俺と夏目とAV室。
俺がそこにいて、眩しい光に照らされて音がなる。それと同時に靴が鳴る。聞きなれた靴の音はカンカンカツカツ鳴っている。高く腕を広げると音が沢山鳴り出した。音を掬うように足を拾いそして鳴らす。ポーの音はすこし調子が悪そう。音に包まれて笑って楽しそうだな。とか思うと同時に光が入ったのと扉が止まった音。2つに気がついて、映像から視線を外して、そういえば学校だったと思い出した。
体を捻ってそちらをみると、夏目がそこにいた。
「センパイだと思ったんだけド。」
「センパイのセンパイで悪かったな。つむぎくんじゃなくて。」
体をそちらに向け直すと、夏目の視線が俺を通り超えてる事に気がついた。昔の俺が見えない音の服を纏って、日本じゃない躍りをモチーフにした振りで踊っている。見てたんだよ。と伝えると、見て解ルとたしなめられた。
「センパイのセンパイって踊れたんだネ」
「躍りに関しては、だれも追随を許さなかったんたが」
今じゃあぁだ。と入り口に立て掛けた杖を指差す。故障で映像並みのことは二度と出来なくはなってしまったがな。と自嘲して吐き捨てる。夏目はまだ赤い靴の俺を見つめて、感嘆の声をあげた。
「今どうして見てたんだイ?」
「返礼祭にさ、こっそり出たかったんだよな。」
俺も残された側だし、去年もやったけどさ。それでもやりたいんだよなぁ。俺が最後だし、活動費も、そのために貯めたしさ。いいよなぁ。昔の衣装をばらしたりリメイクしたりしたら、一時間ぐらいのライブできるよな。いや、誰も見なくてもいい。あいつらに届かなくても問題ない、だから…だから…。
「もう一度ああやって踊りたいなぁ」
一閥なんて呼ばれた地位も何も要らないからただただみんなで踊れるステージがほしかった。そう呟いて歓声を意識の外にはねのける。踊ることは出来ない。憧れだけが目の前にある。怪我する前の俺は怪我する俺の欲しいものを全部持ってたんだ。
「踊りたいんダ。」
「俺がそう呼ばれる所以なんだよ」
一人で残像が見えるぐらいの高速展開するパフォーマンスが好きだったからね。ほらもうちょっとで始まるよ。と促すと同時に踵とつま先を使ったタップに激しくついた音符たちが映像の俺の横を踊っていく。三十二分音符とかありえねえ!!ってメンバーに言われたけど、スローテンポだから一拍に八つなら入れれるだろ!根性!って笑って振りを考えたよな。
「おっと、転校生に呼ばれてるの思い出した。夏目ごめん、その資料返しといてもらえる?」
すこしだけ考えてから、仕方ないね。子猫ちゃんが呼んでるなラ。と頷いて頂けたので、よろしく。と一言残して俺は部屋を出た。教室寄って荷物を取って転校生の元に向かう最中に斎宮出会ってめちゃくちゃどやされた。解せぬ。
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