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ふと、その音に反応してうつ向いていた頭を上げて見ると、ドアの前には誰かが立っていた。
薄い茶色…ベージュというのか?そんな毛色をした男で。そいつとふと目が合った時、にっこりと笑われた。
(何だ…こいつ…)
初対面で悪いが、正直胡散臭いと思った。けど、こいつが来た事によって少し空気が変わった気がする
「わぁ、ブラン先生!戻ってたんですかぁ?」
そんな男に一番先に話掛けたのはさっき俺に抱き付いてきたライ…?ってやつだった
「あぁ、はは!今日の往診は思ったより早く終わってなぁ!ははは、んでこの部屋の前通ったらジンくんの怒鳴り声が聞こえてさぁ!何かなーって思って覗いてみたら見ない顔の子が居て!」
「あぁ!そうですよねっ!ブラン先生、この子フウって言うみたい!」
…勝手に話を展開するライって奴。どうでもいいけど名前も少し違う…
「へー、フウくん」
「あ…フウシン…です」
「…フウシン……」
一瞬、俺の名前を聞いたそいつの顔が何かを考え込んだ気がした。けど…
「はは!フウシンくんね!初めまして、俺はブラン。医者だ。…ここに来たってことは……君も反改造人間プロジェクトの賛同者かな?」
と…すぐに印象の良い笑顔になるものだから、見間違いだったのかと思った。
「あ…それは…、」
「違いますよ、ブランさん」
"違う"と言おうとしていたら、ここぞとばかりに割って入って来たのは金髪の男だ。相変わらず眉間のシワが深く、俺を睨み付けている…ような気がする。
「え、違うの?」
「こいつ…フウシンは改造人間プロジェクトの根元となる奴かと」
「ほー、それはまたどうして?」
「こいつはあの研究所で長期間過ごしています。そしてそこでファーストの地位を取り、三匹以上の動物を合成させるキメラの技術などを意図も簡単に成功させ各地で暴れさせています。その流れで、改造人間プロジェクトにも協力していたかと」
(…だからそれだけは違う…って)
…、どうしたんだ俺は。この手の会話になるとどうも腹が立って仕方ない…!
でも何かを言ったところで理解してもらえないのだろう。だから反論しないことに……
「…彼を連れて来たのはリオか?」
(…?)
いきなり、ブランと言う男はリオに話をふった。ふられたあいつは「あぁ」と短く返事をしている。
「へー、そっか」
「…」
リオ…ブランってやつと目を合わせていない?…と、ブランだかは俺の方を向いてまたにっこり笑った。
「詳しく聞かせて?君は改造人間プロジェクトの根元なの?」
「…いや、だからそれは…」
「……違うよね?」
「…?」
ふと、こいつの声がぞっとするくらい低くなった
「………?」
よくわからないけど…そいつを見ると、冷たい目で不敵に笑っていた。が、すぐに普通の…なつっこい笑顔に戻り、声質も高くなる。そして金髪の方に向き直る
「なぁ、ジンくん。フウシンくんはキメラ専門みたいだよ」
「はぁ…!?」
いきなり金髪に話をふるブラン。それ以前に俺はそんな事言ってないんだけど…
「キメラ担当だったから改造人間にはあまり詳しくないって」
「…んだよそれ…!」
「まぁまぁ。とにかく…今彼はこうして人質?…保護?…とりあえず研究所を出た身だ。頼もしいじゃないか、このチームに僅かでも情報を握ったファーストが居るなんてさ」
…こいつは、俺をかばっているのか?なんか胡散臭いけど…。だけど多分ここでは
「今は確実に…関わっていない…、それは本当だ…!」
と言うべきだと思った。
それを聞いた金髪が納得いかない様子で舌打ちしているのがハッキリ聞こえた。
ブランがそのやりとりを見て「うんうん、仲良しが一番だ!」と頷いているのも。
そいつは部屋を出る時も終始笑顔で。正直、何だか不思議な…謎な人物だと思った。あの目は、何だったんだ…?
ふとリオを見ると、険しい表情をしていて。そして金髪は相変わらず俺を睨んでいる―――…
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