首輪について
「今の首輪っていろいろ種類があるの」
「へえ」
昼食の後片付けをしていた紫乃が、首輪について話し出したので、ダンテは相槌を打った。
「シンプルな物以外に、可愛い絵柄があったり、デザインが凝ってたりするのよ」
「やっぱり昔に比べて種類が増えたんだな」
首輪と聞いて思い浮かべるのは、やはり革製の物だ。しかし、紫乃の言うように、今は多種多様なデザインの首輪が出回っているようだ。
「そうね。特に女の子用なんかは可愛い上にお洒落な物もあるみたい」
首輪本体の絵柄はもちろん、デザインも凝ったものが多い。ネット通販の商品一覧を眺めているだけで、いくつも欲しくなってくる。
「何だ、欲しいのか?」
「首輪だけ見てると欲しくなるのよね。でも、やっぱり似合わないし……」
「俺が買ってやるから遠慮すんなよ」
紫乃の購買欲を察知したダンテはそう申し出たのだが、 紫乃は首を横に振った。
「ううん、嫌がるだろうから首輪はいいわ」
「?」
嫌がるだろうから。どう聞いても憶測にしか聞こえない言葉に、ダンテは理解出来ずに怪訝そうな顔をした。
「だって男の子だし」
「……紫乃がつけるんじゃないのか?」
思いもよらない言葉が出て、今度は 紫乃が首を傾げる。
「え?」
「俺はてっきり紫乃がそういうプレイに目覚めたのかとばかり」
ダンテが自分の考えを言えば、 紫乃は少し頬を赤くして否定した。
「そ……そんなわけないでしょ! マハに似合うかなって思っただけ!」
「あー……紫乃がつけろって言ったら、あいつ喜んでつけるだろうな。それよりも、紫乃が首輪つけた方がいいと思うんだが」
「やだ!」
「可愛い首輪見つけてやるからさ」
「絶対嫌!」
そんな二人の攻防を、散歩から帰ってきた マハが離れたところで眺めていた。
(……主からの贈り物であれば構わぬが……)
主人の心配をよそに、 マハは意外と従順だった。しかし、今は二人の攻防のとばっちりを受けたくない。マハは 静かに外に出ると、本日二回目の散歩をすることにした。
Web拍手掲載期間
2014/05/10〜2014/08/19