プロローグ




―お兄ちゃん僕ね、サッカー部に入ったんだ。



弟に言われたときは息が止まった気がした。
目を見開いて目の前の弟を凝視する。

驚いて何も言えなくなっている俺には気付かずに弟は続ける。


「監督もコーチも普通に受け入れてくれたんだ。もしかしたら帰れって怒鳴られるんじゃないかと思っててさ…。」


あはは、なんて苦笑しながらも嬉しそうに話している。


「そっか、良かったな…。」

「うん!それにもう仲良くなった子も居るんだ!名前はね―――」


それからの弟の話は耳に入ってこなかった。
まさか雷門サッカー部に入るとは。
最近、俺のサッカーボールを借りて一人蹴っていたのはこのせいか。

叔父の事があってサッカーは我が家では禁忌に近かった(それでも俺はサッカーをしていたが。)
両親も弟もサッカーは見るだけだったはずなのに。
一体どこで、何に魅了されたというのだ。

いや、サッカーを始めるだけならまだいい、むしろ大歓迎だ。
ただ入ったチームが悪いんだ。

どうして、よりにもよって雷門サッカー部なんだ。







そこはとある組織に潰されようとしているサッカー部。
…そう、俺の所属する『フィフスセクター』によって――






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