろ?
そうやって俺が照れて自嘲気味にしてると、そうですかね。大体の子どもはそんなものですよ。だから児童書が人気なわけなんですし。といいんじゃないんですかね。と首をかしげている。
あの時、駄目だよ。って言われた分なんか余計に抑えてたんだろうな、そのまま少し大きくなった俺は大人と迷子になってゲーセンで踊る人を見つけて、そこから踊りが好きになったんだよなぁ。踊るあの人たちがすごかったから、ああなりたいって思ったんだよ。
「……そのせいでいろいろあったりしたけど。」
「なにか、いいました?」
「なんでもないよ」
「それにしても、珍しいですねえ。それだけ幼いころの話をするなんて。」
「んまぁね。」
まだひっかかってるんですか。なんて言われて、俺はそのままぶすくれて杖の持ち手に顎を載せる。肯定は無言だと悟ったつむぎくんは、笑ってた。どうなんだろうね。と思いながら、思考することをやめて、俺は打ち合わせとしてつむぎくんに何の曲がしたいかと問いかける。
「あいつら、多分。数で殴ってくるだろうから。こっちは、だいぶ激しくなると思うんだけど。いい?青葉ダンススクール優秀生徒さん。」
「大丈夫ですよ。」
「アラディア。」
「…俺たち二人ですよ?」
「ん?なにか勘違いしてないかい?」
「数の暴力には数で対抗して、『臨時ユニット』を組むぞ?今、そっちの人集めてるし。」
「聞いてませんよ?」
「言ってないよ。今言ったし、決めた。」
「えぇ!?」
だって、まだ縦合わせる練習しかしてないし?三年はこれから比較的に忙しくなるだろうから最後の息抜きにしてくれたらいいな。って思ってさ。俺も学院でアイドル終わる感じになりそうな気がしてるし。そう言ってると、つむぎくんが驚いていた。
「アイドルやめるんですか?」
「まぁねぇ。裏方のほうが踊れてるし。」
「ゆらぎくん。家に帰ったら話をしましょう。」
「わかったよ。」
…これ、めちゃくちゃ怒ってるやつですね。はい。
放課後と同時に葵に連絡を入れる。どうやら、昨日話した結果として、『ミラーライブ』で『apollo』と戦うためにはもっと数がいると判断して降りるかどうするかを迷ってたようなので、俺は渡りに船だと判断して葵兄弟を誘う。これで5人。真ん中。配置をするなら簡単で、『ミラーライブ』といては難しい奇数の人数。そして『apollo』と同じ人数。これ以上ない理想の形ができあがったので、つむぎくんに連絡を入れたら、すぐに既読と怖い鳥のスタンプがきた。誰だよ。こんな怖いスタンプ送った俺は。俺だ。思った以上に怖い。
まぁ言いたいことはわかるんだけどさ。そっちだって教えてくれないし。俺とつむぎくんとの付き合いは指折り数える程度の年数しか家族してないし。人生の4分の一も共に連れ添ってないからねぇ。
悩んでも仕方ない。こちとら夜ご飯の支度があるのでつむぎくんの好物でつり上げるしかない訳だ。けども。
指定時間よりも早く来て柔軟代わりのピルエット。誰もいないしただただぐるぐるメトロノームと同じリズムを刻んでいると、天祥院がやってきた。
「やあゆらぎ。」
「全員ソロったらはじめっから、柔軟しとけよ。」
わかったよ。とかお互い軽口を叩いてると、葵たちがやってきて、俺のピルエットに付き合いだしたので天祥院に指摘をしてもらいながら踊ってると、つむぎくんがやってきた。
思いもよらぬ人選だったのか、驚いてはいる。
「ゆらぎくん?!なんで英智くんを?」
「混ぜなきゃ『臨時ユニット』の許可出してやんない。って言われたから、もう巻き込んで手綱とっといた方が楽じゃん?」
「ゆらぎくん!?」
驚いたままのつむぎくんをほったらかしにして、俺は笑う。俺と天祥院が同じライブに出ることなんてほぼない。だからこそ珍しい組み合わせに驚いているんだろうか。前にやったけどな!【維新ライブ】
「まー、これで今回の五人。『臨時ユニット』『Helios』の誕生だ。」
「へりお……す?」
「ギリシャ神話の太陽神の名前だよ。」
「『Diana』が月の女神でしたもんね。」
「『Helios』ってヒーローみたい!」
「なんだか不思議ですねぇ。ゆらぎくんが『Diana』じゃないって」
俺は俺だぞ?首をかしげながらも、とりあえず自己紹介も要らないだろうし、打ち合わせから初めるから、みんなすわれー。号令をかければ俺を真ん中に据えて、さり気なくあんずも和の中に入る。俺が作った企画書を配り、目を通してもらう。天祥院は嬉しそうに俺の企画書を見てるし、葵たちは興味深そうに考えている。つむぎくんは、いろいろと考えながら熟読しているのが見える。
「見ながらきいてほしい。」
『ミラーライブ』の概要を改めて、出しながら俺の読みをここで広げていく。
今回のライブはほぼほぼ出来レースだとも考えていること、『Diana』のメンバーが『apollo』と名前を変えて出ていること。それが、どういうことにつながるのか、『Helios』の意味合いを。
「実力側で全部ねじ伏せる展開になるがゆえにパフォーマンス面での不安はほぼない。」
「でも英智くんですよ。」
「安心しろ。お前を中心に据えてやる。中心ならばそんなに動く必要はない。」
「心外だね。ゆらぎ」
「お前は今回、傭兵の位置!雇われ!解かれ!!」
基本的に、天祥院を真ん中にして、俺達が惑星のようにぐるぐる取り囲んで踊る。今回のベースにしようとしてる。あいつらは同じ人数で揃えた。あとは地力で叩き潰す。無論、天祥院がやばいと思ったら最悪見回りに着てる蓮巳に立たせる。これは、天祥院と取り決めているから安心しろ。
「で、今回の目標なんだけどさ。これを優勝して、副賞になるライブ権はお前らに譲る。好きにして。」
でも、そのぶんきついから。今無理だな。って思ったら全員切って別で募集するからな。ひなたもゆうたも、天祥院も、つむぎくんも。誰一人欠けることなくついてこいよ。よし、一通り打ち合わせはこんだけだけど。なにかある?
「いろいろ聞きたいことはあるんですけど。」
「うん、なんでもきいてよ。」
「衣装とかどうしたらいいんでしょうか。俺が作りたいんですけど。」
「練習に裂いてほしいんだけど。つむぎくん俺の衣装作るのすきだもんね。メインのパターンはおまかせする。天祥院、つむぎくん、ゆうた、ひなたの分は注文するから早い目に決めて。」
俺達で、大丈夫なんですかね?とゆうたが不安そうに俺を見た。俺は、そこも安心しろ、2つで対に見えるオレ達と、お前らだからいけるっていう構成にする。妥協しないアクロバット入れるけど、そこは頑張ってほしい。うちの学院にそんなできるやつが居ないからな。そうやって念を押して、質疑応答に始まる。ちなみに、青い兄弟どっちか、女装と女役やるからよろしくな。と言うと、僕もやりたかったなぁ。と天祥院がつぶやいたのは聞かなかったことにして、いつもの練習から始める。天祥院は俺の練習方法に興味津々であるが、それも体験させておく。一人あたり20分の予定だったが天祥院の余力を考えて、俺はフルで四人で回して一人あたり15分基礎練習をしてから、一通り楽曲と振りを入れてから時間を決めて、自由時間としてみんなで好き勝手踊ってから最後に一度合わして質疑応答を兼ねた打ち合わせをして、今日の解散である。そんなスケジュールを伝えて、俺達は思いっきり踊りだした。久しぶりに膝を酷使する月京なので、俺は嬉しくて仕方ないんだけど、つむぎくんは多少不満そうな顔を鏡越しで見た。悪いな、とおもうけど俺は解散したら速攻で買い出ししてつむぎくんのご飯を作らないと行けないのだ。ここで精一杯踊っておかないともったいない。
体中で、思いを爆発させて、踊って解散になる。買物をして帰ろうとつむぎくんに声をかけようと思ったのだが、天祥院がつむぎくんと話ししているので、俺は先に帰るから。晩飯他所で食ってかえんなよ好物作っておくから。と伝えてレッスン場を出ようとしたら天祥院が俺をひやかした。
蓮巳とチェンジしてぇ。とか思いながらも家に帰る前に好物の作成。っていうか大体俺が作るとうまい。っていうから、だいたい好物らしいんだけど。まぁ、そういうところも俺達お互い様なんだよなぁ。俺もつむぎくんの作るおにぎりのじゃこおかかチーズ。好きなんだもん。買物を済ませ、さっさと家事に取り込んでると、ただいま戻りましたと気楽そうな声を出して、つむぎくんがリビングに顔を出した。さっさと風呂入ってこい。その間にできるから。と伝えれば、昨日の喧嘩を謝られた。ちょっとショックだったとか言われたけど、ちょっとの割合じゃない気がするよ。
「なんでもいいから、飯食うぞ!その前に風呂入ってこーい!とりあえず俺も極力アイドル続けながら、できる道を探して見るからさ。」
「本当ですか!嬉しいですね!ゆらぎくんの踊りが見れるんですから。」
どうも確定事項のようだ。また飯食べたら打ち合わせするぞ。といってやると嬉しそうにうなずいて風呂場に突っ込んでいった。ド派手な音をさせたので、がくりと肩を落として覗いてみると風呂場に頭から突っ込んっだつむぎくんがいた。滑ったらしい。
いたそう。
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