君が笑うなら、僕が泣くよ。 





無くしたものは多かった。救いの子としての俺を愛してくれた父親、家族のように俺を愛してくれた信者。元から愛されてなかったみたいけど元ユニットメンバー。俺の手元には基本何もない。ただの膝の悪い青葉ゆらぎ。という存在だけしか持ってない。得たものは、神様は足元を掬ってくれるという、神の子というべき存在なのに、その縋る神に…まぁ信じてはなかったけど…そんな神にすべてをかっさらっていかれてるのだから、とんだ笑い種だ。
ステージ脇に帰ってきて、唐突に思い出した。何が原因かもよくわかってないけれど、ふと思い出したのだ。

「ゆらぎくん、体が冷えますよ。」
「あぁ、ごめん。ちょっと肩貸して」

わかりましたよ。と俺の肩を置きやすいところに位置を取ってくれるので遠慮なく俺は、肩を借りる。思いっきり使った膝…というよりもアキレス腱周りが痛くて、伸ばすようにしながらだましだまし歩いていると、つむぎくんは今日なにかありましたか?と聞いてきた。…変なところ鈍感なくせに。と俺も人のことを言えない罵倒を心の中でしつつ、なんでもないと告げると明らかに反応が鈍い。つむぎくん?そう呼びかけると、目元を多少こすってからこっちを向いた。

「いや、なんでつむぎくんが泣きそうなの!?」
「俺がもっとちゃんとしてないからゆらぎくんが頼ってくれないんでしょう?」

…うん?ちょっと待って色々おかしい。まって、まじで。なんで。そうなるの?俺の思考も比較的いかれてることに自信があるけど、つむぎくん5倍速ぐらいで俺よりイかれてない?

「今肩借りてるよね?」
「そうですけど、足りてないんです。朝は起こしてもらってますし、ごはんを作る回数はゆらぎくんのほうが多いですし。」
「何が。」
「それは。」

そこで言葉を濁さないでくれ。まって、俺たち普通の高校生しってる?…こうなったつむぎくんを元に戻すのには夏目がちょうどいいんだけど、そんな夏目も近くにいない。今日は俺のライブだったからな!なんでこんな時に熱狂的モンペ基、モンスターブラザーを持っているのだろうか。っていうか、つむぎくん親は信者だったけど、きみは狂信者ないって思ってたんだけど。この数年で初めての事実?どうやってこの機嫌を取ってやるとかと考えているけれども。

「……ね、つむぎくん。笑っててよ。俺アイドルだから目の前に泣かれてる子がいたら困るんだけど?」
「すみません今止めます。」
「基本笑ってるほうが好きだよ。」

……こうやって言っておけば大丈夫だって知ってるから言うとつむぎくんは今日はゆらぎくんの好きなもの作りますね。って笑ってくれた。…一安心だけど、つむぎくん、将来悪い人に引っかからない?だとかなんで俺はこういろいろと多方面に心配してるんだろう。



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