おかえりなさい


 雑賀荘。日の本に名を轟かす傭兵集団・雑賀衆の本拠地である。

「姉様、おかえりなさい」

 戦に出ていた雑賀衆を出迎えたのは一人の少女。

「ああ。ただいま、巴」

 副頭領が笑うと、頭領も笑った。

 * * *

 雑賀衆は二人の女性が率いている。
 一人は三代目頭領・雑賀孫市。拳銃、ショットガン、ロケットランチャーといった様々な銃器を操る女性である。
 もう一人は副頭領・雑賀巴。孫市が全幅の信頼を置く実の妹である。今回の戦には大きな部隊は必要ないということで、巴は雑賀荘の留守を預かっていた。

 戦から帰ってきた雑賀衆は疲れもあるだろうが、休息の前に銃器の手入れをしなければならない。

「姉様、私もお手入れ手伝います」

「巴は戦に出ていないだろう。ゆっくりしておけ」

「姉様達が戦に出ている間にゆっくりさせていただきました。だから、手伝わせてください」

 姉は妹を気遣い、妹は姉を慕う。先に折れるのはいつも姉である。

「……仕方ないな。では、頼む」

 孫市は口元を緩ませ、戦場では決して見せない柔和な笑みを巴に向けた。

「はい!」


2011/09/02
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