紅葉狩り


 最近、冷え込みが一気に進んできた。冬に向けてこれからさらに寒くなるが、その前に紅葉というものが始まる。

「話に聞いたことはあるが、こりゃ随分と鮮やかだな」

 紫乃はダンテと二人で日本の紅葉スポットを訪れていた。少し前まで緑一色だった山の木々が、冷え込んだことにより、赤や黄色といった鮮やかな色彩へ染まっていた。
 足元には紅葉した落ち葉が広がり、ふかふかした感触はさながら毛足の長い絨毯のようだ。

「寒いけど、見ごたえあるでしょ」

「ああ。来て良かった」

 外気は吐く息が白くなるほどに冷えている。だが、それを忘れるくらい鮮明な赤と黄色が美しく、目を楽しませてくれる。

「何か温かい飲み物でも飲む?」

「そうだな。何があるんだ?」

 観光客向けに茶屋があり、そこではお茶やお菓子を味わいながら紅葉を楽しめるようになっている。茶屋ということで多くのメニューが日本茶や和菓子だが、コーヒーやケーキも少しあるようだ。

「お茶は苦手でしょ? コーヒーとかケーキがあるみたい」

「じゃ、それにしよう」

 紫乃はダンテを連れて店内に入り、店員に窓際の席へ通された。テーブルに備え付けのメニューを見て注文を済ませる。
 ダンテはチョコレートケーキを、紫乃はロールケーキを、コーヒーとのセットメニューで頼んだ。

「んー、コーヒーで冷えた身体が温まるねぇ」

 ダンテはミルクと砂糖をたっぷりと入れたコーヒーを飲む。

「紫乃はこういうところには来たことあるのか?」

「昔、友達と来たことはあるけど……」

「けど?」

「……好きな人と来るのに憧れてた」

 恋人と一緒に来てみたいとは、何とも可愛らしい願望だろう。

「なるほどね。んじゃ、今日はそれが叶ったわけだ」

「そうだね」

 照れくさそうに笑うと、紫乃はコーヒーを一口飲む。

 それから二人は自分のケーキを互いに一口分切り分けて交換し合った。
 茶屋でゆったりと休憩を楽しんだあと、再び外で紅葉狩りを楽しみ、帰宅した。


Web拍手掲載期間
2014/11/15〜2014/12/07
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