軽巡から雷巡へ


「提督」

 少し低めの声で呼ばれて、神条は振り向いた。そこには、右目を眼帯で覆った、暗い緑色の髪の艦娘が立っていた。緑のラインの入った白いセーラー服を着用し、右半身を金色の飾緒の付いた黒い外套で覆い、腰のベルトには弾薬がずらりと並んでいる。
 彼女は球磨型5番艦、重雷装巡洋艦・木曾改二。

「改造、終わったのね」

 少し前、改二にするため木曾を工廠に預けていたのだ。そろそろ終わる頃なので、工廠へ足を運ぼうと思ったのだが。
 何故木曾がいるのだろう。

「それにしても、もうちょっと時間かかるんじゃなかったの?」

「俺が早く終わらせるよう言ったんだ」

「木曾を迎えに行きたかったのに」

「すまないな。少しでも早く改二になった姿を提督に見て欲しくて」

 神条が眉尻を下げると、木曾は苦笑して神条に向き直った。

「どうだ、提督。改二の俺は」

 訊かれて、神条は改めて木曾の格好を見る。改修前より衣服の細部に変更が見られるが、最も違うのはやはり外套だ。金色の飾緒が黒に映えている。この飾緒は、海軍における参謀の職にあることを示している。

「とてもかっこいいわ。艦種も軽巡洋艦から重雷装巡洋艦になったのよね」

「ああ。それと、水上機を完全になくしたぜ」

 軽巡洋艦の時の水上機搭載数は2だったものが、重雷装巡洋艦になると0になっていた。どうやら、軽巡洋艦であった頃から水上機はいらないと言っていた木曾本人の希望が通ったようだ。

「かっこいいけど……スカートがプリーツになって可愛い」

「そうか? ……まあ、お前がそう言うなら、このスカートも悪くない」

 改造前よりヒラヒラするプリーツスカートに若干違和感を覚えつつも、提督が気に入ってくれるのなら、と木曾は服も変えて良かったと内心独りごちた。

「なあ、これから出撃に向かおうぜ」

「何、改二になって嬉しいの?」

 いつになくテンションの高い木曾は、神条の手を握ると、艦隊編成のため他の艦娘達のいるところへ足を向けた。

「当然だ。これからもお前に最高の勝利を与えてやれるんだからな」

 そう言った木曾の表情は、とても凛々しく、清々しい笑顔だった。


2014/06/09
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