子猫との日常 | ナノ


「いーい?いざや、ぜったいでてきちゃ、だめだよ?」


念には念を押すにゃんこに苦笑しながら頷く。言われなくても一度仕事で部屋に籠ればなかなか出ないんだけどね。

なんせ今日は俺の誕生日だ。GWだから奏も仕事が休みで、今頃リビングで何か用意してくれているんだろう。気を利かせて外出しようかとも思ったが、それではなんだか調子に乗っているようなのでやめにした。

…ちなみにシズちゃんは連休などお構い無しに仕事らしい。ま、朝からうるさいのがいなくてせいせいしたけどね。


「……お、」


しばらく情報収集にでも精を出すか、なんて思いとりあえずメールの受信ボックスを開くと、珍しく仕事以外の件名のメールが届いていた。しかも粟楠の四木さんから。


「相変わらず、真面目なことで」


意外なことにその内容は俺の誕生日を祝うものだった。いかにも社交辞令のような定型文だったが、送ってくれたこと自体に自然と頬を緩めた自分がいて。というか最後の『火遊びも程々に』ってどういう意味。


「ま、いいか」


その後もいくつかの仕事をこなし、にゃんこが再び俺を呼びにくるまで、適当に時間を潰した。





にゃんこに手を引かれながらリビングに入ると、そこには案の定津軽の美味しそうな料理が並んでいた。おひつに入ったご飯に海苔。大きな皿の上には様々な種類の刺身が乗っている。他の皿には卵焼きやきゅうり、かんぴょうも乗っていた。


「……手巻き寿司?」

「正解。臨也の好きな大トロもある」


津軽ラブ!俺は津軽が好きだ愛してる!

ウキウキとその津軽の隣に座る。と、いきなりプレゼントタイムに突入したらしい。先陣を切るのはいつものようにデリックと日々也だった。


「誕生日おめでとう臨也。でもごめんな、プレゼントはここには無いんだ」

「どういうこと?」

「僕たちからのプレゼントは本棚です。大きいので、明日届くんですよ」


本棚?と少し首を傾げると、デリックは笑いながらうんうんと頷いた。


「臨也の部屋、もうだいぶファイルやら書類が散らばってるだろ?本棚あれば整理できるかなって思って」

「あ、もちろ奏さんには許可を貰いましたよ?」

「そっか。ありがとう」


本当にこの子達は気が利くなぁ。にこにこ笑う二人にお礼を言う。

今度は奏が、少し大きめの箱を取り出した。


「はい。私から」

「……加湿器?」

「ピンポーン。ほら臨也ってお肌に気遣ってるじゃん。乾燥肌だし」

「確かにね。ありがと奏。愛してる」

「最後の一言は要らねぇだろノミ蟲が」


奏の隣に座るシズちゃんが番犬よろしく唸る。あーやだやだ。ちゃっかり帰って来てるんだから。
なんてことを考えていると、顔面にひゅんっと何かが飛んできた。寸でのところで受け止める。


「…………なにこれ」

「プレゼントだよ」

「はぁ!?シズちゃんが!?俺にプレゼント!?」


悪いか、とぼそりと呟いてシズちゃんはビールを煽った。…信じられない。手の中の袋を開けると、そこには爪やすり。


「え、あ、え?」

「んだよ」

「や、シズちゃんにしてはいいものくれるなぁと。…えっと、あ、ありがと」

「百均だけどな」


ピシッ。
…そうだろうと思いましたよ。和んだ空気が一瞬で張りつめる。
そんな空気を取り繕うように奏があはは、と苦笑した。


「ほ、ほら、サイケとイザにゃんは何あげるのかなー?」

「ん!」

「臨也、ちょっとまってて」


サイケとにゃんこは二人でリビングを出ていくと、廊下でゴソゴソと何かをしているようだった。
しばらくしてドアが開けられる。そこに立っていたのは、


「ハッピーバースデー、臨也!」

「ぷれぜんと、だよ!」


満面の笑みを浮かべたサイケと、全身をリボンで包まれたにゃんこ。
これはアレなのだろうか、あの、よくある「ぼくがぷれぜんとだよ!」とか、言っちゃう感じ?


「あれ?うれしくない?」

「っううん!嬉しい!嬉しすぎてマジ発狂しそう!」

「「発狂すんな!」」


奏とシズちゃんから鋭いツッコミが入ったが、気にしてる余裕なんて無い。にゃんこにおいでおいでと手招きをすると、にゃんこは体にリボンを巻き付けたまま、頭に大きなちょうちょ結びを付けてテコテコとやってきた。ちょこんと俺の膝の上に座らせる。

ちょ…これ、マジやば…!


「う?いざや?」

「……これは、サイケが考えたの?」

「うん!臨也のすきなものって考えたらね、イザにゃんだったから」


サイケたんマジ天使!
叫びながら俺はサイケの頭をぐりぐりわしゃわしゃ撫でてやった。嬉しそうにはにかむ表情は、俺には全然似ていない。うーん、さすが天使。


「これには私もびっくりだわ……」

「まさかこんなプレゼントがあったとはなぁ。考えもしなかったぜ」


みんなが驚く中、俺はただひたすらサイケとにゃんこを愛でた。もう幸せ!


「臨也、すごく幸せそうな顔してる」

「ん……、うん」


改めて言われるとなんだか照れる。奏から視線を逸らすためににゃんこの耳をくにくにと弄った。


「臨也、」

「うん?」

「お誕生日、おめでとう」

「あ…、あ、りがと」


もしかしたら最近の誕生日で一番幸せかもと、ベッドの中で噛みしめるのは、あと数時間後の話。






(生まれた幸せ)


今日という日を、幸せに。






Happy Birthday,IZAYA!!

2011.5.4



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