「…」
「…」

あれから、相変わらず俺と金髪との沈黙は続いた。
だけど彼は頭をガシガシとがさつに掻くと溜め息混じりの一呼吸を置いてしゃべり始めた

「…おい、正直に言え。お前はあの研究所で改造人間プロジェクトに関わっていたんじゃないのか?」

…なんだ?
さっきとは少しだけ態度が違う。ちょっとだけ、冷静で話やすい雰囲気になった…?

「…あ…俺は…その…、改造人間プロジェクトの情報とかは少し知っている…けど…。根元なんかじゃない…それは本当だ…」

力みすぎて少し声が裏返ってしまった。

「…」

…また睨み始めた…
こいつに睨まれるのはキメラに睨まれるより威圧感があるような気がする。
…と、今まで黙っていたリオがぽんと俺の肩を叩いた。

「なぁフウシン」
「…?」
「今日からお前、ここの科学者になれよ」
「は…?」

「はぁああ!?」

本当に突然の話だった。あっけに取られてリオを見るとニッと笑っていて。そして再び大声をあげる金髪。その後ろではライ…だったか?彼女が両手をパンと叩きキラキラとした嬉しそうな表情で俺を見ていた。
…と、何やらリオと金髪は俺には聞こえないくらいの大きさでヒソヒソと話をしている

(…なんだ?)

だめだ、聞こえない…

「…あいつは白だ。幕はもっと別にいるはずだ」
「だとしてもだ!完全な白なんかじゃねぇだろ…!っ…、こいつが白だったら俺は…!!」
「落ち着け。お前の…何かにすべてを押し付けて終いにしたい気持ちもわからなくはないんだ。だけどよ、お前の強い憎しみだけで根っこでもねぇあいつを無理矢理黒に塗りつぶして始末するってのはうまくねぇだろ」
「…っ」
「第一、あんな死んだ目ぇしたやつを殺せっつーほうが酷な話じゃねぇか」
「…」
「割り切れよ。あの研究所のファーストだ。力になるはずだ。それに…」
「あ?」
「いや、それは置いといて。とにかくよ、」
「ちっ…」

(…ん?)

終わった、のか…?
リオが俺の方を向く。…それに続いて金髪も。

「フウシン。良かったなぁ、お前は今日からこの科学班に所属だ」
「は…?」

いや、だからなぜそうなるんだ。金髪を見たか?全く納得していない顔をしているじゃないか…
それに俺は…

「……無理だ」
「どうして」

拒んだけどすぐにリオが返してきた。いや…どうして、と言われても…

「俺はもう、科学者なんていやなんだ…」

と言うしかない。
これも本当の事だから。俺のせいで沢山の人が居なくなったんだとしたら、尚更だ。

…あぁ、そうだ、俺は…

「…死を望んでるんだ」

そう言った俺を、リオがじっと見る。深い青色の目がすべてを見透かすようで少し怖い。けど…

(そうだった。死んでしまえば何も考えなくてよくなるんだった。だから死を望んだんだ。この虚しさから解放され…)

「…そんなにお前は死にたいのか」
「…」
「だったら、そっから飛び降りりゃいいだろ?」
「…え…?」
「17階だぞ。頭から行けば死ねるはずだ」
「…、それは…」
「なんだよ。自分からは無理ってか?」
「…っ」

どんどん俺に近づくリオを、「おい」なんて金髪が止めに入ろうとしている。その手を払ってリオが俺に顔を近づけた

俺のすぐ目の前にある真顔。いやな緊張が走ったけど、リオはすぐにニッと笑った

「俺に殺してほしけりゃ、生きた目ぇしてみな」
「…!」

深い青の目で、真っ直ぐ俺を見ている。金髪はリオの言葉に少し驚いた顔をしていた

「生きた目になっても…それでもまだ死にたいとか言うなら。その時は望み通り殺してやる、仕事としてな」
「……」

合わせてた目をパッと外して俺に背を向けたリオのその言葉は、やっぱり何を言いたいのかよくわからない…。

「とりあえず、今日からお前はここの一員だ」



なんかもう、強引すぎる。
けど、"一員"…か

その強引な言葉に、不覚にもドクンと心臓が鳴ったような気がした…―――

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