よく言われる事がある。
「人形」とか「目が死んでる」とか「冷酷」とか…

確かに俺は誰かの指示がなければ動けない糸のついた人形みたいだし、目付きも悪いし口も上手くないから冷たいこと言ってるように思われる……仕方ない
もういいんだ、それで。

…起こって欲しくなかった最大に怖いことだって、過ぎ去ってしまえばもうどうでもよくなるものだ。

死すらも怖くない


今。
何もかもが灰色に見えるこの両目に映っているのは、俺が作ったキメラだ。
犬とライオンとワニが合成されたあり得ない生き物。
俺のミスで突然暴れて牢をぶち破ると、そこに居た何人かの科学者を食い千切り、最後に目が合ったのが俺ってことで多分今俺を狙っているんだと思う…

(…死ぬのか、遂に…)

そう思ったところで足が震えるわけでもなく。
きっと自分の死を他人事のように捉えているんだと思う。常識的に考えて、目の前には恐怖があるのに俺の頭はどこか冴えてて。この状況を別の位置から見ているような考えが過る。
首を噛まれたら痛いだろうな、とか…腕を引きちぎられたらどれほどの血が出るんだろうか、とか。

全部、今自分にふりかかるものなのかもしれないのに。客観的に見ている俺は……

「…死ぬと何も考えられなくなるものか…?」



なんてキメラに問い掛けた所でかえってくるのは低い唸り声のみ。


「グルゥゥウ、ガァアア!!」

(何も考えなくてもいい…、それはどんなに楽なことだろうか…)

ついに。
威勢よく襲いかかってくるキメラ


近付く鋭い爪に、反射的に目が閉じる


―――バキィイ!!

「……」


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