「おーいフウシン、入るぞ」

あれからしばらくして、リオが部屋に入って来た
俺はゆっくりと上体を起こす。

「少し寝れたか?足とか、どうだ」
「あ…あぁ、いや、元々そんなに痛くなかったから…」
「くく、色々考え過ぎて感じないだけで、足に集中したらきっと痛むぞ?」
「…」

言われた通り、集中してみるとたしかにじんわり痛んだ。けど気にならない程度だ

「ほんと、感心ねぇよな。ま、歩けるならいいけど。これからお前に紹介したい奴がいるから着いてこい」
「あ…、」

また着いてこい、か。まぁいいけど。指示された方が動きやすいし…、とりあえず靴を履こう…

「…の前に、腹減ってねぇか?」

俺が立ち上がったと同時にリオはふと思い出したようにこっちを見た
言われてみると、少しだけ空腹感がある…気がするような

「…」
「おーいフウシン、聞いてるか?」
「わっ…」

ポンと肩を叩かれて、我に返る。するとリオはくつくつ笑っていた

「お前、本当は小心者だろ?すぐビクつく」
「か…考えたこと、ない…けど」


その深い独特な青色の目に余裕がある表情が俺を捕えている。

(あ、そう言えば…)

この会社?に居るって事はこいつも…

「…改造人間プロジェクト反対派なのか?」
「は?俺か?」
「あ…ごめん、いきなり…」
「んや。あー、まぁ…正直どうでもいい」
「え…」
「あー正確には、どうでもよかった…だな」
「…?」
「…お前の依頼を受けてから色々調べて。気付いたら気になってた」
「あの、…」

淡々と言葉を出すリオ
ふと、また目が合った

「気になった、お前が」
「…え…」

(今、なんて…?)

その深い青色の目が、真っ直ぐに俺を見つめている。

怖いくらい深い…真っ青な色をしたその目には、確かに俺が移っている

「なぁ、フウシン。"何もない"に"何か"を足すと全然違うものになると思わねぇか」
「は…?」


(またなにを突然…)

だいたい…
"何もない"に"何か"って…?
俺は科学者だし、暗算は何よりも得意だ。けど、そんな式なんて聞いたことがない。リオは相変わらず余裕な、ニヤニヤとした表情をしていて。
全く理解出来ていない俺に対して「言ってやった」みたいな顔をするものだから、それがなんだか少しだけ…

「ふ…、」
「おっ?」

(あ…)

笑うことなんて、あの日以来絶対無いと思ってた。それに今は笑う要素が無かった気もする。…なのに、どうして…

「いや…ただ、変な奴だなって…」
「そうか?お前も十分、変な奴だけどな」
「…かも…」


そうだ、思い出した…
俺は、小さなことでも笑うんだった。意外とおしゃべりだし、すぐ笑うって…それがいいってあの子は喜んだんだ…

リオは、まだ会ったばかりだし殺し屋だしよくわからないやつだ。
だけどリオにとっては俺がそう映ってるのかもしれない。
よく考えたら俺も、直接的ではないけど殺し屋とさほど変わらない事をしていただろうし…

「…」
「色々考える余裕出てきたか?」
「…あぁ、まぁ…悪いことばかりだけど、…なんとなく…」
「ま、生きる事に執着の無い奴なんてここには沢山いる。」
「え…」





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