20180807 青葉つむぎ誕生祭
夕食を食べ終わっていつも通り変わらない夜。俺が風呂を上がれば、つむぎくんがテレビを見ていた。深夜のお笑い芸人がコミカルな動きをしているので俺はそれを見ながら参考になるかな、とか考えた。がどうもいい動きにならなさそうだと、すぐに見限った。番組スタッフらしき笑い声が二人の部屋に流れる。俺はライブとかやりたいなーじゃあ楽曲をどうするか。とか思考を走らせる。転校生に頼んでもいいが、いやあいつに仕事させすぎだわ。どうするかねぇ、たぶん言えば喜んでくれるだろうけれど。忙しいみたいだし、頼むのは忍びない。
自分の飲み物を用意するついでにつむぎくんに飲み物いる?と聞けば、いいんですか〜?というが、俺が拒否するならつむぎくんに問いかけたりしないっての。悪態を吐いてつむぎくんからカップを受け取る。俺の両手がふさがると、つむぎくんがニコリと笑った。
「ゆらぎくんのココアとっても美味しいんですよね」
「そりゃあ人の作るものだからだろ」
「いいえ〜違いますよ」
じゃあ何が違うんだよ。と他愛ない話をしながら、俺は鍋に火をかける。沸騰するまでにつむぎくんのカップにココアの粉を入れて少量の温い水を入れて馴染ませる。鍋がゆらゆら揺れるまでに小さな混ぜ機を使って艶が出るまで練り上げつつ会話を繰り広げる。
「この世でただ一人だけの血の繋がらない兄に向けて、美味しくなぁれの気持ちがつまってるんですよ。」
「前半は聞かなかったことにするけどさ。自分で作ったじゃこおかかちーずがあんまり美味いっちゃー美味いんだけど、つむぎくんのがやっぱ旨いのと一緒だな。魔法使いさんよぉ」
「魔法使いだなんて。そんなことないですよ。」
「お前のユニット全否定かよ。」
時計をちらりと見ると日付の変わる数分前。そろそろだなと時計をみやってつむぎくんを盗み見ると番組終盤の盛り上がりに釘付けられてるので俺はしめしめなんて思いながら冷蔵庫からあるものを取り出す。学校の帰る途中に買ってきたケーキ。
8月7日はつむぎくんの誕生日で「ろくなことがない。」と本人が言うのだがろくでもないとかいうな。と俺は叱った記憶はあったのだ。だから、たまにはこういう仕掛けもよいだろうと俺が買ってきたものだ。本来ならホールの予定だったのだが、校内アルバイトで遅くなったのでかろうじて購入できたのは、俺とつむぎくんとつむぎくんのおふくろさんの分のスリーピース、3つのピース。平和とかけてないよ。俺の親父の分?んなもんねえよ。皿を広げて俺とつむぎくんのぶんをわけて振り返るが、つむぎくんはまだテレビを見ているので、サッとココアを置いてから
「つーむーぎーくーん?」
「なんですか?」
こっちむけ、と声をかければ榛色がこっちを向いた。ほれ食え。と俺のケーキの一口分をぶっ刺してフォークを差し出すと。きょとんとした顔をされた。ほら誕生日だろ?と同時に0時から始まる番組に変わった。テレビのニュースが8月7日の0時だと告げたので、俺は「な?」なんて言いつつケーキを食えと促す。驚いてからゆるゆると口を開いて一口かぶりつく。
「駅前のケーキ屋さんですか?。」
「ん、そう。どっちがいい?」
ちょっと悩んでから答えを聞いたのでそのまま俺はちょっとまってな。テレビ見てろ。と促してから別のケーキと変える。ま、お袋さん用って思ってたけど、まぁつむぎくんが食べるなら文句は言わないだろう。っていうか、勝手に食べてるだろう。冷蔵庫に入れてると消えてることも多々あるので、そういうことだ。
「誕生日おめでとう。今晩俺が担当だけど、なにたべたい?」
「ゆらぎくんの作るものなら何でも好きですよ。」
「そういわれると困るんだけどなぁ。」
つむぎくんがよく食べたいと言っていたレシピを思い浮かべるが何らいいものが出てこない。いろいろつくるか、明日学校休みたいな。とか思ってたらばれた。おい、俺の悟りかよ。ちょっと背筋凍ったわ。ただ一人の弟が怖い。なんかできそうだな。とか思ってしまうあたり俺もだいぶ甘いかもしれない。っていうか甘いね。
「今日はいい日になるんじゃない?」
「スタートがよくても俺の場合下がっていくことの方が多いですから。」
「俺が横にいて下がるかよ。」
「まぁそうですけど、その分ゆらぎくんまで運気が下がりますよ」
「大丈夫だっての、たった一人の弟守れなくてなにが兄ちゃんだよな。」
ほれ。替えのケーキだよ。それ食ってさっさと寝ろ。とりあえず俺はお前を一番最初に誕生日おめでとうって言えてうれしいよ。と兄バカも発揮しておく。いいだろ、最近お兄ちゃんになった俺からのお祝いだよ!君の今までが最低だっていうなら俺が今から基今日から最高だって言わせてやるよ。俺の力を舐めるな。転校生だって協力してくれてんだぜ?今日一日ぐらいお前の厄を一身に受けてやるよ。
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