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"リオ"と名乗る殺し屋に着いてこいと言われて行ってみたら…
たどり着いたのは大都会。
ここは確かエリア3で…
9つあるエリアの中でも治安はそれなりに良いと聞いている。実際、来るのは初めてだけど。
…それにしても不思議だ。1つエリアが違えばそこはスラム街だったり、砂地だったりするのに。
そう言えば昔、エリアの治安は上に立つものによって変わるものだと聞いた事があったな。たしか…3の他には6も良いと聞いたな…
「何ボーッとしてんだ?」
「おわっ…」
急に声を掛けられて少しビックリした。視界には緑の長髪と、真っ青な目。
「お、何その反応。ビックリした時のか?」
「あ…あぁ…」
…人形みたいだってよく言われるけど、俺だってビックリすることはあるし、それが顔に出たりだってする時もある。
「…」
「よし、ここ」
「は…?」
「このビルが拠点だ」
「…はぁ」
いや…突拍子もなく"ここ"と言われても…
とにかく本当に高いビルだ
「表向きは大手化粧品メーカーで通ってるけど、中で働く奴は、あー…なんつったっけ?あぁ、そうだ。反改造人間プロジェクトの賛同者らしい」
「…改造…、人間……?」
少しだけ心臓がどくりと跳ねた気がする。そしてついでに軽い吐き気と緩い頭痛…
「おいおい、大丈夫か?」
そんな俺に「肩貸してやろうかぁ?」なんて聞いてくるこいつは本当に俺を殺そうとしていた奴なのだろうか。
「大丈夫…だ」
「……、」
…何だこいつ。
突然黙った…?
「ぶはっ!別にお前が動揺することねぇだろ」
「は…?何だ…いきなり…」
「だってよ、聞いた所によると改造人間プロジェクトの根元はお前らしいじゃねぇか、フウシン。主導権を握るって」
「っ、違うっ!!!」
…思わず、大きな声を出してしまった。なのにこいつは顔色一つ変えやしない。
…でも何だろう…今、言われた事に物凄く腹が立ったような…。
だって俺が改造人間プロジェクトの根元…?
バカ言うな。
俺はそれが怖くてあの子と逃げたんだぞ。
…結果、その行動がマズくて沢山の人を犠牲にして…挙げ句あの子までもが…
「…」
「…直感も捨てたもんじゃねえな」
「?」
「んや、一人言だ。とりあえずフウシンよ、」
「何だ…?」
「お前、今から会う奴に自分は根元じゃねえって言ってみろ」
「…」
「くく、無駄にデケェからってビビったりすんなよ?」
無駄にでかい…?
またこいつは…何の事を言っているのか全くわからないんだが。少し笑ってるし。なんなんだ、無駄にでかいって言うのは人なのか?それともキメラとか…?
でもとりあえず、そう言う誤解をされているのなら弁解しなくてはならない。
……って、どうして俺はこんなに熱くなってしまっているんだ?別に死んだって構わないんだから、今さら弁解とかなんて…
…と、今までは歩幅を合わしてくれていたのかゆっくり歩いていたこいつが急に早く歩き出した。
着いていくのがやっとだ…
ビルの中に入るとフロアに置かれていたのは見たこともないくらい大きい観葉植物…。外観もだけど、中も綺麗にされているんだな…
「おいフウシン」
「あ、なに…」
「お前エレベーターで行け」
「は…、いや…、あんたは…?」
「俺は階段で行くからお前はこれ。17階でまた会おうぜ」
「うわっ…、おい…!」
軽く背中を押されてエレベーターに詰め込まれた形になった。急いで振り返った時にはもうあいつは階段に行ってしまっていて…。
…そうこうしている内に勝手に押されたエレベーターは、黙々と17階に向かって行ってる…
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